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第1章|はじめに:笑顔をなくした息子に戸惑う母
「まさか、うちの子が——」
高校に進学して半年が経ったころ、息子の笑顔が消えました。中学までは友達と外出し、家でもよく笑っていたあの子が、ある日を境にまったく話さなくなり、自室にこもるようになったのです。私はその変化にただ戸惑い、何が起きたのか分かりませんでした。
それまで問題らしい問題はありませんでした。小学生時代も、中学時代も、普通に学校に通い、部活動や友人関係もそれなりにうまくいっていたと思っていたのです。もちろん、思春期の葛藤や成績への焦りは感じていたようでしたが、「きっと誰でも通る道」「そのうち自分で乗り越えるはず」——そう思い込み、深く向き合わずに来てしまった自分がいました。
でも、子どもが突然笑わなくなり、目がうつろで、言葉が出なくなり、暴言を吐くようになったとき、ようやく私は気づきました。「これは一過性の気まぐれではない」と。
ある秋の日、部活から帰ってきた息子が無言のまま、ドアをバタンと閉めました。それから彼の生活は急変します。朝起きてこない。
食事に降りてこない。リビングに出てくることすらなくなり、スマホやゲームだけが唯一の世界になっていきました。
「今日、誰か来る?」と母親である私に毎朝確認しては、誰も来ないと分かると布団に戻る。入浴も真っ暗な中でこっそり入り、
爪や髪も伸び放題。話しかけても「うるせえ」「死ね」など暴言。私が仕事で家を出ると、大声で笑っている声が聞こえるときもありました。
まるで別人のように、目の前の息子が「誰なのか分からない」と感じる日も増えていきました。
高校生になった息子の突然の引きこもり。そこには、私たち親が気づけなかった小さなSOSが積み重なっていたのかもしれません。
このブログでは、息子がなぜ笑わなくなったのか、その原因を一つずつ紐解きながら、親としてできること、専門家として見えてきたこと
私、一般社団法人不登校引きこもり予防協会の杉浦孝宣が丁寧に綴っていきます。
息子が笑わなくなった日から|高校生引きこもりの原因を母は見つめた
高校生が引きこもる原因は、単一ではありません。
「学校が合わなかった」「成績が下がった」などの表面的な理由の裏には、心の奥で折れてしまった何かがあります。それは、自信、信頼、自己肯定感——その子が「自分は大丈夫」と思える感覚です。
文部科学省の令和4年度「児童生徒の問題行動・不登校調査」によると、不登校の高校生は過去最多の72,524人に達しています。これは中学生に比べて割合では少ないものの、高校生の不登校は退学・引きこもりのリスクが非常に高いという重大な特性があります。
また、厚生労働省によると、15歳〜39歳の「引きこもり経験者」は推計約146万人(令和5年度調査)。そのうち最も多い年齢層が、**15歳~19歳(高校生世代)**なのです。
つまり、高校時代の引きこもりは「たまたまの不調」ではなく、大人になっても続く社会的孤立の入り口になってしまう可能性が高いのです。
今回の15歳男子の場合、引きこもりに至った要因は、いくつも絡み合っていました。
彼は小学生の終盤から塾に通い、周囲よりも早く受験競争に巻き込まれていました。中学では一時的に上位に食い込むも、「1番になれない自分」に納得できず、涙を流すことも。
この“常に比較される学力主義”が、無意識のうちに彼の心をすり減らしていたのです。
中2の3月から勉強をパタリとやめた背景には、目標の喪失と学力の限界を悟ったショックがあったと考えられます。
努力しても報われない。期待される自分と現実の自分のギャップ。それが、彼の学習意欲を一気に奪ってしまったのでしょう。
塾に勧められた難関県立校には不合格。本人も本気で目指していたぶん、その挫折感は計り知れません。
私立校入学時には「ここで頑張ろう」と前向きだったものの、内心では「負けた」という思いを抱え続けていた可能性があります。
担任からは「壁を作っている」「友達ができていない」と伝えられています。
中学までは自然にできていた友人関係が、高校で途絶えたこと。それが彼の“居場所感”を奪いました。
「何か始めよう」と自分から決意して入ったバドミントン部。ところが途中入部の彼は素振りばかりで、先輩との関係にも気を遣い、想像以上のプレッシャーだったようです。
やる気を出した先で“また上手くいかない”経験が重なり、ついに心が限界を迎えます。
部活が始まったお盆以降、急激に暴言・破壊行為・ドア封鎖・スマホ依存といった行動が表れます。これは単なる反抗ではなく、「心がこれ以上傷つかないようにするための“自己防衛反応”」です。
引きこもりの原因は、「たった一つの出来事」ではありません。
目に見えるきっかけの裏には、小さな傷や違和感が積み重なった“心の履歴”があります。
「この子はなぜ学校に行かなくなったのか?」と考える前に、「この子は、いつから苦しかったのか?」と問い直す必要があります。
高校生の引きこもりには、必ず「理由」がある。
しかし、正論や励ましでは届かない現実がある——
次章では、親の“正しい言葉”が届かなくなる理由と、そこから見えてくる「支援の壁」について考えていきます。
親として「頑張ってほしい」「乗り越えてほしい」と願ってかけた言葉が、逆に子どもを深く傷つけ、引きこもりを長期化させることがあります。
正論は、時として“心の鎧”となってしまい、子どもをさらに孤立させてしまうのです。
不登校・引きこもりの子どもたちは、自分を責めています。
「自分はできない」「どうせ無理」「迷惑をかけている」と、言葉にはしなくても心の中では自己否定が渦巻いています。その状態で、親から「学校くらい行かないとダメよ」「甘えてるんじゃないの?」「あなたならできるって信じてる」——そんな言葉を投げかけられると、どうなるでしょうか?
一見、励ましや期待の言葉に見えますが、子どもにとってはこう響くことがあります。
心が傷ついている子に“正しさ”を突きつけると、それは刃物のように刺さってしまうのです。
今回の15歳男子の事例では、母親は期末テスト前に息子へ怒りをぶつけました。
「こんなことじゃダメだ」と叱ったことで、息子は少しだけ頑張って数学と英語で1番を取ります。
しかし、それが「回復」につながらなかったのはなぜか。
実はこのとき彼は、「自分の心を殺して」親に応えていたのです。
内側では疲れ果て、苦しさの中で「期待に応えなきゃ」「怒られたくない」という気持ちだけで動いていました。
その結果、夏以降に部活ストレスが加わると、一気に崩れました。
また、学校での面談では、担任が「今踏ん張ってよかったと思える日がくる」と声をかけました。
この“未来への希望”のような言葉も、本人にとってはプレッシャーに感じたのかもしれません。
そして、ある日彼は自室のドアを塞ぎ、暴言を吐き、暴れ、スマホを壊してしまいます。
これは「もう何も聞きたくない」「自分を守る最後の手段」としての行動です。
心理学では、自己肯定感が低い状態での助言や指示は、逆効果になるとされています。
これは「感情の安全基地(Emotional Safe Base)」が失われている状態で、言葉が防衛反応を引き起こすためです。
日本子ども家庭総合研究所の調査でも、不登校経験者の80%以上が「親にもっと話を聞いてほしかった」と回答しています。
必要なのは「解決策」ではなく、「安心して話せる人」の存在なのです。
引きこもりの子どもにとって、“正しい言葉”は必ずしも“心に届く言葉”ではありません。
まず必要なのは、「今、あなたは苦しいんだね」と伝えること。
アドバイスの前に、「理解されている」と感じられる安心感が、子どもを回復の方向へ導く第一歩になるのです。
それでは、どんな言葉なら届くのか?
子どもを追い詰めず、少しずつでも関係を取り戻すためには——
次章では、実際の経過とともに、「信頼と回復」のきっかけとなった瞬間に焦点を当てていきます。
引きこもりは「突然起きる」ものではありません。
多くの場合、小さなサインの積み重ねがあり、あとから振り返ると「あのとき、気づけたかもしれない」と思える瞬間があります。
今回の15歳男子のケースでも、「笑わなくなった日」からすでに、心の限界に近づいていたのかもしれません。
家庭での日常・学校での様子・本人の発言や行動——それらには、心の異変を知らせる“無言のメッセージ”が含まれていました。
ただし、そのときは親も教師も、疲れや反抗期といった「一時的なもの」として受け止めていたのです。
詳細な時系列
以下は、ご家族から寄せられた実際のエピソードをもとに、15歳男子の「心の変化の記録」を時系列で再構成したものです。
この時期のサイン: 努力に報われない思い、自己評価の崩壊。
「なぜ自分はできないんだ」という自責の始まり。
この時期のサイン: 頑張ればできる。でも“心”はついてきていなかった。
外からは「やればできる」と見えるが、内面では疲労困憊。
この時期のサイン: 「居場所がない」という感覚の強まり。
部活が本人にとって“唯一の接点”になるはずが、逆に大きなストレスに。
この時期のサイン: 極度の防衛反応。
他者との接触をシャットアウトすることで、“心を守る”行動へ。
この時期のサイン: 閉じていた心が、ほんの少しだけ開き始める。
外出も増え、TSUTAYAやサイクリングに出かける日もあった。
この時期のサイン: 環境刺激に対する過敏性の表出。
感覚過敏や発達特性が背後にある可能性も。
“不登校ステージ判定”でいえば、ステージ3〜4に近い状態。
ステージ判定表を見て、お母さんは当協会に支援を申し込みになりました
引きこもりは、一夜にして始まったわけではありません。
子どもの心が折れるとき、必ず「前触れ」があります。
ただ、それに気づくには、大人が“評価”や“期待”を一度手放す必要があるのです。
そのとき初めて、見えてくるSOSがあります。
では、どこから支援の糸口を見つければよいのでしょうか?
叱らず、否定せず、本人を受け止める“親の在り方”とは——
次章では、【親にできる支援の第一歩】について具体的に紹介していきます。
「学校に行かせること」よりも大切なのは、“もう一度、親子の信頼関係を取り戻す”ことです。
引きこもりの状態にある高校生には、今すぐの復学や改善を迫るのではなく、
まず心の安全基地を整えることが、支援の第一歩になります。
子どもが不登校や引きこもりに陥ると、親としては焦りや不安から「何とかしなくては」と思うのが自然です。
でも、子ども自身が「自分は大丈夫」と思える土台がなければ、学校復帰も進路選択も、うまくはいきません。
とくに高校生の場合、「周囲と自分を比べる力」が発達している一方で、「社会に助けを求める経験値」はまだ乏しく、“自分だけがダメだ”と極端に思い込みやすい時期です。
この時期に親がやるべきことは、「このままでは困るよ!」という正論を伝えることではなく、
——これらを言葉と態度の両方で伝えていくことです。
今回のケースでも、10月以降の彼の行動は極端でした。
これらはすべて、「今の自分を誰にも見られたくない」という、自己防衛の表れです。
「怖い」「恥ずかしい」「どうしていいかわからない」という気持ちを言葉にできない代わりに、身体全体で拒否していたのでしょう。
しかし、11月に入ってから、少しずつリビングに出てくるようになり、妹とゲームをする様子も見られました。
これは、家庭という空間の中で“安心できる時間”が少しずつ戻ってきた証拠です。
この時、ご家族は無理に学校の話をせず、できるだけ本人の“機嫌のよいとき”に話しかけるスタンスをとっていたとのこと。
それが、彼にとって「まだここに居ていいんだ」と思えるきっかけになったのではないでしょうか。
私たち一般社団法人不登校引きこもり予防協会では、
40年以上の支援経験から、回復には次の3つのステップが効果的であると実感しています。
→本人に「なんとなく元気になってきた」という実感を持たせる。
→「自分にもできることがある」と思えた瞬間が回復の原点。
→“自分を認めてくれる場所”を家庭の外にも作ることで、人生の選択肢が広がる。
親にできる支援は、“何かをさせる”ことより、“安心を与える”ことが先です。
高校生という多感な時期だからこそ、親子の関係修復が回復への最短ルートになります。
そして、自宅だけで難しい場合には、「第三者」の存在が重要です。
私たちのような支援団体や、家庭訪問によるアウトリーチ支援、ピアサポートなどを取り入れることで、家庭の中で詰まってしまった関係をゆるやかにほぐすことができます。
では、実際に支援を受けて変わった子どもたちは、どうやって一歩を踏み出したのでしょうか?
次章では、当協会で支援を受けた子どもたちの成功事例を紹介し、そこから見える「希望の兆し」と「回復のプロセス」をお届けします。
そして——この高校一年生のK君は、その後どうなったのでしょうか?
ご家族と共に歩み出した彼の“再出発の物語”にも、ぜひ注目してください。
どんなに深刻に見える不登校や引きこもりの状態でも、適切な支援と環境の変化があれば、
子どもたちは必ず立ち直れる可能性を秘めています。
私たちが出会ってきた子どもたちは、誰一人として「そのまま」ではありませんでした。
支援が入ったことで、少しずつ笑顔を取り戻し、学び直し、やがて社会へと踏み出していったのです。
引きこもり状態にある高校生の多くは、自分自身を「失敗作」だと感じてしまっています。
でもそれは、“現在の状態”がそう見えるだけであって、その子の“本質”がそうだということでは決してありません。
支援とは、「このままではいけない」と追い詰めることではなく、
「大丈夫だよ。ここから一緒に始めよう」と寄り添うことから始まります。
そして、寄り添いながら本人のペースに合わせたステップを踏むことで、「できた」「話せた」「笑えた」——そんな小さな“変化の芽”が必ず現れてきます。
ここでは、実際に当協会で支援を受け、変化していった高校生たちの成功事例を紹介します。
私の書籍にも下記の成功事例は登場人物として、でています
※この事例は、私の著書『不登校・ひきこもりの9割は治せる』にも登場人物として紹介されています。
彼は「誰かに認められた」ことで、自分の存在に価値を感じられるようになったのです。
※このケースも、私の書籍『高校中退 不登校ひきこもりでもやり直せる』にて詳しく紹介しています。
「自分でも役に立てる場所がある」と実感したとき、彼女は動き出しました。
※この事例は、私の著書『不登校・ひきこもりの9割は治せる』にも登場人物として紹介されています。
「暴れる子」ではなく、「助けを求めていた子」。見方を変えたとき、支援が始まりました。
※当会の支援実績として、講演や書籍でも紹介しています。
外に出られないのではなく、“出ても大丈夫”だと思える環境がなかっただけ。
安心できる場所があれば、人は動けるようになります。
そして——このブログの主人公である高校1年生のK君も、支援を受ける中で確かな変化を見せはじめました。
K君の保護者は、当協会のコーチングを通じて対応を見直し、同時に家庭訪問支援も実施。
まずは外出の練習からスタートし、焦らず少しずつ歩み出しました。
完全引きこもり状態から5ヶ月後——K君は、当協会が提携する通信制高校サポート校へ転校し、さらに学生寮へ入寮。生活リズムを取り戻しながら、学びと仲間との関係を築く環境へと自らの意思で踏み出しました。
「いまこの子に必要なのは、焦らせることでも、言い聞かせることでもない」
ご両親の“本気の覚悟”と、支援チームの粘り強い関わりが、少しずつ彼の心の扉を開いていったのです。
変化は一夜には起こりません。
でも、確実に“動き出す瞬間”はあります。
その芽を見逃さず、そっと育てていくことこそが、私たちが大切にしている支援の在り方です。
そして今——K君は、2025年7月19日、当協会主催の講演会で自らの経験を発表する予定です。
かつて引きこもっていた彼が、同じ悩みを抱える家庭に向けて語ろうとしている姿は、まさに“未来への一歩”そのものです。
子どもは変われます。
必要なのは、「もう無理」と決めつけない大人の存在です。
支援は魔法ではありません。でも、本人と家族に寄り添い、寄り道しながら歩き続けることができれば、
やがて子どもは、自分の足で立ち上がっていく日が来ます。
子どもが不登校や引きこもりになったとき、最も苦しんでいるのは本人かもしれません。
でもそれと同じくらい、お父さん・お母さんも、誰にも相談できずに苦しんでいるのではないでしょうか。
「どう声をかければいいのか分からない」
「学校に行ってほしいけれど、無理強いもできない」
「このまま一生引きこもってしまうのでは……」
その不安を、一人で抱え込まないでください。
親が変わることで、子どもは変わります。
そして、それを私たちは何千回も現場で目にしてきました。
当協会が支援してきた子どもたちのほとんどは、「もう手遅れかもしれない」と思われていたケースばかりです。
でも、親が変わった瞬間に、子どもにも“変化の余地”が生まれます。
そして、その変化を支える第三者の存在があれば、回復は格段に早まるのです。
K君のお母さんは、当初こうおっしゃっていました。
「もう、どうしたらいいかわかりません。
私のことを“出て行け”と言う息子が怖いです。
でも、見捨てたくないんです。助けてください。」
それでもご夫婦で支援を受けることを決意され、
家庭での関わり方を変え、信頼を取り戻すためのコーチングを受け、
家庭訪問を通して少しずつK君と再び向き合っていきました。
結果として、K君は通信制高校への転校、寮への入寮、そして7月の講演会登壇へと、再出発の道を歩んでいます。
子どもたちの未来は、親の“いまの選択”で大きく変わります。
放置してしまえば、引きこもりは年単位で長期化します。
でも、適切な支援につながれば、半年〜1年で社会に復帰する子も数多くいます。
大切なのは、“待つこと”ではなく、**“正しい支援に動くこと”**です。
どうか、思い出してください。
お子さんが笑っていたあの頃のことを。
私たちは、もう一度あの笑顔を取り戻すお手伝いができます。