四国遍路と不登校支援|歩きながら見えた引きこもり克服のヒント

目次

なぜ今「お遍路」と不登校支援を語るのか

近年、不登校や引きこもりに悩む子どもたちが急増しています。文部科学省の統計によると、2023年度の不登校小中学生数は過去最多を更新。高校でも退学や長期欠席が深刻な問題となり、社会に出る前の段階でつまずく子どもが後を絶ちません。

「うちの子だけが特別なのではないか」――そんな思いに苦しむ親御さんも多いでしょう。しかし、不登校や引きこもりは決して珍しいことではなく、誰にでも起こり得る心のSOSです。問題はそこからどう立ち直るか。放置して長期化すれば、進学や就職だけでなく、社会とのつながりを失ってしまうリスクが高まります。

私 一般社団法人不登校引きこもり予防協会の杉浦孝宣は40年以上にわたり、1万人以上の不登校・高校中退・引きこもりの子どもたちを支援してきました。その中で痛感するのは、「歩き出す」という小さな一歩が子どもの人生を大きく変えるということです。

実は私自身、42歳の時に「四国遍路」に挑戦しました。弘法大師・空海が同じ年齢で四国を巡ったという伝説に導かれたのかもしれません。7回に分けて1200kmを歩き、その道のりで仲間や家族、生徒たちと心を通わせる体験をしました。そこで得た気づきは、不登校支援と深く重なっていたのです。

この記事では「お遍路」と「不登校支援」を重ね合わせながら、歩くことの力、伴走することの意味、そして引きこもりからの克服につながる実践的なヒントをお伝えします。そして最後には、実際に「不登校・引きこもり解決 お遍路の旅」企画についてもご案内します。

四国遍路の歴史と空海の教え

四国遍路は、弘法大師・空海ゆかりの88ヶ所の霊場を巡る全長約1200kmの旅です。修行の道として古くから多くの僧侶や信者が歩み、病気平癒や願掛けのために挑む人もいました。
現代では、心を整理し、人生を見つめ直す旅として、年間数万人が挑戦しています。

遍路の象徴的な言葉に「同行二人(どうぎょうににん)」があります。これは「一人で歩いているように見えても、常に空海がそばで支えている」という意味です。
孤独な道であっても、誰かが見守っている安心感が、人々の心を支えました。

私はこの思想を聞いたとき、不登校・引きこもりの子どもたちが必要としているものと同じだと感じました。孤立している子どもにとって「誰かが一緒にいる」という実感こそ、行動を起こす力になるからです。

また、遍路は単なる巡礼ではなく「一歩ずつ歩くことの尊さ」を体で学べる修行です。長い道のりを歩く中で、自然と生活リズムが整い、心も穏やかになっていきます。
これは、不登校支援でまず取り組む「生活の改善」と同じ役割を果たしています。

遍路はまさに「歩くことで心を回復させる旅」。不登校や引きこもりに悩む子どもたちにとっても、そのエッセンスは有効なのです。

杉浦孝宣と四国遍路

私が四国遍路に挑んだのは42歳の時。ちょうど弘法大師・空海が同じ年齢で修行を深めたという話を聞き、「今しかない」と強く思いました。

当時、私は高校再受験予備校「学力会」を主宰し、多くの不登校・高校中退の生徒を支援していました。しかし、日々の忙しさの中で自分自身の心を整える時間を持てていませんでした。そこで意を決して四国遍路に挑戦したのです。

遍路は7回に分けて歩きました。講師仲間や知人、生徒、そして長女も同行し、旅の中で多くの出会いと学びがありました。炎天下の中で汗を流しながら励まし合ったり、宿で地元の方から声をかけてもらったり。時には「なぜ歩くのか」と自問自答しながら、ただ前に進み続けました。

その過程で気づいたのは、「一緒に歩く」ことの力です。子どもが支援を受け入れるのは、言葉や理屈ではありません。隣で共に歩み、寄り添ってくれる存在があるからこそ、心を開き始めるのです。

遍路を通じて私は改めて、不登校支援の本質を体感しました。支援者は「指導する人」ではなく「共に歩く人」でなければならない――この原点を、遍路が教えてくれたのです。

不登校・引きこもりの現状と課題

現代の日本において、不登校はもはや特別なことではありません。いじめ、学習のつまずき、発達特性、家庭の事情など、理由はさまざまですが、どの子にも起こり得ることです。

文科省のデータによると、不登校の児童生徒数は2023年度に過去最多を更新しました。
さらに内閣府の調査では、15歳から64歳までの引きこもり状態にある人は146万人以上と推計されています。これは社会にとって深刻な課題です。

しかし、多くの家庭では「そのうち行くだろう」「本人がやる気になるまで待とう」と考えてしまいがちです。確かに子どもの気持ちを尊重することは大切ですが、
40年以上の支援経験から断言できるのは、“待つだけ”では状況は悪化するということです。

生活リズムは乱れ、昼夜逆転し、ゲームや動画に依存し、やがて外出できなくなる。この流れに入ってしまうと、親だけでは抜け出すのが困難になります。だからこそ、家庭と支援者が連携し「一歩を踏み出す仕掛け」をつくることが必要です。

四国遍路で「一歩一歩の積み重ね」が大切であるように、不登校支援も小さな行動から始まります。大切なのは、親子だけで抱え込まず、専門的な支援を取り入れることです。

四国遍路と不登校支援の共通点

四国遍路を歩いていると、何度も心が折れそうになる瞬間があります。炎天下での長距離、果てしなく続く上り坂、突然の雨。そんな時に支えになるのは、共に歩く仲間の存在や、道端で差し出される「お接待」の温かさです。

不登校や引きこもりの支援も同じです。子どもは「学校に行きたいけれど怖い」「外に出たいけれど自信がない」という葛藤を抱えています。そんな時、無理に背中を押すのではなく、隣に並んで歩く存在が必要です。「一緒に歩こう」という姿勢が、子どもの心を解きほぐします。

遍路の道程を振り返ると、不登校支援に通じる要素がいくつもあります。

  • 一歩一歩進む大切さ:最初から88ヶ所を巡ろうとすると途方に暮れますが、まずは「今日はここまで」と区切ることで歩き続けられる。不登校の子も「まずは朝起きる」「家族と食事する」など小さな一歩から始めればいいのです。
  • 出会いがもたらす力:遍路の途中での出会いが励みになるように、支援現場では仲間やピアサポートが大きな力になります。
  • 坂道を登る経験:困難を乗り越える過程で「やればできる」という自己効力感が生まれる。これは不登校克服の要です。
  • ゴールを目指す旅:遍路は結願(けちがん=完歩)を目指すもの。不登校支援も「社会で自立する」というゴールがあるからこそ、途中の困難に意味が生まれます。

遍路は“人生の縮図”です。その道程は、不登校や引きこもりの子どもが歩む回復の道と重なっています。

成功事例に見る「歩き出す力」

40年以上の支援活動で出会った子どもたちは、それぞれに重い荷物を抱えていました。けれども、一歩を踏み出すことで未来を切り拓いた子が数多くいます。

Y子さん(10年引きこもり→公務員)

中学2年から10年間引きこもり続けたY子さん。支援を受け、アルバイトと学び直しを重ね、やがて保育士資格を取得しました。現在は公務員として地域に貢献しています。「もう自分には未来がない」と思い込んでいた彼女が歩き出したきっかけは、支援者に伴走してもらったことでした。

カイト君(不登校→自衛隊)

中学1年から不登校になり、エアガンで家族や支援員を威嚇する日々。7ヶ月の家庭訪問支援を経てフリースクールに通うようになり、高校卒業後に自衛隊へ。卒業式に堂々と後輩たちの前に立つ姿は、別人のようでした。

カズキ君(成績不振→公務員)

中高一貫校で不登校となり、家庭内暴力も起こしていました。しかし、通信制高校に転校して生活を立て直し、卒業後は区役所に勤務する公務員に。親御さんは「信じてよかった」と涙を流していました。

これらの事例に共通するのは「小さな一歩を支えてもらったこと」です。遍路も、支援も、最初の一歩を踏み出せるかどうかで結果が変わります。

ステージ判定と遍路の道程

当協会では「不登校・引きこもりステージ判定表」を用いて子どもの状態を見極めます。

  • ステージ1:登校しぶりが始まる
  • ステージ2:不登校が続く
  • ステージ3:生活リズムが乱れ、昼夜逆転
  • ステージ4:外出できず引きこもる
  • ステージ5:意欲が低下し、無気力状態に

これは遍路の道程とよく似ています。
最初は「少し歩きたくない」程度でも、放置すれば坂道のように厳しくなり、ついには足が止まってしまう。だからこそ「今どのステージにいるか」を把握し、適切なサポートをすることが必要です。

遍路も一気に結願できるわけではありません。まずは区切りの札所を目指し、積み重ねていく。その過程が自信と達成感につながります。不登校支援も同じく「段階的に進めること」が重要なのです。

「行くまでが大変」をどう乗り越えるか

保護者会では「先生、うちの子もお遍路に連れて行ってください」という声をよくいただきます。けれども同時に「でも、行くまでが大変」「参加をどう説得すればいいか」という不安もつきまといます。

私はいつもこう答えます。
「大丈夫、迎えに行きますから」。

子どもが自分から動けなくても、親や支援者が伴走することで初めの一歩は踏み出せます。そして一度歩き出してしまえば、自然と子どもは変わります。自然の中で汗をかき、人と語らいながら歩くことが、閉じていた心を解き放つのです。

現在、「不登校・引きこもり解決 お遍路の旅」企画を検討しています。
10名以上の希望者が集まれば実施する予定です。
行くまでは大変でも、歩き出せば必ず変化が始まります。もし関心のある方がいらっしゃいましたら、ぜひご希望をお聞かせください。

支援とお遍路に通じる“同行二人”の心

遍路では「同行二人」という言葉が象徴的です。自分一人で歩いているようでいて、常に弘法大師が共に歩んでいるという考え方。孤独ではなく、見守られている安心感が力になります。

支援の現場でも同じです。子どもは「自分は一人だ」と思い込んでいるからこそ、外の世界に背を向けてしまいます。しかし、親や支援者が「一緒に歩く存在」として寄り添えば、「自分は一人じゃない」と気づけます。

孤立を防ぎ、共に歩む姿勢。それが遍路と不登校支援に通じる“同行二人”の心なのです。

支援の7ステップと遍路の実践

当協会の7ステップ支援は、遍路の体験と驚くほど重なります。

  1. ステージ判定(今どの地点にいるかを把握する)
  2. 親のためのコーチング(心構えを整える)
  3. 家庭訪問支援(外の風を届ける)
  4. 生活改善合宿・学生寮(歩きながら集団生活を体験する)
  5. 学び直し(新たな挑戦)
  6. アルバイト・インターン(現場で経験を積む)
  7. 社会貢献・自律支援(人の役に立つ喜びを知る)

遍路も、歩き出し、仲間に出会い、宿で生活を共にし、祈りや奉仕を通じて「自分の役割」に気づいていきます。支援も同じプロセスを踏むことで、子どもが回復していきます。

まとめ|一歩踏み出せば道は拓ける

不登校・引きこもりは、必ず解決できる課題です。
遍路が教えてくれるのは「歩き続ければ必ずゴールがある」という真実です。

保護者の皆さまへ――待っているだけでは変化は訪れません。行動する勇気こそが、子どもを変える一歩になります。

そして最後にお知らせです。
不登校・引きこもり解決に向けた“お遍路の旅”は、10名以上の希望者が集まれば実施いたします。
行くまでは不安もあるでしょう。しかし歩き始めれば、必ず変化が訪れます。

ぜひ、このブログを読んでくださった皆さまのご希望やご意見をお聞かせください。
そして、まずは30分の無料相談から一歩を踏み出してみませんか。

  • URLをコピーしました!
目次