首都圏の転学事情 http://tokyocampus.kir.jp/npo/

そろそろ受験勉強も本番といったシーズンになりました。受験生にとっては正念場ですが、新しい環境を求めている高校生にとってもまた、大切な時期です。今回は、「高校転校」をテーマにお話したいと思います。

NPO教育支援協会の窓口では、私立高校から公立高校への転校を希望する方からの相談が多く寄せられています。東京都以外からも様々な相談が寄せられていますが、高校のシステムはその都道府県で異なり、転・編入の状況も様々です。そこで、首都圏の埼玉・千葉・神奈川県の教育委員会に、高校中退の危機にある転学希望者に対して受け皿どなりうる公立高校があるかどうか問い合わせてみたところ、東京都とは違った実態が浮かび上がってきました。

この3県の公立高校では、転入に関していくつかのはっきりとした基準が設けられていました。親の転勤などによる一家転住、深刻ないじめなどの有無、そして経済的理由などです。帰国子女や転勤などで、転学せざるを得ない。元の高校でいじめに遭い、通学できる状況ではない。また、両親の離婚などで学費の高い私学に通うことができなくなってしまった。こういった、ほぼやむにやまれないといった理由がなければ転学はできないということでした。

NPOで相談を受けた多くの方々は、このようなケースでの転学ではありません。部活で自分は一生懸命頑張りたいのに、顧問の先生がやる気がなく反りがあわない。吹奏楽部が魅力的で学校を選んだが、あまりにも授業のレベルが低く周りとなじめなかった。部活推薦で入学したが、怪我をしてしまい私学を辞めざるを得なくなった。こういった理由で転学を希望している生徒がいるのに、一家転住・いじめ・経済的事由でしか転学が認められないというのは、あまりにも封建的な制度なのではないのでしょうか。

それに比べると東京都では、そういった事由がなくても学期の終わりごとに転学試験があり、転校のチャンスが与えられています。私の経験からすると、転校を希望している生徒は、学校全体に何か決定的な不満があるのではなく、大きな学校生活の中のごくごく小さな部分に理由があるようです。こういった場合、学校という環境が変われぱ不登校といった問題も自然と解消されるケースが多く、実際にそういった生徒をたくさん見てきました。

NPOでは、首都圏を対象とした教育相談を受けていますが、それは、都内に住んでいなくても着都圏近郊に住んでいれば、東京都の教育事情でもって相談に答えられるからです。東京都以外に住まいのある方でも、都内に引っ越したり、また都内で働いていれば、都立高校を受験することができます。公立高校は中退者のための受け皿という役割もあるはずです。本来ならば、地元の公立高校に転校して、その高校で豊かな友情や感性を育む。そして、その地域全体で次代の人材を育成していくというのが、理想の公立高校のあり方なのではないでしょうか。

東京都が先陣を切って高校中退問題、ひいては二ート・フリーター対策として高校転学をより身近なものにしていることには、大変な意義があると思います。首都圏だけでなく全国的な規模で、このような教育支援が行われていくことを望んでいます。

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杉浦 孝宣
杉浦孝宣(すぎうら・たかのぶ)は、一般社団法人未来自律支援機構(JADA)代表理事、認定NPO法人高卒支援会創業者。自身も小学3年生で不登校を経験し、その体験を原点に40年以上にわたり不登校・高校中退・引きこもり支援に携わってきた。 これまで1万人以上の相談に対応し、家庭訪問、生活改善合宿、学生寮、学び直し支援、就労支援などを通じて、多くの若者の社会的自律を支援している。 「子どもは必ず変われる」を信念に、学校復帰だけをゴールとせず、一人ひとりが自ら考え、行動し、社会に参加していく「社会的自律(Autonomy)」を目指した支援を実践している。 著書に『不登校・ひきこもりの9割は治せる』『高校中退 不登校でも引きこもりでもやり直せる』『もう悩まない!不登校・ひきこもりの9割は解決できる』など。近年は一般社団法人未来自律支援機構(JADA)を通じて、JADA Stage OSと7つの自律支援ステップを体系化し、国内外へ発信している。 台湾版著書も出版され、教育・福祉・行政・企業・国際社会との連携を通じて、若者の社会的自律支援モデルの普及に取り組んでいる。
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