『見守る』は本当に正しい?10年の引きこもりから脱出!Y子さんの軌跡

「うちの子も、そっと見守っていれば…」「本人の気持ちを尊重したい」——そう考える親御さんは少なくありません。
しかし、見守るだけの時間が、実は“引きこもりを固定化”させてしまっているケースもあるのです。

今回は、中学2年で不登校になり、10年間引きこもったY子さんが公務員として自律するまでの道のりを通じて、「見守り」だけでは足りない理由と、本当に必要な支援のあり方を私、一般社団法人不登校引きこもり予防協会の杉浦孝宣がお伝えします。

はじめに|「見守る」は正しいのか?問い直す時が来た

「うちの子のタイミングを信じたい」「そっと見守るのが一番」
そんな親御さんの声を、私は何度も聞いてきました。確かに、無理やり学校へ行かせるような強引な対応が子どもを傷つけてしまうケースもあります。子どものペースを尊重する「見守り」は、一見、愛情深く、正しく見える対応です。

しかし、それは本当に“正しい見守り”だったのでしょうか?
10年という長い引きこもり生活を経て、公務員として再出発したY子さんの歩みは、私たちにこう問いかけてくれます。

「あの時、もう少し誰かが関わってくれていたら、10年もかからなかったかもしれません」

Y子さんの言葉は、見守ることの意味、そして限界を深く考えさせてくれます。

目次

『見守る』は本当に正しい?10年の引きこもりから脱出!Y子さんの軌跡

Y子さんが不登校になったのは、中学2年の秋。
きっかけは、家庭環境の変化でした。ご両親が離婚し、それまで穏やかだった母親が精神的に不安定になり、Y子さんに厳しくあたるようになったのです。

Y子さんは感受性が豊かで、人の気持ちを強く受け止めてしまうタイプでした。
友人との関係にも気を遣い、家庭では母親に気を使い……中学生の心には背負いきれない荷物でした。


「最初は風邪かな?って思って休ませていたんです。でも、それが2日、3日と続き、1週間、1ヶ月……気づけば半年が経っていました」と、当時のお母様は語っていました。


そして中学卒業後、進学せずにそのまま引きこもり状態に。
Y子さんの時間は、中学2年のまま、止まってしまったのです。

その後の10年間、彼女は一度も家を出ませんでした。
外との関わりは一切なく、着る服はすべて通販。流行とは無縁の落ち着いたスタイルで、
初めて当会に面談に来たときも、まるで30代のような雰囲気をまとっていました(彼女はまだ24歳でした)。

歯の痛みがくれた「外に出る」きっかけ

24歳になっても、Y子さんは依然として一歩も外に出られないままでした。
そんな彼女の引きこもり生活に、ある日“予期せぬ転機”が訪れます。

それは「親知らずの激痛」でした。

「とにかく、もう我慢できないくらい痛くて…。それで、どうしても歯医者に行かなくちゃ、って思ったんです」

歯の痛みが、10年閉ざされていた扉をこじ開けたのです。
外に出るのは怖い。電車に乗るなんて何年ぶりかも思い出せない。
けれど、それ以上に「なんとかしてほしい」という強い気持ちが勝った瞬間でした。

その日を境に、彼女は少しずつ外に出るようになります。

歯医者通いのあと、ネットで「高校卒業 引きこもり」などと検索し、私たちの団体の存在を知りました。
そして次の日、母親に付き添われながらも、自らの意志で高卒支援会を訪ねてきたのです。

「ビックリしたでしょ? 私の服装」

初対面でのY子さんの第一声がこれでした。

「全部、通販なんです。家から出られなかったから…。通販って年齢層高めじゃないですか? だから、ちょっとオバサンっぽいですよね」

彼女はそう言って、少しだけ笑いました。

この小さな笑いには、「本当は自分でもどうにかしたかった」「変わりたかった」という強い想いが込められていたように感じました。

通信制高校での学び直しと10年分のカウンセリング

「高校卒業したいんですけど、できますか?」
彼女の言葉に、私はすぐ「できますよ」と答えました。

ただし、それは「すぐに」ではなく「丁寧にステップを踏めば」の話です。

私たちは、彼女がどんな生活をしてきたのか、何を感じ、何に苦しんできたのかを理解するため、まずは1週間かけて“10年分の話”をじっくりと聴きました。

両親の離婚、母親との関係の変化、自分の気持ちを言えなかったこと、
好きだったこと、怖かったこと——。

彼女は語るたびに涙を流しながらも、言葉を探し、10年ぶりに「外の人」と向き合っていきました。

「自分の過去をちゃんと話すのって、怖いけど、どこかスッキリするんですね」

私たちは、彼女の過去を“否定せず”、ただ“聴くこと”に集中しました。
それが、次の行動への第一歩になると確信していたからです。

通信制高校への入学手続きは、もちろんスタッフがサポート。
履歴やブランクのある生徒に合わせた“学び直し”カリキュラムを使って、彼女は週に1〜2回、校舎へ通い始めました。

最初は緊張で顔が強張っていましたが、次第に笑顔が見えるように。

彼女にとって「学び直し」は、社会ともう一度つながるための準備運動でもありました。

履歴書の書き方から始まった「人生の再出発」

「まずは、アルバイトでもしてみようか?」

そう私が提案したとき、Y子さんは戸惑いながらも、こう聞き返しました。

「履歴書って、どう書くんですか?」

私ははっとしました。
彼女は24歳。見た目は大人ですが、社会経験は中学2年で止まったまま。
そんな彼女にとって、「履歴書を書く」という行為も、未知の体験だったのです。

スタッフが1から丁寧に履歴書の書き方を教え、服装や面接の受け答えまで一緒に練習しました。
そして数週間後、ドーナツチェーン店のアルバイトに見事採用が決まったのです。

「本当に、私が受かると思わなかったです」

そう言った彼女の表情は、もう引きこもっていた頃のそれではありませんでした。
人と関わる練習の場として、私はチェーン店のアルバイトを勧めています。
理由は、マニュアル教育が整っていて、コミュニケーションの基礎を自然と学べるからです。

彼女は真面目に働き、少しずつ店内でも信頼を得ていきました。
そして1ヶ月後——

髪の色は自然な茶色に、服装は今風になり、立ち姿や表情もまるで別人のよう。
外見だけでなく、自信と笑顔が戻ってきたのです。

Y子さんが人生を取り戻し始めた瞬間でした。

ドーナツ店のアルバイトがY子さんを変えた

ドーナツチェーン店でのアルバイトは、Y子さんにとって「社会との初めての再接続」でした。

マニュアルに沿った接客、時間通りの出勤、先輩スタッフとの会話——
そのすべてが彼女にとっては初体験であり、恐怖でもあり、そして成長のきっかけでもありました。

最初のうちは、緊張からか声も小さく、お客様との対応にもぎこちなさがありました。
それでも、「いらっしゃいませ」が言えた!
「ありがとうございます」が自然に出た!

一つ一つの小さな成功体験が、彼女の表情と姿勢を変えていったのです。

1ヶ月後、最初は通販で揃えていた“おばさんっぽい”服装から、明るく爽やかな装いへ。
ヘアスタイルも少し変えて、髪も明るい茶色に。
何より、笑顔が自然に出るようになったことが、私たち支援者にとって何よりの喜びでした。

Y子さん自身が、こう語っていました。

「“働く”って、思っていたより怖くなかったです。人に“ありがとう”って言われると、嬉しいですね。」

この時、彼女の中で「自分にはできない」という思い込みが、「やればできる」に変わり始めたのです。

※Y子さんが引きこもりから立ち直り、高校卒業までの詳細を 「高校中退 不登校でも引きこもりでもやり直せる」で

書きました※

学び直し、保育士資格、そして公務員に

アルバイトと並行しながら、Y子さんは通信制高校での学びを続けました。
元々学ぶことに対して前向きな姿勢があり、遅れを取り戻すためにコツコツと課題に取り組む様子が印象的でした。

彼女は3年間かけて、見事に高卒資格を取得。
そして次に目指したのは「保育士になること」。

「私も、子どもに関わる仕事をしたいです」
10年引きこもっていた彼女の口から出たこの言葉に、スタッフ全員が胸を打たれました。

彼女はその後、短大へ進学。
発達心理学や子どもの保育、実習など、未経験の分野にも積極的に取り組みました。

卒業後、念願の保育士資格を取得。
そのまま特別区(23区)での公務員採用試験にチャレンジし、見事合格!

現在は保育園で働く公務員として、日々子どもたちと笑顔で接しています。
さらには結婚もし、公私ともに充実した日々を送っています。

「見守る」だけでは届かない支援のタイミングとは

Y子さんの軌跡から私たちが学ぶべきことは、「見守るだけ」では子どもは変われないという事実です。

もちろん、無理強いは逆効果です。
しかし、適切なタイミングでの「関わり」や「提案」がなければ、子どもは前に進むチャンスさえ得られません。

私たちは40年以上の支援経験から、次のような「支援アクション」が効果的であると実感しています:

① タイミングを逃さない「対話の種まき」

  • 歯の痛みのように“出ざるを得ない”きっかけはチャンス。
  • その時に話を聴き、次の一歩を提案できるかが重要。

② 外との接点をつくる「ピアサポート・合宿・アルバイト」

  • 一人では無理でも、同じ経験を持つ仲間の存在が心の支えに。
  • ピアサポートで背中を押されて一歩を踏み出す例も多数。

③ 「見守り」と「導き」のバランス

  • 子どもの意思を尊重しつつも、次のステップを“提案”し続けること。
  • 「いつでも頼っていいんだよ」という姿勢を家庭が持ち続けること。

「行動」する支援が生んだ他の成功事例紹介

Y子さんだけではありません。
私たちはこれまでに1万人以上の不登校・引きこもりの子どもたちを支援してきました。

ここで、同じように“見守るだけでは変われなかった”けれど、行動型支援で人生を変えた若者たちを一部ご紹介します。

  • カイト君(中1で不登校→通信制高校→自衛隊入隊)
  • リョウタ君(不登校→家庭訪問→航空自衛隊へ)
  • カズキ君(家庭内暴力→通信制高校→区役所公務員)
  • G君(8ヶ月の引きこもり→美大合格)
  • サコウ君(通信制→就労支援→プライム上場企業に就職)

成功事例の一覧は、以下のページにまとめています:

👉 中高生の引きこもりに悩む親必見!成功事例15選

これらの子どもたちに共通するのは「支援が入るタイミングで未来が変わった」ことです。

保護者の皆さまへ|今、できること

最後に、今このブログを読んでいる保護者の方にお伝えしたいことがあります。

「見守ること」は大切です。でも、「関わること」はもっと大切です。

Y子さんのご両親も、当初は「そっとしておくことが正解」だと思っていました。
しかし10年が過ぎ、ようやく「このままではいけない」と相談をしてきてくれました。

お子さんの未来は、家庭の対応次第で変わります。

・子どもが話し出すまで、聴き役になること
・少しでも外とつながれる“場”を探してあげること
・本人が気づいていなくても、支援を提案し続けること

このブログを読んだ今が、その第一歩です。

私たち、一般社団法人不登校引きこもり予防協会は、30分の無料相談を受け付けています。
お子さんの状況に合わせて、最適なステップをご提案いたします。

「見守る」だけの日々を、今日で終わらせましょう。

行動こそが、未来を変える第一歩です。

一般社団法人不登校・引きこもり予防協会は、40年前より 「子どもたちが規則正しい生活をし、自信を持ち、自律し、社会に貢献する未来を実現する」という教育ミッションを掲げ、不登校やひきこもりという問題に積極的に取り組み、
1万人以上の子供たちをサポートしてきました。

このミッションを達成するため、私たちは以下の3つのステップに基づいたプログラムを展開しています。

引きこもり高校生の未来を変える3つのステップ|杉浦孝宣が解説

  • 規則正しい生活をする 不登校合宿、学生寮、海外留学を通して生活習慣を整えます。
  • 自律して自信をつける 学び直しを通じて学習に対する自信を育みます。
  • 社会貢献をする 職に就くことを最終目標に、アルバイトやインターンを体験させます

これらのステップを実践し、1万人以上の子どもたちが変わり、成功率は9割以上を誇ります。

こうした活動はNHK「おはよう日本」 プレジデントオンライン Youtube pivotでは前編後編 30万超再生回数 多くの親御さんに希望を届けました。

この経験をまとめた4冊の著書

不登校・ひきこもり急増 コロナショックの
支援の現場から
(光文社新書) 

不登校・ひきこもりの9割は治せる 1万人を立ち直らせてきた3つのステップ(光文社新書) 

もう悩まない!不登校・ひきこもりの9割は解決できる(実務教育出版)

高校中退 不登校でも引きこもりでもやり直せる!(宝島社新書) 

加えて成功事例が満載のリンク集を参考にしていただきたいと思います。当会のミッションに共感し、真剣にお子さんの不登校や引きこもりを解決したい方、ぜひ私たちと一緒に取り組みましょう。一緒にお子さんの未来を輝ける人生に切り開いていきましょう!時間は待ってくれません。不安を感じたその時が、解決への第一歩を踏み出すチャンスです。私たちと一緒にお子さんの未来を守りましょう!

【まとめ】

  • 見守りは大切だが、タイミングを逃さず「関わること」が最重要
  • Y子さんの10年の引きこもりを乗り越えた事例から、支援の力を実感
  • 多くの成功例に共通するのは「第三者の支援」と「行動」
  • 今すぐできるのは、親が一人で抱え込まないこと。相談・支援を受ける勇気
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