高校の転校は難しい?でも東京都なら可能!都立転編入制度のリアルとは

はじめに|高校転校は本当に“難しい”のか?

「高校って、転校できるんですか?」この質問は、毎年たくさんの保護者の方々からいただきます。特に、高校1年の1学期終わりから2学期のタイミングで、「不登校になってしまった」「学校が合わないようだ」という相談が急増します。

小・中学校では、いじめや転居により比較的スムーズに転校が可能です。しかし高校では、その仕組みはまったく異なります。転校のハードルは格段に高く、「高校の転校は難しい」という言葉が現実となって、多くの家庭に立ちはだかっているのです。

しかし、そんな中でも「東京都」では公立高校における転編入学試験が制度化されています。これは、都内の高校に在籍する生徒に限らず、通信制高校や他県の私立高校に通う生徒にも、再スタートの道を開く制度です。

本記事では、高校転校が難しい背景、東京都での可能性、具体的な成功事例、そして今すぐできる対策(過去問、面接対策)について詳しく、私、一般社団法人不登校引きこもり予防協会 杉浦孝宣が解説していきます。

目次

第1章|そもそも「高校転校」はなぜ難しいのか?

多くの保護者が誤解しています。「高校の転校も、小中学校と同じようにできる」と。

しかし現実はそう甘くありません。高校では義務教育ではないため、各自治体が独自にルールを定めています。特に地方では、転校のハードルが非常に高く、「一家転住」という要件が大きな壁となって立ちはだかるのです。

「一家転住」とは、簡単に言えば「家族全員で引っ越さなければならない」という意味です。例えば、静岡県から東京に引っ越して高校転校したい場合、生徒一人では認められず、家族全員の転居が必要になります。これは、実質的に転校を“封じている”と言っても過言ではありません。

実際、当会が支援してきたある生徒は、地方のスポーツ推薦で進学した高校で、部活動の厳しい指導や暴力により心身ともに追い詰められ、不登校状態に陥っていました。本人は別の高校で再スタートを望んでいましたが、「転校は一家転住が必要」と言われ、家族全員が動くことは困難な状況でした。

結局、そのご家庭は東京の親戚宅に住民票を移すなどの工夫をし、なんとか転校の道を開きましたが、誰もができる方法ではありません。これは制度の歪みであり、教育の公平性が問われる問題です。

つまり、「高校転校は難しい」とされる背景には、制度設計そのものが関係しているのです。小中学校のように自由に転校できる仕組みが整っていないことが、全国の家庭にとって大きな障壁となっているのです。

この章ではその“難しさ”の正体を明らかにし、次章では「ではなぜ東京では可能なのか?」を解説していきます。

東京都・大阪だけにある“転校のチャンス”とは?

「高校の転校は難しい」とされる中で、実は“例外”が存在します。それが東京都と大阪府です。

この2都府では、公立高校において正式に「転編入学試験」が制度化されています。これは、同一都府内の高校だけでなく、他府県や通信制高校などからの転学希望者に対しても門戸を開いている制度です。

たとえば東京都の場合、令和7年度の転編入学試験では、全日制高校166校で約9,398名の募集が行われました。普通科高校の1年生だけでも5,654名という大規模な受け入れ体制が整っています。これは、日比谷高校のような進学校から中堅校、単位制高校に至るまで、広く実施されていることを意味します。

試験内容は学校ごとに異なりますが、多くの場合、基礎学力(国語・数学・英語)や面接、小論文などが課されます。注意点として「出願=合格」ではなく、しっかりとした受験対策が必要です。

さらに、この制度の特筆すべき点は「一家転住」を要件としていないこと。たとえば、親元を離れて都内の親戚宅から通う形でも、都内に居住していることが確認できれば受験可能です。

大阪府も、令和7年度より転編入学試験を正式に実施しており、府立高校で1・2年生を対象に筆記試験(国数英)+面接での選抜が行われています。募集人数は若干名が中心ですが、出願者の状況や学校の事情に応じて柔軟な対応がなされています。

つまり、全国的に見れば高校転校の門戸は極めて狭いものの、東京都と大阪府には制度上の“突破口”があるのです。特に東京都では、毎年安定して転編入の募集が行われており、制度の利用価値は非常に高いと言えます。

※募集が行われていて、倍率がなくても、転編入学試験で一定の点数を取らないと、不合格となっています
過去問、面接対策は重要です。当会は転編入学試験対策講座も行っています。是非、ご相談下さい

高校転校を希望する理由はさまざま

転校を希望する背景は十人十色ですが、共通して言えるのは「今の高校が本人にとって支えにならない」ということです。

1. 不登校・高校不適応

 高校に入学した途端、「教室に行けなくなった」「心がついていかない」と感じ始める生徒が増えています。
 例えば、高校1年のGW明けから急に学校に行くのが苦しくなり、30日以上登校できずに留年や中退のリスクに直面するケース。親には「小中のときは普通だったのに…」という言い分が多く、戸惑いと焦りが交錯します。
 このような状況で学校を変えることができれば、学び直しや再出発の道が開けます。

2. 校風・人間関係のミスマッチ

 推薦入試やスポーツ枠で進学したものの、校風や人間関係が合わず、居場所を失ってしまう例は少なくありません。
 あるスポーツ推薦で入学した女子生徒は、バレーボール部での暴力や強引な指導により心身ともに疲弊し、不登校に陥りました。転校を望んでも「推薦だから辞めにくい」と周囲は口にしましたが、幸運にも私立高校へ移る道が開け、新たな環境でプレイを続けられました。
 推薦枠だから転校できないということはありません。大切なのは「今の環境が本人を壊すなら、変える勇気を持つ」ことです。

3. 通信制高校への進学後の孤立

 いじめや体調不良などを理由に通信制高校を選ぶケースもありますが、そこで友達ができず、再び通学困難になる生徒もいます。
 中学時代に起立性調節障害で不登校になり、通信制高校に進んだAさん。週3日の通学から始めましたが、交流の場が少なく、「自分には友達がいない」と感じるようになり、再び不登校が深刻化しました。
 通信制が合わないと感じたら、都立高校の転編入試験を目指すことで、もう一度全日制高校へ戻る道もあります。

4. 将来への不安と「このままでいいのか」という思い

 安定しない現状に「大学進学は無理かもしれない」「就職も難しそう」という声が聞かれます。
 今の学校にとどまることで、将来の選択肢が狭まってしまうのでは、と親子ともに不安なケースが多いです。
 転校という選択肢は、学び直しや新たな人間関係、そしてやり直しの機会を得るきっかけにもなります。

🔎 まとめ

  • 転校を望む背景には、不登校・校風・孤立・将来不安など、さまざまな理由があります。
  • 重要なのは、「自分に合った場所へ行くこと」を認め、正しい制度を使うこと。
  • 東京都や大阪府の制度を活用すれば、再スタートへの道が開ける可能性があります。

次章では、これらの理由を踏まえ、ステージ判定表に照らした支援の方法を解説します。

ステージ判定表に照らした支援の方法

高校転校を成功させるには、現在のお子さんの状態を客観的に見極めることが第一歩です。

当会では、長年の支援実績をもとに「不登校・引きこもりステージ判定表」を用いて、お子さんの状態を5段階に分けて評価し、それぞれに合った支援を行っています。

ステージ1:不登校の初期段階(不登校期間 1日~60日)

  • 【特徴】朝起きられない・学校に行きづらいが、親子の会話はある
  • 【支援】生活リズムの維持と、親子の対話を重視。通学の可能性があるため、早期の都立転編入学試験対策が効果的。

ステージ2:不登校が続く段階(61日~180日)

  • 【特徴】昼夜逆転・食事の偏り・家庭内の会話が減る
  • 【支援】オンライン面談やフリースクールの活用。学習と生活の両面をサポートしつつ、転校のチャンスを逃さないよう並行準備。

ステージ3:長期不登校~引きこもり(181日以上)

  • 【特徴】外出困難・ゲーム依存・自室にこもる傾向が強い
  • 【支援】家庭訪問支援・ピアサポート・専門的介入。転校は中期的目標とし、まず生活の再構築を優先。

ステージ4:顕著な引きこもり(年単位)

  • 【特徴】親との会話も難しい・生活リズムの崩壊・強い社会不安
  • 【支援】定期的な訪問・信頼関係構築・感覚過敏等への配慮。転校よりも「外とつながる感覚」を育てる支援を重視。

ステージ5:長期化した引きこもり(20歳以上)

  • 【特徴】就労経験なし・社会との接点皆無・家族も疲弊
  • 【支援】成人向けの支援機関と連携。職業訓練・生活支援を軸に「小さな成功体験」を重ね、社会復帰への道を拓く。

お子さんのステージが1〜2であれば、東京都の転編入学試験に向けたチャレンジは十分可能です。ステージが3以降であっても、段階的な支援によってステージを下げていくことは可能です。

保護者の「気づき」と「行動」が、未来を大きく左右します。焦らず、しかし“見守るだけ”にはせず、今どの段階かを一緒に見極めていきましょう。

高校の転校は難しい?でも東京都なら可能!都立転編入制度のリアルとは

「うちの子にも転校して再スタートできるのだろうか?」──この不安に対して、私たちは声を大にして言います。「はい、できます」と。

それは制度やサポート体制の存在だけでなく、実際に転校という選択をし、人生を好転させた生徒たちの存在があるからです。ここでは、当会が関わった具体的な3つの事例をご紹介します。

事例1:通信制から都立全日制へ──中学時代の不登校を越えて

A君は中学3年の後半から不登校になり、そのまま通信制高校に進学しました。しかし週1~2日の通学すらままならず、友人関係も築けないまま孤立。

当会の支援を受け、生活改善と都立転編入対策講座を経て、都立単位制高校に見事合格。現在は週5日登校し、アルバイトと両立しながら大学進学を目指しています。

事例2:スポーツ推薦からの脱出──暴力指導から抜け出し再出発

Bさんは地方の強豪校にスポーツ推薦で入学しましたが、部活動内での体罰や威圧的な指導により精神的に追い詰められ不登校に。

転校制度が整っていなかったため、東京都の親戚宅に住民票を移し、都立高校の転編入学試験に挑戦。面接での自己表現力を磨き、合格後は文化部で充実した学校生活を送っています。

事例3:ステージ2の不登校からの転校成功──生活リズムと学力を回復

C君は高校入学後すぐに昼夜逆転となり、2か月以上欠席。ステージ判定ではステージ2。早期対応が鍵となりました。

家庭と連携して生活改善支援を行い、学力サポートも実施。本人の希望により別の都立高校へ転編入し、現在は学校行事にも積極的に参加。将来は専門学校への進学を目指しています。

これらの事例に共通するのは、「本人の再スタートを支える環境」と「親の行動力」です。 転校は逃げではなく、よりよい成長の場を選ぶ“戦略”です。次章では、制度の課題と、私たちが行ってきた政策提言について解説します。

第5章|実例で見る「転校からの再スタート」

「うちの子にも転校して再スタートできるのだろうか?」──この不安に対して、私たちは声を大にして言います。「はい、できます」と。

それは制度やサポート体制の存在だけでなく、実際に転校という選択をし、人生を好転させた生徒たちの存在があるからです。ここでは、当会が関わった具体的な3つの事例をご紹介します。

事例1:通信制から都立全日制へ──中学時代の不登校を越えて

A君は中学3年の後半から不登校になり、そのまま通信制高校に進学しました。しかし週1~2日の通学すらままならず、友人関係も築けないまま孤立。

当会の支援を受け、生活改善と都立転編入対策講座を経て、都立単位制高校に見事合格。現在は週5日登校し、アルバイトと両立しながら大学進学を目指しています。

事例2:スポーツ推薦からの脱出──暴力指導から抜け出し再出発

Bさんは地方の強豪校にスポーツ推薦で入学しましたが、部活動内での体罰や威圧的な指導により精神的に追い詰められ不登校に。

転校制度が整っていなかったため、東京都の親戚宅に住民票を移し、都立高校の転編入学試験に挑戦。面接での自己表現力を磨き、合格後は文化部で充実した学校生活を送っています。

事例3:ステージ2の不登校からの転校成功──生活リズムと学力を回復

C君は高校入学後すぐに昼夜逆転となり、2か月以上欠席。ステージ判定ではステージ2。早期対応が鍵となりました。

家庭と連携して生活改善支援を行い、学力サポートも実施。本人の希望により別の都立高校へ転編入し、現在は学校行事にも積極的に参加。将来は専門学校への進学を目指しています。

これらの事例に共通するのは、「本人の再スタートを支える環境」と「親の行動力」です。 転校は逃げではなく、よりよい成長の場を選ぶ“戦略”です。次章では、制度の課題と、私たちが行ってきた政策提言について解説します。

制度の課題と今後への提言

東京都や大阪府のように、高校転校のチャンスを制度化している自治体はごく一部に限られます。全国どこでも再スタートの道が開けるべきだと、私たちは考えています。

現在、都道府県によって高校の転編入制度の有無・内容には大きな格差があります。特に地方では「一家転住」が条件とされるケースが多く、事実上、転校は不可能です。これは“教育の地域格差”であり、見過ごせない人権問題でもあります。

実際、当会には千葉・埼玉・神奈川といった首都圏在住であっても「都内に住民票を移してでも都立高校に転校したい」という声が多数寄せられています。

また、推薦入試で入学した生徒が「辞めたくても行き先がない」「転校の道が閉ざされている」と苦しむ例も後を絶ちません。高校での暴力やいじめ、精神的負荷が原因で不登校になった生徒が、転校という選択肢を持てないことは極めて深刻です。

私たちは30年以上にわたり、こうした不公平を是正すべく、文部科学省や都道府県議会へ制度改善の提言を行ってきました。特に「全国共通の公立高校転編入制度」の導入、「一家転住」要件の撤廃、柔軟な単位互換制度の確立を求めています。

子どもたちがどの地域にいても、人生を立て直すチャンスを持てるように。これが私たちの願いであり、今後も全力で活動していきます。

迷っている親御さんへ伝えたいこと

高校に行けていない、今の学校が合わない、毎朝がつらそう──そんなお子さんの姿を見て、「転校なんて本当にできるのだろうか?」「うちの子には無理かも…」と迷っていませんか?

そう感じるのは自然なことです。でも、それは“制度を知らないからこその不安”であることが少なくありません。実際に東京都や大阪府では、制度を活用して転校に成功した生徒が数多くいます。親の行動が、子どもの未来を変える分岐点になるのです。

中には、親子で何カ月も悩み抜いた末、「都立高校の転編入制度」に出会い、わずか3カ月の準備で転校試験に合格した生徒もいます。 また、通信制高校に通っていたけれど孤立していた子が、「都立全日制に戻りたい」という強い想いを叶えて、今はクラスの中心で活躍しています。

迷っていた親御さんの多くがこう言います。 「もっと早く知っていれば」「あの時、相談してよかった」

高校生活は、子どもが「社会とつながる力」を育む大切な時間です。もし、今の環境が合っていないなら、転校は“逃げ”ではなく“前向きな選択肢”です。

お子さんの可能性を閉ざさず、一緒に新しい一歩を踏み出してみませんか?

まとめ|高校転校は「難しい」けれど、不可能ではない

高校の転校は、確かに簡単ではありません。しかし、“不可能”ではありません。

全国的には「一家転住」などの高いハードルがある中、東京都や大阪府では制度が整備され、実際に多くの生徒が転校によって人生を立て直しています。また、当会のような支援団体によって、準備(過去問、面接対策)や情報提供(どこの学校が受け入れやすいか?)を受けながら再スタートを果たしている家庭も数多くあります。

本記事で紹介したA君、Bさん、C君のように、学校生活に悩み苦しんでいた子どもたちが、正しい制度の理解と保護者の行動によって転校し、新たな目標に向かって歩き始めています。

たとえ今、学校に行けていなくても、孤立していても、未来は変えられます。その鍵となるのが、転編入学という制度の活用です。

「高校転校は難しい」と感じるすべてのご家庭へ──

まずは、お子さんの今の状況を見つめ、必要な情報を集めてみてください。制度の活用にはタイミングが重要です。迷っている今こそ、行動に移すべきときです。

一人で抱えず、ぜひ私たちにご相談ください。お子さんとご家庭の再スタートを、全力で支援いたします。

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