文科省が動いた!通信制高校の“質”と不登校支援のリアルを解説

「通信制高校に通えば、不登校は解決する」
そう信じて入学したものの、再び部屋にこもるようになった──。
文部科学省が実地調査を4倍に増やす方針を発表し、通信制高校の“質”が問われる今、私たちは改めて支援の原点に立ち返る必要があります。
本記事では、40年以上にわたり不登校・引きこもりを支援してきた一般社団法人不登校引きこもり予防協会の視点から、現場のリアルとこれから求められる“本当の支援”を解説します。

目次

はじめに:通信制高校は不登校の解決策か?

「うちの子は不登校だから、全日制は無理。通信制高校なら安心だと思っていました」
──こうした保護者の声を、私たちは何度となく聞いてきました。

確かに、通信制高校は不登校の受け皿として、近年急増している選択肢です。2025年現在、生徒数は30万人を超え、高校生の約1割が通っているといわれています。

しかし、通信制高校に入学したからといって「不登校が解決する」わけではありません
場合によっては、逆に“引きこもり”が深刻化することもあります。

この記事では、文部科学省が動き出した「通信制高校の質の実態調査」から見えてきた課題と、
私たちが40年以上にわたる支援の中で培ってきた「本当に効果的な支援方法」について、リアルな視点でお伝えします。


通信制高校が急増する背景とは?

通信制高校の数は、ここ20年間で約2倍に増加。学校数は332校に達し、なかでも株式会社が運営する「広域通信制高校」は127校と、こちらも3倍に増加しています。

背景にあるのは、年々増加する不登校の子どもたち
2023年度には小中学生の不登校数が29万人を突破し、過去最多を更新。高校でも同様の傾向が見られ、文部科学省の調査では高校の中退率も上昇しています。

この流れの中で、通信制高校は「進学先」として選ばれるようになりました。
しかし急拡大に伴い、様々な問題が浮き彫りになってきたのです。


文科省が動いた!通信制高校の“質”と不登校支援のリアルを解説

2025年9月、文科省は通信制高校への実地調査件数を年間40校へ拡大すると発表しました。
これは、従来の4倍にあたる大幅な増加です。

調査対象は、生徒を3都道府県以上から集める「広域通信制高校」。
背景には、以下のような実態があります。

  • 教員ではない職員を教員数にカウントしていた
  • 面接指導(スクーリング)が“カレー作り”や“イチゴ狩り”のみ
  • 数秒で終わるリポートを課題として認定
  • 前年度とまったく同じ試験問題を繰り返す

これでは、高校卒業の本来の意味を果たせないと言われても仕方がありません。


通信制高校に行ったのに引きこもる子どもたち

私たちのもとには、こんな相談が毎日のように寄せられます。

「通信制高校に入ったけど、スクーリングにも行けず、家でYouTubeとゲームだけ」
「通い始めた直後は良かったけど、徐々に朝起きられなくなり、また引きこもりに」

その背景には、「通信制高校にさえ入れば安心」という誤解があると感じています。

通信制高校は「自宅学習中心」ですが、実際は自己管理能力や家庭環境のサポートが重要
それがなければ、不登校の延長線として、“高校生の引きこもり”に進行する危険があるのです。


当協会が考える「不登校支援の本質」

では、どうすれば通信制高校でも“学び直し”や“社会復帰”ができるのでしょうか?

私たち、一般社団法人不登校引きこもり予防協会では、以下のような3ステップで支援を行っています。

🟢ステップ1|規則正しい生活を取り戻す

まずは生活リズムの立て直し。朝起きて、食べて、動く。
通信制高校であっても、生活が崩れていてはリポートもスクーリングも継続できません。

そのため、当会では「生活改善合宿」や「学生寮での共同生活」を提供し、リズムの再構築を行います。

🔵ステップ2|自信と自律の回復

リズムが整ってきたら、徐々に「学び直し」を始めます。
サポート校での授業、家庭訪問型のピアサポート、オンラインでの個別対応も活用し、「わからない」が「わかる」に変わる体験を積み重ねていきます。

🔴ステップ3|社会貢献につながる自律支援

最終段階では、アルバイトやボランティア、インターンなどの社会体験を通じて、「自分の居場所」「自分の役割」を実感できるようにします。

この3つのステップを経て、はじめて「通信制高校を卒業する意味」が生まれるのです。


“卒業”はゴールではなくスタート

よくある誤解の一つに、「高校を卒業すれば安心」というものがあります。
しかし私たちは、卒業こそが「自律へのスタート」だと考えています。

実際に、卒業後に何も支援がなく、再び引きこもるケースも少なくありません。

通信制高校は、あくまで「不登校の解決手段の一つ」であり、「完全なゴール」ではない。
それを踏まえたうえで、進学や就職など“次のステップ”を見据えた支援体制が求められています。


支援で変わった子どもたちの実例

以下に、実際に支援を受けた生徒の成功例を紹介します。

◉ Y子さん|10年引きこもり → 通信制高校 → 保育士 → 公務員

親知らずの痛みで外出を決意。それをきっかけに支援開始。最終的に自立し、結婚も。

◉ カイト君|中1で不登校 → 合宿支援 → 自衛隊入隊

家庭内でエアガンを撃ちまくっていた彼が、今では後輩の卒業式に参加するまでに。

◉ カズキ君|中高一貫校 → 成績不振 → 家庭内暴力 → 通信制高校 → 公務員

環境を整え、学生寮での生活から立て直し、自治体の職員として働いている。

これらの事例に共通するのは、「学校を変えただけではない」という点です。
生活・心・環境すべてを整え、「自分の力で立つ」プロセスを支援したことが、回復の鍵になったのです。


学校選びで見ておくべき3つのポイント

通信制高校を選ぶとき、どんな基準で判断すべきか。以下の3点は必須です。

  1. 教員の数と質はどうか?(教員免許の有無も確認)
  2. スクーリングや面談の頻度・質は?
  3. サポート体制(学習支援、生活支援、心理的支援)はあるか?

見学や個別相談の際、これらを具体的に質問することで、「本当に信頼できる学校」を見極めることができます。


保護者にできること:選んだ後が本当の支援の始まり

進学後、子どもが部屋から出られなくなった…
そんなとき、「学校のせいだ」と責めるよりも、まずは家庭内の関わりを見直すことが大切です。

  • 起こす、叱るより、まずは寄り添う
  • 成功体験を一緒に見つける
  • 家庭訪問支援などのアウトリーチも活用する

そして何より、「子どもを変えようとする」のではなく、「親も一緒に変わっていく」ことが、解決の第一歩になるのです。


まとめ:通信制高校だけに頼らない支援を

通信制高校は、不登校の子どもたちにとって貴重な選択肢のひとつです。
しかし、その「質」に関しては、今まさに国全体が見直しを迫られています。

文科省が動き出した今こそ、保護者も“正しい情報”を得て、“正しい選択”をするタイミングです。

私たちの支援の本質は、「どこに通うか」ではなく、「どう生き直すか」。

ぜひ、子どもたちの未来を一緒に作っていきましょう。

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