【実話】家庭内暴力に発展した不登校中高生が立ち直った理由とは

こんにちは、一般社団法人不登校・引きこもり予防協会の杉浦孝宣(すぎうらたかのぶ)です。これまで40年以上にわたり、不登校や高校中退、引きこもりといった問題に向き合い、1万人以上の若者を支援してきました。
今回は、不登校から家庭内暴力に発展したある中高生の実話を通して、「どうして暴力にまで至ってしまうのか」「どんな支援で立ち直るのか」をお伝えしたいと思います。

今この記事を読んでくださっている親御さんの中には、

  • 「うちの子が暴れるようになってしまった…」
  • 「どう接したらいいか分からない」
  • 「もう手に負えない、限界だ…」

そんな風に感じている方もいらっしゃるかもしれません。

でも、ご安心ください。
子どもは変われます。支援の手があれば、暴力も、不登校も、乗り越えられます。


目次

不登校中高生の“家庭内暴力”が急増する背景

私たちのフリースクールには、常時50名前後の中高生が在籍しています。男子生徒に限っていえば、
およそ半数以上が「家庭内暴力」の経験者です。

最近では、こういった会話がスタッフ会議で交わされました。

「最近の家庭内暴力、ひどくなってるよなぁ。包丁を振り回すケース、何件もあるよ」
「うちに来る子たち、そんなふうには全然見えないですよね。むしろ素直な子が多い」
「何か、特別な支援でもしてるのかな」
「してないですよ。ただ、普通に接してるだけです」

実際、家庭内では暴言・暴力がひどくて手がつけられなかった子でも、当会に来ると、別人のように落ち着いた表情を見せることが多々あります。

では、なぜ家庭で暴力的になってしまうのでしょうか?


原因は「甘え」と「居場所のなさ」

私たちは、不登校から暴力に至る子どもたちの背景をこう分析しています。

  • 家庭が唯一の居場所になってしまっている
  • 甘えが限界を超えて“依存”に変わっている

つまり、学校にも行けず、社会にも出られない状態で、家庭だけが頼れる場所になってしまう。
そんな中で自分の思い通りにならないと、感情を爆発させてしまう。結果、暴言や暴力に発展する。

それはSOSのサインでもあります。


【実例】M君のケース:パソコン不良がきっかけで不登校に…

ここで、実際に支援したM君(当時高校1年生)のケースをご紹介します。

M君は、成績も悪くなく、人ともうまくやれるタイプ。
ただ、非常に繊細な面があり、「真面目すぎる」一面がありました。

そんな彼が不登校になったのは、高校入学直後。

入学時に学校から配られたパソコンが初期不良で、上手く起動しなかったことをきっかけに「自分はダメなんだ」と思い込んでしまい、翌日のオリエンテーリングを欠席。

これが連鎖的に不登校へとつながっていきます。


家庭内での口論と暴力、そして母の涙

不登校が数ヶ月続く中で、家庭内では徐々に空気が悪化。

「勉強はどうするの?」「進級できないよ」「そろそろ動いたら?」

そういった言葉が火種となり、M君は母親と激しく口論するようになります。
ある日には、怒りが頂点に達し、暴力をふるってしまったのです。

母親は泣きながら、「もう限界です……」と当会にご相談に来られました。


トイレに立てこもったM君に話しかけ続けたスタッフ

当会では、アウトリーチ(訪問支援)を行っており、スタッフがご自宅に伺いました。

そのときM君は、トイレに閉じこもって出てこない状態
しかし、スタッフは焦らず、壁越しに30分以上かけて語りかけました

  • 「高校は留年になるかもしれない。でも今ならやり直せる」
  • 「君の人生はこれから。進学も就職も、まだ選べる」
  • 「逃げたっていい。でも、動き出す勇気は君自身にしか持てないんだよ」

最後の方で、M君は少しずつ声を返すようになり、
「……月曜日、ちょっと見学に行ってもいいですか」と、トイレから出てきました。


通信制高校に転学、そして今は大学受験を目指して元気に通学

その後、M君は当会の提携する通信制高校に転学。
最初は緊張しながらも、スタッフや同級生と少しずつ打ち解け、今では元気に通学しながら大学進学を目指しています。

彼が言った言葉が印象的でした。

「あのとき、トイレ越しに話しかけてもらえなかったら、たぶん、俺はずっと部屋から出られなかったと思います」


暴力は“悪”ではなく“SOS”──見誤ってはいけない

親御さんの中には、子どもに暴力をふるわれることで、

「こんな子に育てた覚えはない」

「うちはもうダメだ」

と、自己否定に陥る方が多くいます。

でも、ちょっと立ち止まって考えてみてください。

暴力や暴言は、“子どもの心が壊れそうになっているサイン”かもしれないんです。


家庭内暴力の対応策:3つのポイント

M君のようなケースは、決して特別ではありません。
私たちが支援してきた中高生の中にも、多くが似たような背景を抱えています。

では、親はどうすればいいのでしょうか?
ここで、家庭内暴力に悩む親御さんへのアドバイスを3つお伝えします。

① 一人で抱え込まない(第三者を入れる)

まずは、信頼できる外部の支援者に頼ることが大切です。
親子だけの世界に閉じこもると、お互いが限界に達し、関係が崩れやすくなります。

② 居場所を作る(家庭以外の安心空間)

学校に行けなくてもいいんです。
でも、家庭しか居場所がない状態は危険です。
フリースクールや通信制高校など、家庭外の“安全基地”を持たせてあげるだけで、暴力が止まるケースも多くあります。

③ 親子関係の“甘え構造”を見直す

親はつい、全てを受け入れてしまいがちです。
でも、「ここまではOK、ここから先はNG」という線引きが必要です。
親子でも、“適度な距離感”を保つことが、暴力の予防につながります。


まとめ:子どもは変われる。今、あなたの対応が未来を変える

昭和世代の私にとって、親に手をあげるなんて考えられない時代でした。
しかし、令和の今、「包丁を振り回す不登校中高生」という現実が目の前にあります。

でも、悲観しないでください。
その子どもたちも、ちゃんと変われるんです。支援があれば。

もし今、お子さんの暴力に悩んでいるなら、今すぐご相談ください。
私たちは、そうしたご家庭を1件でも多く救いたいと、心から願っています。

🎥関連動画:M君が語る「昼夜逆転の直し方」

この動画では、昼夜逆転による #生活リズム の乱れが原因で不登校になったM君の改善事例を紹介しています。高校1年生の5月から始まった昼夜逆転生活は、M君が学校に行くことを拒否する大きな要因となりました。特に、朝起きることができず、徹夜が続いて学校を休むようになったのです

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