
40年以上の指導歴と不登校・ひきこもりの
9割を立ち直らせた解決力
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40年以上の指導歴と不登校・ひきこもりの
9割を立ち直らせた解決力
こんにちは。一般社団法人未来自律支援機構(JADA)代表理事の杉浦孝宣です。
今回は、高校1年生で不登校になり、昼夜逆転とゲーム中心の生活から、寮生活や社会体験を経て、看護系大学へ進学したシュン君の実話をお伝えします。
高校1年生の6月末から学校へ行けなくなったシュン君は、「明日は行く」と話しても、翌朝になると動けませんでした。
次第に昼夜が逆転し、食事は1日1回、入浴は週1回、外出も週1回ほどになりました。起きている時間の大半をゲームに費やし、家族との会話も減っていきました。
こうした姿を見ると、多くの保護者は「ゲームをやめさせれば、学校へ戻れるのではないか」と考えます。
しかし、ゲームは原因ではありません。
自分で十分に納得して選んだとはいえない高校への進学、続けたかった野球を諦めたこと、北海道から横浜への転居、学校での人間関係。いくつもの出来事が重なり、シュン君は自分の人生を自分で選んでいるという感覚を失っていました。
ゲームは、その苦しさから一時的に離れるための避難場所だったのです。
相談当初のシュン君は、JADAのAutonomy Stage OSでStage3。単なる不登校ではなく、社会との接点が減り、引きこもりが始まっている段階でした。
ここで必要だったのは、本人を叱ってゲームを取り上げることでも、家で見守り続けることでもありません。
親へのコーチングと、子どもへの実動支援を同時に進めることでした。
シュン君が看護系大学へ進学するまでには、3つの大きな転機がありました。
1つ目は、親が本人への関わり方を変えたこと。
2つ目は、生活改善合宿と学生寮で、生活の土台を立て直したこと。
3つ目は、ホテルの住み込み勤務を通じて、働く厳しさと自分の将来に向き合ったことです。
通信制高校への転学、海釣りなどの社会体験、寮での共同生活、大学受験の失敗、ホテル勤務――。その一つひとつが、シュン君に「自分の人生は、自分で選ぶ」という力を取り戻させていきました。
この記事でお伝えしたいのは、ゲームをやめさせる方法ではありません。
子どもが再び自分で考え、自分で選び、自分の足で社会へ進んでいくために、親と支援者は何をすべきかということです。
私は40年以上にわたり、1万人を超える不登校・高校中退・引きこもりの子どもや若者を支援してきました。9割以上が、生活改善、学び直し、進学、就労、社会参加など、社会的自律に向けた一歩を踏み出しています。
その実践知は、光文社新書『不登校・ひきこもりの9割は治せる』『不登校・ひきこもり急増』にもまとめています。
それでは、シュン君がどのように自分の人生を取り戻していったのか、3つの転機をたどりながら詳しくお伝えします。
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シュン君は、北海道から横浜への転居を経験しました。
住む場所、学校、友人関係、生活習慣。すべてを一からつくり直さなければならない環境の変化は、子どもにとって大きな負担になります。
さらに、進学した高校についても、シュン君自身が十分に納得して選んだとは言い切れませんでした。
シュン君は、もともと野球を続けたいと考えていました。しかし、高校進学後は親の勧めもあり、バドミントン部に入りました。
ご両親は、シュン君の将来を考え、良いと思う選択肢を勧めたのだと思います。
しかし、親にとって良い選択と、子どもが心から納得できる選択が、必ずしも一致するとは限りません。
「本当は野球を続けたかった」
「この高校は、自分で決めたという実感がない」
「親や周囲の期待に応えなければならない」
シュン君の中では、こうした思いが少しずつ積み重なっていたと考えられます。
子どもが困難に直面したとき、踏ん張る力になるのは、「これは自分で選んだ道だ」という納得感です。
シュン君は、高校生活の出発点から、自分で人生を選んでいるという感覚を持ちにくい状態にありました。
シュン君が学校へ行けなくなったのは、高校1年生の6月末でした。
前日の夜には、
「明日は学校へ行く」
と話します。
しかし、翌朝になると起きられず、結局は登校できませんでした。
本人にも、「学校へ行かなければならない」という気持ちはありました。それでも、朝になると心と身体が動かなかったのです。
この状態を「怠けている」「約束を守らない」と捉えて叱っても、状況は改善しません。
本人も、「行くと言ったのに行けなかった」という現実に傷つき、自信を失っているからです。
登校できない日が続くにつれて、シュン君の生活は次第に崩れていきました。
・明け方までオンラインゲームをする
・昼夜逆転が続く
・1日に12〜13時間ほど眠る
・食事は1日1回
・入浴は週1回程度
・外出は週1回程度
・家族との会話が減る
・自室で過ごす時間が長くなる
夜中になると、シュン君の部屋からゲームやキーボードの音が聞こえてきました。
必要なものを買うために週1回ほど外出することはありましたが、帰宅すると再び部屋のドアを閉め、その後はオンラインの世界で過ごしました。
かつては活発で、友人との交流も多かったシュン君です。
ご両親は、その変わりように戸惑いました。
「なぜ学校へ行けなくなったのか」
「ゲームを取り上げた方がよいのか」
「このまま見守っていてよいのか」
「どうすれば、以前のような息子に戻るのか」
ご家族は、何が正しい対応なのか分からないまま、悩み続けていました。
シュン君の生活だけを見ると、「ゲーム依存が不登校の原因だ」と思われるかもしれません。
しかし、ゲームは原因ではありません。
ゲームは結果です。
自分で十分に納得して選んだとはいえない高校生活、続けたかった野球を諦めたこと、北海道から横浜への転居、学校での人間関係、周囲の期待に応えられない苦しさ。
こうした問題が重なり、シュン君は現実の世界で自信を失っていました。
ゲームは、その苦しさから一時的に離れられる避難場所だったのです。
ゲームの中では、失敗しても何度でもやり直せます。
努力の結果が数字で表れ、役割が与えられ、オンライン上の仲間ともつながれます。
一方、現実の世界では、学校へ行けない自分を責め、将来への不安を抱え、自分が何をしたいのかも分からなくなっていました。
この状態でゲームだけを取り上げても、学校での苦しさや自信の喪失は解決しません。
必要なのは、ゲームを取り上げることではなく、ゲームよりも意味を感じられる現実の体験をつくることです。
そして、親や周囲に決められた人生ではなく、シュン君自身がもう一度、自分の人生を選び直せる環境をつくることでした。
ご両親は、杉浦孝宣の著書『不登校ひきこもりの9割は治せる』を読み、相談に来られました。
相談当初のシュン君は、JADAのAutonomy Stage OSでStage3に相当する状態でした。
Stage3は、単に学校を休んでいるだけの段階ではありません。
昼夜逆転が進み、食事や入浴が乱れ、外出や家族との会話が減少するなど、生活の土台と社会との接点が崩れ始めている「引きこもり域」です。
シュン君には、次の状態が見られました。
・高校1年生の6月末から欠席が続いている
・「明日は行く」と言っても、朝になると動けない
・昼夜が逆転している
・明け方までオンラインゲームを続けている
・1日に12〜13時間ほど眠っている
・食事は1日1回
・入浴は週1回程度
・外出は週1回程度
・家族との会話が減っている
・自室で過ごす時間が長くなっている
・学校や進路の話を避けるようになっている
一つだけでStage3と判断するわけではありません。
生活、家族との関係、外出、学び、社会との接点がどの程度失われているかを、全体として見ていきます。
Stage1〜2は、不登校域です。
学校との接点や外出、家族との会話が保たれている場合には、家庭と学校が連携しながら、一定期間見守るという選択も考えられます。
しかし、Stage3以上は引きこもり域です。
昼夜逆転や生活の乱れが固定化し、外出や他者との接点も減っているため、本人の意思だけで元の生活へ戻ることが難しくなります。
この段階で「本人が動き出すまで待ちましょう」と見守り続けると、ゲーム中心の生活と社会的孤立がさらに深まる可能性があります。
シュン君の場合も、
「学校へ行きたい気持ちはある」
「勉強しなければならないことも分かっている」
という状態でした。
それでも、実際には動けませんでした。
本人が動きたいと思っていることと、自分の力だけで動けることは別です。
Stage3では、親が声をかけ続けるだけでも、本人が自発的に動くのを待つだけでも足りません。
親へのコーチングと、本人に直接働きかける実動支援が必要になります。
不登校や引きこもりの深刻度は、欠席日数だけでは判断できません。
学校を長期間休んでいても、朝起きて、食事や入浴ができ、家族と会話し、定期的に外出できている子どももいます。
反対に、欠席期間がそれほど長くなくても、急速に昼夜逆転が進み、部屋へこもり、食事や入浴、会話が失われている場合は、早い段階で実動支援が必要です。
大切なのは、
「何日休んでいるか」
だけではなく、
「どのような生活をしているか」
「家族以外の人とつながっているか」
「外の世界との接点が残っているか」
を確認することです。
シュン君は、欠席が始まってから約4か月の間に、生活と社会との接点が大きく崩れていました。
そのため、元の高校への登校だけを目標にするのではなく、生活改善、本人との接点づくり、学び直しまでを含めた支援が必要だと判断しました。
JADAの5段階の判定基準と、各Stageで取るべき対応については、次の記事で詳しく解説しています。
Autonomy Stage OS|不登校・引きこもり5ステージ判定
お子さんの現在地を正しく知ることが、必要な支援を始める第一歩です。
シュン君は、ある日突然、別人のように変わったわけではありません。
親へのコーチング、家庭訪問、通信制高校への転学、生活改善合宿、学生寮、社会体験、大学受験の失敗、ホテルでの住み込み勤務。
いくつもの経験を重ねながら、少しずつ自分の人生を選ぶ力を取り戻していきました。
その過程には、3つの大きな転機がありました。
JADAの支援では、いきなり本人の部屋を訪問するわけではありません。
最初に行うのは、ご両親との面談と親へのコーチングです。
生活状況、学校で起きたこと、親子関係、これまでの声かけ、ご両親の考え方などを整理し、本人の現在地を見極めます。
不登校や引きこもりが続くと、家庭では次のような言葉が増えていきます。
「明日は学校へ行くの?」
「いつまでゲームを続けるの?」
「将来はどうするつもりなの?」
「せめて昼間は起きなさい」
「お父さんもお母さんも心配している」
どれも、子どもの将来を心配しているからこそ出る言葉です。
しかし、本人がまだ動けない段階で繰り返すと、
「また学校の話をされる」
「期待に応えられない」
「何を言っても分かってもらえない」
と感じ、さらに会話を避けるようになります。
一方で、本人を刺激しないようにと、食事だけを部屋の前へ置き、何も言わずに待ち続けるだけでも状況は変わりません。
必要なのは、責めることでも放置することでもなく、本人のStageに合った関わり方へ変えることです。
親へのコーチングでは、次の点を具体的に整理しました。
・今、本人に何を伝えるべきか
・繰り返し言わない方がよいことは何か
・学校や進路の話を、いつ、誰から伝えるか
・父親と母親がどのように役割分担するか
・家庭内の生活ルールをどう整えるか
・第三者による支援をどう本人につなげるか
親の関わり方を整えることは、親だけに責任を負わせることではありません。
子どもへの実動支援を始めるために、家庭内の土台を整えることです。
親の関わり方だけを変えても、本人の生活や社会との接点が動かなければ、根本的な変化にはつながりません。
反対に、本人だけを外へ連れ出しても、家庭環境や親子関係が変わらなければ、元の状態へ戻ることがあります。
JADAが「親へのコーチング × 子どもへの実動支援」を両輪としている理由は、次の記事で詳しく解説しています。
JADA Support Philosophy|親へのコーチングと子どもへの実動支援
ご両親との面談を経て、10月のある日、支援スタッフがシュン君の自宅を訪問しました。
訪問の直前、お母様からシュン君に、スタッフが来ることが伝えられました。
シュン君は、訪問を望んでいなかったようです。一度は家を出ようとしましたが、急にお腹が痛くなり、自宅に残っていました。
スタッフが部屋へ入ると、シュン君はベッドに横になっていました。
訪問の約1時間前まで眠っていたため、まだ目が覚めたばかりの様子でした。
スタッフは、すぐに学校や進路の話を始めませんでした。
部屋の近くに椅子を置き、まずは同じ空間にいることから始めました。
最初、シュン君は無言でした。
この沈黙に耐えられず、大人が次々に質問すると、本人はさらに心を閉ざします。
家庭訪問の目的は、本人を説得して、すぐに学校へ戻すことではありません。
最初の目的は、
「この人なら、少し話してもよいかもしれない」
と感じてもらうことです。
時間がたつと、シュン君は少しずつ、自分の日常について話し始めました。
シュン君は、iPadでゲームを始めると、そのまま朝から夜まで続けてしまうと話しました。
学校の友人とゲームをする時間が重ならないよう、あえて異なる時間帯に遊んでいることも分かりました。
この生活を、すでに約4か月続けていました。
日常の大半をゲームに使い、睡眠時間は1日12〜13時間ほど。
しかし、話を聞いていくと、変化の兆しも見えてきました。
シュン君は、こう口にしました。
「ゲームにも飽きてきた」
「そろそろやることもなくなってきたから、勉強でもしないといけないかな」
一方で、元の高校へ戻ることは考えていないとも話しました。
この言葉は、重要なサインでした。
シュン君は、何も考えていなかったわけではありません。
今の生活をいつまでも続けられないことも、高校卒業の資格が将来必要になることも、本人なりに分かっていたのです。
しかし、分かっていることと、実際に動けることは違います。
本人の中に生まれた「少し動きたい」という気持ちを、現実の行動へつなげる支援が必要でした。
訪問では、シュン君が長時間遊んでいたゲームの話を、会話の入口にしました。
好きなキャラクター、遊び方、ゲーム内で起きた出来事など、本人が話しやすい内容から聞いていきました。
ゲームの話をすることは、ゲーム中心の生活を肯定することではありません。
本人がどのような世界で過ごし、何に安心を感じているのかを理解するためです。
そのうえで、次のことを意識して関係をつくりました。
・安心して話せる雰囲気をつくる
・学校復帰を最初から迫らない
・進路の答えを急がせない
・本人の話を途中で否定しない
・小さな外出や活動を提案する
・行動できたことを具体的に認める
「元の高校へ戻るか、戻らないか」という二択にすると、本人は動けなくなります。
短時間外へ出る。
家族以外の人と話す。
通信制高校の情報を知る。
行事へ参加する。
小さな行動に分け、一つずつ現実との接点を取り戻していきました。
一度の訪問で、すべてが変わったわけではありません。
スタッフは、その後も5〜6回の訪問を重ねました。
話せる日もあれば、反応が乏しい日もあります。
前向きなことを言った翌日に、再びゲーム中心の生活へ戻ることもありました。
それでも関係を切らず、本人の気持ちと現実の間をつなぎ続けました。
やがてシュン君は、元の高校へ復学するのではなく、通信制高校へ転学し、高校卒業を目指す道を選びました。
親や支援者が一方的に決めた進路ではありません。
選択肢を伝え、本人が実際に動けるところまで支援したうえで、最後はシュン君自身が決めました。
これが、「自分で人生を選ぶ力」を取り戻す最初の転機でした。
通信制高校へ転学したことで、シュン君は高校卒業へ向けて再出発しました。
しかし、学校を変えただけで昼夜逆転が治ったわけではありません。
生活改善合宿へ参加すると、一定期間は朝起き、夜に眠る生活ができました。
ところが、自宅へ戻ると、再び夜遅くまでiPadを使い、朝起きられない生活に戻ってしまいました。
お母様からは、
「合宿では良くなりましたが、家に帰ると元に戻ってしまいます。どうしたらよいでしょうか」
という相談がありました。
これは、本人の意思が弱いからではありません。
自宅には、以前と同じ部屋、同じゲーム環境、同じ家族関係があります。
一度身についた生活習慣は、同じ環境へ戻ることで再び現れます。
合宿中だけ生活を整えるのではなく、整った生活を日常の中へ定着させる必要がありました。
通信制高校では、教室で勉強するだけでなく、海釣りや球技大会など、他の生徒と一緒に参加する活動も行いました。
12月、私たちは10人ほどの生徒と海釣りへ出かけました。
その中に、シュン君もいました。
かつては週1回程度しか外出せず、自室でゲームを続けていたシュン君が、海釣りへ参加したのです。
船へ乗る前、杉浦はシュン君に尋ねました。
「酔い止めの薬は飲んだか?」
シュン君は、飲んでいないと答えました。
「画面ばかり見ていると船酔いするから、iPadはしまった方がいい」
そう伝えましたが、シュン君は、しばらく画面を見続けていました。
船が釣り場へ到着すると、生徒たちは次々に魚を釣り上げました。
船上に歓声が響くと、シュン君もiPadから顔を上げ、仲間と一緒に釣り始めました。
ゲームの画面ではなく、目の前で起きている現実へ関心を向けた瞬間でした。
しかし、その後、シュン君の顔色が急に悪くなりました。
「先生、吐きそう」
シュン君は、杉浦のところへ来て訴えました。
「吐くなら、船の外に顔を出して吐けばいい」
そう伝えても、
「吐けない。苦しい」
と言います。
そこで杉浦が、食べ物を想像させる話をすると、シュン君は「気持ち悪い」と反応し、ようやく船の外へ吐くことができました。
楽しい経験だけが、子どもを成長させるわけではありません。
苦しくなったときに自分から助けを求め、周囲の大人に支えられながら乗り越えることも、社会を生きるための大切な経験です。
海釣りや球技大会などへ参加する中で、シュン君は少しずつiPadから離れ、同年代の生徒と関われるようになっていきました。
JADAが「社会は最高の教室」と考えるのは、教室の中だけでは学べないことが、現実の体験には数多くあるからです。
短期的な合宿だけでは生活改善が定着しなかったため、シュン君に学生寮での生活を提案しました。
学生寮は、単に寝泊まりする場所ではありません。
・決まった時間に起きる
・決まった時間に食事を取る
・入浴や洗濯を自分で行う
・学校へ通う
・共同生活のルールを守る
・他の生徒と協力する
・自分の身の回りのことを自分でする
こうした日常を毎日繰り返し、自分で生活する力を身につける場所です。
家庭では、親が起こし、食事を準備し、身の回りのことまで手伝ってしまうことがあります。
それは愛情からの行動です。
しかし、子どもが自分で生活する力を取り戻す段階では、親元から適切に距離を取ることが必要な場合もあります。
親がいないからこそ、自分で起きなければなりません。
自分で行動しなければ、自分が困ります。
その一方で、困ったときにはスタッフや寮の仲間へ助けを求められます。
「すべてを親にやってもらう家庭」と「すべてを一人で背負う一人暮らし」の間にあるのが、支援付きの学生寮です。
寮生活を始めたことで、シュン君の生活は次第に整っていきました。
朝起きる。
食事を取る。
入浴する。
学校へ通う。
仲間と話す。
生活の中に、ゲーム以外の時間と役割が戻ってきました。
ゲームを無理に取り上げたのではありません。
ゲーム以外の現実に、仲間、役割、活動、達成感が生まれたことで、ゲームに費やす時間が少しずつ減っていったのです。
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生活が整い、通信制高校へ通えるようになると、シュン君は大学進学を希望するようになりました。
三者面談でも、
「大学へ進学する」
とはっきり意思を示しました。
不登校になった当初と比べれば、大きな変化です。
しかし、教室でのシュン君は、参考書を開いていても、居眠りをしていることが少なくありませんでした。
杉浦が、
「お前、勉強するふりをしているだけじゃないか」
と率直に伝えると、シュン君は、
「やっていますよ。居眠りは、たまたまです」
と反論しました。
大学へ行きたいという気持ちはあっても、合格するために必要な行動が伴っていませんでした。
さらにシュン君は、上智大学や早慶などの難関大学を受験すると宣言しました。
スタッフは、当時の学力や勉強量を踏まえて助言しましたが、本人の意思は変わりませんでした。
最終的には本人の選択を尊重し、受験しました。
結果は、すべて不合格でした。
しかし、この失敗にも意味がありました。
周囲から「今のままでは難しい」と言われるだけでは、本人は納得できません。
自分で選び、自分で受験し、自分で結果を受け止める。
自律するためには、自分で失敗し、そこから選び直す経験も必要です。
通信制高校で2年半学び、卒業を迎える頃、シュン君は、
「働きたくないから、予備校へ行きたい」
と話しました。
この言葉を聞いた杉浦は、厳しく伝えました。
「働きたくないから予備校へ行くというのは違う」
「本当に大学へ行きたいなら、自分で予備校の費用を稼いでみなさい」
そして、自衛隊への入隊や、住み込みで働く道を示しました。
これは、大学進学を諦めさせるためではありません。
本当に大学へ行きたいのか。
それとも、働くことから逃げるために進学という言葉を使っているのか。
本人自身に確かめてもらうためです。
大学へ行くことも、働くことも、最後は本人が選ばなければなりません。
親が費用を出し、予備校へ通う環境をすべて準備すれば、再び「親に用意された人生」へ戻ってしまう可能性がありました。
ここでも、親へのコーチングが重要でした。
本人が「予備校へ行きたい」と言えば、保護者としては、もう一度受験の機会を与えたいと思うでしょう。
しかし、必要な費用も環境も親がすべて準備してしまえば、本人が自分の選択に責任を持つ機会を失います。
ご両親、本人、スタッフで話し合い、最終的にシュン君は、住み込みでホテルに勤務する道を選びました。
支援者が無理やり働かせたのではありません。
選択肢と現実を伝えたうえで、シュン君自身が決めたのです。
親も先回りして問題を解決するのではなく、本人が選んだ道を支える立場へ変わりました。
ホテルの仕事では、学校や家庭とは異なる責任が求められます。
朝起きられないから休む。
面倒だから後回しにする。
自分の気分を優先する。
それでは仕事は続きません。
ホテルにはお客様がいて、同僚がいて、自分に任された仕事があります。
時間を守り、指示を聞き、周囲と協力しなければなりません。
働くことで、シュン君は生活費や学費を得ることの大変さを知りました。
同時に、
「自分はこのままホテルで働きたいのか」
「本当は何を学びたいのか」
「大学へ行くなら、何のために行くのか」
と、自分の将来を真剣に考えるようになりました。
親や先生から進路について言われても動けなかった本人が、社会の中で働くことによって、自分から将来を考え始めたのです。
ホテル勤務を経験した後、シュン君は予備校に通い、3か月間、集中的に受験勉強へ取り組みました。
以前のように、参考書を開いたまま居眠りをする姿ではありませんでした。
働く現実を経験し、それでも大学へ行きたいと、自分で決めたからです。
通信制高校在籍時の偏差値は30程度でした。
しかし、偏差値だけで子どもの未来を決めることはできません。
目的を持ち、自分で選び、その選択に責任を持って行動すれば、人は変わります。
その後、シュン君から報告が届きました。
看護系大学に合格したという知らせでした。
この合格は、単に学力が上がった結果ではありません。
家庭訪問、通信制高校、生活改善合宿、学生寮、社会体験、大学受験の失敗、ホテルでの住み込み勤務。
一つひとつの経験を通じて、シュン君が「自分の人生を自分で選ぶ力」を取り戻した結果です。
シュン君が看護系大学へ進学できたのは、一つの支援だけで問題が解決したからではありません。
親へのコーチング、家庭訪問、生活改善、通信制高校、社会体験、学生寮、ホテル勤務。
本人の状態と変化に合わせて、必要な支援を段階的につないでいきました。
JADAが目指しているのは、元の学校へ戻すことだけではありません。
子どもが生活を整え、自分に自信を持ち、自分で進路を選び、社会の中で役割を果たせるようになることです。
そのため、支援の最終目標を「学校復帰」ではなく「社会的自律」に置いています。
最初に行ったのは、ご両親との面談とStage判定でした。
シュン君は、昼夜逆転、ゲーム中心の生活、食事と入浴の乱れ、外出と家族との会話の減少が見られたため、Stage3と判断しました。
この段階では、親が学校へ行くよう説得したり、本人が自分から動くまで見守ったりするだけでは足りません。
そこで、ご両親に対して、
・本人を責める声かけを減らす
・学校や進路の話を繰り返さない
・父親と母親の対応をそろえる
・生活上の課題と進路の問題を分ける
・第三者による支援を受け入れる準備をする
・本人の代わりにすべてを決めない
といった具体的なコーチングを行いました。
親へのコーチングは、親だけを変えるためのものではありません。
本人への実動支援が機能する家庭環境をつくるために行います。
Stage3以上では、本人が相談機関へ自分から来ることを待っているだけでは、支援につながらない場合があります。
そのため、支援スタッフが自宅を訪問し、本人との接点をつくりました。
最初から学校復帰や進路を迫るのではなく、ゲームなど本人が話せる話題から会話を始めました。
家庭訪問の目的は、本人をすぐ外へ連れ出すことではありません。
家族以外の信頼できる大人とつながり、
「この人となら話せる」
「今の自分でも否定されない」
「別の選択肢があるかもしれない」
と感じてもらうことです。
5〜6回の訪問を重ねたことで、シュン君は通信制高校という新しい選択肢を受け入れ、自分で再出発する道を選びました。
次に取り組んだのは、生活改善です。
昼夜逆転した状態のままでは、本人に学ぶ意思があっても、通学や社会参加を継続できません。
生活改善合宿では、
・朝、決まった時間に起きる
・1日3回の食事を取る
・入浴する
・身体を動かす
・日中に活動する
・夜に眠る
・他の生徒と一緒に生活する
という基本的な生活を取り戻していきました。
規則正しい生活は、JADAの支援における一丁目一番地です。
ただし、生活改善はゴールではありません。
学び直し、社会参加、就労へ進むための土台です。
シュン君は、元の高校への復学ではなく、通信制高校への転学を選びました。
大切なのは、元の学校へ戻ることだけを「成功」と考えないことです。
本人が現在の学校環境で動けなくなっているのであれば、別の学校、通信制高校、高卒認定など、学びを継続する方法を一緒に探します。
シュン君の場合、通信制高校への転学によって、
・高校卒業資格を目指す
・教室へ通う
・同年代の仲間と関わる
・学校行事へ参加する
・もう一度、将来を考える
という機会を得ることができました。
不登校の解決とは、元の学校へ戻ることだけではありません。
学びを止めず、自分に合った環境で再出発することも、重要な解決の一つです。
通信制高校では、教科の学習だけでなく、海釣りや球技大会などの社会体験も取り入れました。
シュン君に必要だったのは、机に向かうことだけではありません。
・自宅から外へ出る
・他の生徒と行動する
・初めての体験へ参加する
・困ったときに助けを求める
・一緒に笑う
・失敗や不快な経験も乗り越える
こうした経験が、現実の世界への関心と自信を取り戻すきっかけになりました。
ゲームを取り上げたから、現実へ戻ったのではありません。
現実の世界に仲間、役割、楽しさ、達成感が生まれたことで、ゲームだけに頼る必要がなくなっていったのです。

生活改善合宿では一定の効果が見られましたが、自宅へ戻ると昼夜逆転が再び起こりました。
そこで、短期間の合宿から、学生寮での日常的な共同生活へ支援を進めました。
学生寮では、
・自分で朝起きる
・食事の時間を守る
・学校へ通う
・洗濯や身の回りのことを自分でする
・共同生活のルールを守る
・仲間やスタッフと協力する
という生活を繰り返します。
合宿で一時的に生活を整えるだけでなく、それを日常として定着させることが目的です。
親元から適切に距離を取ることで、シュン君は「誰かにやってもらう生活」から「自分で生活をつくる段階」へ進みました。
親へのコーチングだけでは、本人の昼夜逆転や社会との接点までは変えられません。
反対に、本人を寮へ移しても、ご両親が以前と同じように先回りしてしまえば、自律にはつながりません。
家庭と本人の両方へ働きかけることが必要です。
JADAが「親へのコーチング × 子どもへの実動支援」を支援の両輪としている理由は、次の記事で詳しく解説しています。
JADA Support Philosophy|親へのコーチングと子どもへの実動支援
通信制高校卒業後、シュン君は、住み込みでホテルに勤務しました。
ここでは、学校や家庭とは異なる責任が求められました。
・決められた時間に出勤する
・挨拶や報告をする
・指示を理解して行動する
・周囲と協力する
・任された仕事をやり遂げる
・働いた対価として給料を受け取る
実際に社会へ出たことで、シュン君は働くことの厳しさと、自分で生活を支えることの意味を知りました。
同時に、自分の将来についても現実的に考えるようになりました。
「このままホテルで働くのか」
「大学へ行って何を学びたいのか」
「大学へ行くなら、そのために何をしなければならないのか」
ホテル勤務は、進学を諦めさせるためのものではありません。
自分の人生を誰かに決めてもらうのではなく、社会を経験したうえで、自分が進む道を選び直すための実動支援でした。
社会は、最高の教室です。
シュン君の支援経過は、JADA Autonomy OSの7つの自律支援ステップに沿って整理できます。
ご両親との面談を行い、Stage3と判定。家庭内の関わり方と支援方針を整えました。
5〜6回の家庭訪問を行い、ゲームなど本人が話せる内容から信頼関係を築きました。
生活改善合宿を通じて、睡眠、食事、入浴、日中活動の立て直しに取り組みました。
通信制高校へ転学し、高校卒業資格の取得と学び直しを進めました。
海釣り、球技大会、共同活動を通じて、家族以外の人とのつながりを取り戻しました。
学生寮で生活改善を定着させ、卒業後はホテルでの住み込み勤務を経験しました。
働く経験を踏まえて、自分で看護系大学への進学を選び、受験勉強に取り組みました。
この7つのステップは、全員が同じ期間、同じ方法で進むという意味ではありません。
子どものStage、年齢、生活状況、本人の希望に応じて、必要な支援を組み合わせます。
重要なのは、学校へ戻れた時点で支援を終わらせないことです。
生活を整え、学び直し、社会とつながり、自分で進路を選び、その選択に責任を持って行動できるところまで支援をつなぎます。
JADA Autonomy OSの全体像については、次の記事で詳しく解説しています。
JADA Autonomy OS|社会的自律へ進む7つのステップ
ホテルでの住み込み勤務を経験した後、シュン君は予備校へ通い、3か月間、集中的に受験勉強へ取り組みました。
以前のシュン君は、大学へ行きたいと口にしながら、教室では参考書を開いたまま居眠りをしていました。
しかし、ホテル勤務を経験した後は違いました。
働くことの厳しさを知り、自分で生活を支える大変さを実感したうえで、
「それでも大学へ行きたい」
と、自分で決めたからです。
通信制高校在籍時の偏差値は30程度でした。
最初に挑戦した大学受験では、希望した大学にすべて不合格となりました。
それでも、そこで終わりではありませんでした。
自分で選んで失敗し、その結果を受け止め、働くことを経験したうえで、もう一度、自分の進路を選び直したのです。
その後、シュン君から看護系大学に合格したという報告が届きました。
この事例で最も重要なのは、看護系大学に合格したという結果だけではありません。
かつてのシュン君は、
・高校へ行けない
・昼夜が逆転している
・明け方までゲームを続ける
・食事は1日1回
・入浴は週1回
・外出も週1回程度
・家族との会話が少ない
・自分の将来を決められない
というStage3の状態にありました。
そのシュン君が、
・家族以外の支援者と話す
・通信制高校への転学を選ぶ
・生活改善合宿へ参加する
・海釣りや学校行事へ参加する
・学生寮で共同生活をする
・大学受験の失敗を受け止める
・ホテルで住み込み勤務をする
・自分で将来を考える
・もう一度、受験勉強へ取り組む
・看護系大学への進学を決める
という段階を、自分の足で進みました。
一番の変化は、親や周囲に人生を決めてもらう状態から、自分で考え、自分で選び、その選択に責任を持って行動する状態へ変わったことです。
シュン君は、ゲームを無理に取り上げられたことで回復したのではありません。
家庭訪問で信頼できる大人とつながり、通信制高校で学び直し、海釣りや学校行事で仲間と過ごし、学生寮で自分の生活をつくり、ホテル勤務で社会の現実を経験しました。
現実の世界に、
・安心して話せる人
・一緒に行動する仲間
・自分が果たす役割
・努力して達成できる目標
・自分で選べる進路
が生まれたことで、ゲームだけを居場所にする必要がなくなったのです。
ゲームは原因ではありませんでした。
ゲーム中心の生活は、自分で人生を選べない苦しさから生じた結果でした。
そして、その生活が変わったのも、ゲームを取り上げた結果ではありません。
自分で人生を選ぶ力を取り戻した結果です。
JADAが目指しているのは、元の学校へ戻すことだけではありません。
生活を整え、学びを取り戻し、社会とつながり、自分で進路を選び、社会の中で役割を果たせるようになることです。
シュン君にとって、通信制高校への転学はゴールではありませんでした。
看護系大学への合格も、人生の最終ゴールではありません。
自分の意思で学ぶ道を選び、その選択に向かって行動できるようになったこと。
これが、JADAが目指す「社会的自律」です。
シュン君の回復過程は、親へのコーチングから始まり、家庭訪問、生活改善、学び直し、社会との接点、ホテル勤務を経て、社会的自律へ進むプロセスでした。
この支援の全体像は、次の記事で詳しく解説しています。
JADA Autonomy OS|社会的自律へ進む7つのステップ
シュン君の事例は、看護系大学への合格だけを伝える特別な成功談ではありません。
不登校や引きこもり状態にある子どもが、どのような順序で生活を立て直し、社会との接点を取り戻し、自分で人生を選べるようになるのかを示す実践事例です。
ここから、保護者の皆さまに知っていただきたい7つのことがあります。
シュン君は、前日の夜には、
「明日は学校へ行く」
と話していました。
しかし、翌朝になると起きられず、登校できませんでした。
本人は最初から家族をだますつもりで言っていたわけではありません。
夜には本当に「明日は行かなければならない」と思っていても、朝になると不安や緊張が強くなり、心と身体が動かなくなることがあります。
この状態で、
「行くと言ったじゃないか」
「また約束を破った」
と責めると、本人は登校できなかったことに加えて、親の期待にも応えられなかったと感じます。
必要なのは、約束を守らせることよりも、なぜ実行できないのかを見極めることです。
昼夜逆転し、明け方までゲームを続ける姿を見ると、保護者はゲームをやめさせたくなります。
しかし、シュン君の場合、ゲームが不登校の根本原因ではありませんでした。
・北海道から横浜への転居
・十分に納得できない高校選び
・続けたかった野球を諦めたこと
・学校内の人間関係
・好きなものを隠して過ごす苦しさ
・親や周囲の期待に応えられない焦り
・自分で人生を選んでいる感覚の喪失
こうした問題が重なり、現実の世界で居場所を失った結果、ゲームが避難場所になっていました。
ゲームだけを取り上げても、本人が抱えている苦しさは残ります。
必要なのは、ゲームを禁止することではありません。
現実の世界に、信頼できる人、仲間、役割、目標、達成感をつくることです。
シュン君は、相談当初、Autonomy Stage OSのStage3でした。
昼夜逆転、食事と入浴の乱れ、外出の減少、家族との会話の減少が重なり、すでに引きこもり域へ入っていました。
Stage1〜2では、学校や家庭との接点を保ちながら、短期間見守るという対応も考えられます。
しかし、Stage3以上では、本人が動き出すのを待つだけでは、生活の乱れと社会的孤立が固定化する可能性があります。
「勉強しなければならない」
「このままではいけない」
と本人が分かっていても、分かっているだけでは動けません。
本人が動けるところまで、第三者が接点をつくり、具体的に支援する必要があります。
親が関わり方を変えることは重要です。
しかし、親の声かけを変えただけで、本人の昼夜逆転や社会との接点が自然に回復するとは限りません。
一方で、本人だけを家庭訪問や寮生活へつないでも、親が以前と同じように先回りして進路を決めたり、身の回りのことをすべて行ったりすれば、自律にはつながりません。
シュン君の支援では、
親へのコーチング
×
子どもへの実動支援
を同時に進めました。
ご両親は、本人を問い詰めることや、進路を先回りして決めることを減らしました。
支援者は、家庭訪問、通信制高校、生活改善合宿、学生寮、社会体験、ホテル勤務へと、本人を現実の行動につなげました。
家庭と本人の両方に働きかけたことが、変化を継続させる土台になりました。
シュン君には、大学へ行きたいという気持ちがありました。
しかし、昼夜逆転したままでは、勉強を続けることも、学校や仕事へ通うこともできません。
生活改善合宿では一時的に朝起きられるようになりましたが、自宅へ戻ると元の生活へ戻りました。
そこで学生寮へ移り、規則正しい生活を日常として繰り返しました。
朝起きる。
食事を取る。
入浴する。
学校へ通う。
人と話す。
自分の身の回りのことを自分でする。
こうした基本的な生活が整って、初めて学び直しや社会参加を継続できるようになります。
規則正しい生活は、自律への一丁目一番地です。
シュン君は、上智大学や早慶などの難関大学を希望しました。
スタッフは、当時の学力や勉強量を踏まえて助言しましたが、本人の意思は変わりませんでした。
最終的に本人が選んで受験し、結果はすべて不合格でした。
しかし、この失敗には意味がありました。
周囲から、
「今のままでは難しい」
と言われるだけでは、本人は納得できません。
自分で選び、自分で挑戦し、自分で結果を受け止めることで、初めて希望と現実の差を理解できることがあります。
子どもが自律するためには、成功体験だけでなく、失敗し、考え、選び直す経験も必要です。
親が失敗を恐れて先回りすると、子どもは自分で判断する機会を失います。
支援とは、失敗をすべて防ぐことではありません。
失敗した後に、次の選択へ進めるよう支えることです。
シュン君が大きく変わったのは、ホテルでの住み込み勤務を経験してからでした。
それまでは、
「働きたくないから、予備校へ行きたい」
と話していました。
しかし、実際に働くことで、時間を守ること、周囲と協力すること、任された仕事をやり遂げること、お金を稼ぐことの大変さを知りました。
その経験を通じて、
「自分はどのように生きたいのか」
「大学へ行って何を学びたいのか」
を、初めて自分の問題として考えるようになりました。
親や先生から何度言われても動かなかった本人が、社会に出ることで自分から動き始めたのです。
社会体験は、進学を諦めさせるためのものではありません。
自分が本当に進みたい道を見つけ、その選択に責任を持つための教育です。
シュン君は、特別に意志が強い子どもだったから回復できたわけではありません。
相談当初は、昼夜逆転し、ゲーム中心の生活を送り、食事は1日1回、入浴も外出も週1回程度でした。
その状態から、
親へのコーチング
↓
家庭訪問
↓
生活改善
↓
通信制高校での学び直し
↓
学生寮での共同生活
↓
ホテル勤務による社会参加
↓
看護系大学への進学
という段階を進みました。
適切な順序で、本人のStageに合った支援を行えば、子どもは変わる可能性があります。
JADAでは、シュン君以外にも、不登校や引きこもりから生活を立て直し、進学、就労、社会参加へ進んだ17の成功事例を公開しています。
CASE007だけを特別な例として見るのではなく、JADAが40年以上の実践から体系化した、再現可能な支援モデルのEvidenceとしてご覧ください。
文章だけでは伝わりにくいシュン君の変化を、動画でもご覧いただけます。
相談当初のシュン君は、昼夜逆転し、iPadとゲームを中心に生活していました。
そこから家庭訪問、通信制高校への転学、生活改善合宿、学生寮、社会体験、ホテルでの住み込み勤務を経験し、自分の意思で受験勉強へ取り組みました。
看護系大学への合格は、単なる進学実績ではありません。
シュン君が、自分の人生を自分で選べるようになるまでの回復の証しです。
高校1年生から引きこもり状態になったシュン君が、どのような支援を経て看護系大学へ進学したのかを紹介しています。
引きこもり高校生が医療・看護系大学へ合格した経緯を動画で見る
シュン君の変化を象徴する出来事の一つが、通信制高校で参加した海釣りです。
当時のシュン君は、スタッフとほとんど話さず、外出先でもiPadの画面を見続けていました。
しかし、仲間が魚を釣り上げて歓声を上げると、シュン君もiPadから顔を上げ、現実の体験へ加わりました。
この海釣りだけで、引きこもりが解決したわけではありません。
それでも、自室とオンラインの世界を中心に生活していたシュン君が、家の外へ出て、仲間と同じ体験を共有したことは、社会との接点を取り戻す大切な一歩でした。
不登校で話さず、iPad中心だったシュン君の海釣り体験を見る
動画からも分かるように、子どもの変化は、説得や登校刺激だけで起こるものではありません。
安心して関われる大人、同年代の仲間、家庭の外での体験、失敗してもやり直せる環境。
こうした現実の接点を積み重ねることで、子どもは少しずつ自分の世界を広げていきます。
ゲームをやめさせるだけでは、不登校の根本的な解決にはなりません。
シュン君の場合、ゲームは不登校の原因ではなく、現実の苦しさから離れるための避難場所になっていました。
高校選びへの納得感の不足、続けたかった野球を諦めたこと、転居による環境の変化、学校での人間関係などが重なり、現実の世界で自信と居場所を失っていたのです。
ゲームを取り上げる前に、本人がなぜゲームの世界だけに居場所を求めているのかを確認する必要があります。
現実の世界に、信頼できる人、仲間、役割、目標、達成感が生まれると、ゲームとの関係も変わっていきます。
短期間の乱れで、外出、食事、入浴、家族との会話が保たれている場合は、一定期間様子を見ることも考えられます。
しかし、昼夜逆転に加えて、
・食事が1日1回
・入浴が週1回程度
・外出が週1回程度
・家族との会話が減っている
・自室で過ごす時間が大幅に増えている
という状態が重なっている場合は、見守るだけでは不十分です。
シュン君は、すでにStage3の引きこもり域に入っていました。
生活の乱れが長く続くほど、学び直しや社会参加へ進むことが難しくなるため、早い段階で親へのコーチングと実動支援を始める必要があります。
JADAでは、Stage1〜2を不登校域、Stage3以上を引きこもり域と考えています。
Stage3では、学校を休んでいるだけでなく、昼夜逆転、食事や入浴の乱れ、外出の減少、家族との会話の減少など、生活と社会との接点が崩れ始めています。
この段階では、本人が相談へ来るのを待つだけでなく、家庭訪問、同行支援、生活改善、学び直しなどの実動支援が必要です。
5段階の判定基準と、各Stageで取るべき対応は、次の記事で詳しく解説しています。
Autonomy Stage OS|不登校・引きこもり5ステージ判定
夜には本当に「明日は行こう」と思っていても、朝になると不安や緊張が強まり、心と身体が動かなくなることがあります。
本人が嘘をついているとは限りません。
「行くと言ったじゃないか」と責めると、本人は登校できなかったことに加えて、親との約束も守れなかったと感じ、さらに自信を失います。
登校の約束を繰り返させるよりも、睡眠、食事、不安、人間関係、学校環境など、動けなくなっている背景を整理することが先です。
本人が理由を話さないからといって、理由がないわけではありません。
複数の問題が重なり、本人にも整理できていない場合があります。また、理由を話すことで責められたり、すぐに学校と話し合いをされたりすることを恐れている場合もあります。
無理に聞き出そうとするより、
「今すぐ全部話さなくても大丈夫」
「困っていることがあれば、話せる範囲で聞かせてほしい」
と伝え、安心して話せる関係をつくることが大切です。
家族には話せなくても、利害関係のない第三者には話せることがあります。
JADAの家庭訪問は、本人を力ずくで部屋から出すことを目的としていません。
最初の目的は、家族以外の信頼できる大人との接点をつくることです。
シュン君への最初の訪問でも、すぐに学校や進路の話をせず、同じ空間にいることから始めました。
その後、ゲームなど本人が話しやすい内容を入口に、少しずつ信頼関係を築きました。
ただし、本人のペースを尊重することと、何もしないことは違います。
信頼関係をつくりながら、外出、見学、学び直しなど、次の具体的な行動へつなげていきます。
必要な回数は、本人のStage、年齢、引きこもっている期間、家族関係などによって異なります。
シュン君の場合は、5〜6回の訪問を重ねた後、通信制高校への転学を決めました。
一度の訪問で話せなかったからといって、失敗ではありません。
話せる日もあれば、反応が乏しい日もあります。前向きな発言をした後に、再び部屋へこもることもあります。
一回ごとの反応だけで判断せず、関係を切らずに次の行動へつなげることが大切です。
親へのコーチングでは、単に「優しく見守りましょう」と伝えるのではありません。
・本人に伝えること、伝えないこと
・学校や進路の話をする時期
・父親と母親の役割分担
・家庭内の生活ルール
・本人の代わりにやらないこと
・第三者支援へのつなぎ方
・本人が選択に責任を持てる関わり方
などを、家庭の状況に合わせて具体的に整理します。
親だけを変えても、本人の生活や社会との接点までは動きません。
本人だけを外へ連れ出しても、家庭環境が変わらなければ元に戻ることがあります。
そのため、JADAでは「親へのコーチング × 子どもへの実動支援」を両輪としています。
通信制高校へ転学するだけで、すべてが解決するわけではありません。
自宅だけで学ぶ通信制高校を選ぶと、外出や人との交流がさらに減り、引きこもり状態が続くこともあります。
大切なのは、学校の種類だけではなく、
・定期的に外出できるか
・生活リズムを整えられるか
・教職員や同年代と関われるか
・学習を継続できる支援があるか
・学校行事や社会体験へ参加できるか
という点です。
シュン君は、通信制高校で学ぶだけでなく、海釣り、球技大会、生活改善合宿、学生寮などを組み合わせたことで、社会との接点を取り戻しました。
合宿中は、決まった時間に起き、食事を取り、日中に活動し、夜に眠る生活をつくりやすくなります。
ただし、短期間の合宿だけで生活改善が完全に定着するとは限りません。
シュン君も、合宿中は生活が整いましたが、自宅へ戻ると再び昼夜逆転しました。
重要なのは、合宿で整った生活を、その後の日常でどのように継続するかです。
家庭での対応、通学、運動、社会体験、学生寮などを組み合わせ、規則正しい生活を日常として定着させる必要があります。
学生寮は、子どもを家庭から追い出す場所ではありません。
本人が親元から適切に距離を取り、自分で生活する力を身につけるための支援環境です。
寮では、
・自分で起きる
・食事や入浴の時間を守る
・学校へ通う
・洗濯や身の回りのことを行う
・共同生活のルールを守る
・困ったときに助けを求める
という経験を積みます。
家庭ですべてを親にやってもらう生活と、支援のない一人暮らしの間にあるのが、支援付きの学生寮です。
本人の安全と納得を確認しながら進めることが前提です。
本人が大学進学を希望することは、大切な変化です。
ただし、「大学へ行きたい」という言葉と、合格に必要な行動が一致しているかを確認する必要があります。
生活リズム、現在の学力、勉強時間、受験科目、費用、卒業後の目的などを具体的に整理します。
シュン君は、最初の大学受験では行動が十分に伴わず、希望した大学にすべて不合格となりました。
その後、ホテル勤務を経験し、それでも大学へ行きたいと自分で決め、3か月間集中して勉強しました。
親が環境をすべて用意する前に、本人が何のために進学したいのかを確かめることが重要です。
失敗によって、一時的に落ち込んだり、生活が乱れたりする可能性はあります。
そのため、結果だけを責めず、
「今回の経験から何が分かったか」
「次にどのような選択肢があるか」
を一緒に整理することが大切です。
失敗をすべて避けさせると、本人は自分で判断し、結果を引き受ける経験を持てません。
自律に必要なのは、失敗しないことではありません。
失敗した後に立て直し、次の道を選び直せることです。
シュン君も最初の受験では不合格となりましたが、ホテル勤務を経て、看護系大学という新しい進路を自分で選びました。
ホテル勤務が、直接学力を上げたわけではありません。
働くことを通じて、時間を守ること、周囲と協力すること、責任を果たすこと、お金を稼ぐことの大変さを知りました。
その経験により、
「このまま働くのか」
「大学で何を学びたいのか」
「進学するために、何をしなければならないのか」
を、自分の問題として考えるようになりました。
親や先生に勉強するよう言われるのではなく、自分で進学の意味を見つけたことが、その後の行動につながりました。
社会は、本人が自分の将来を考えるための最高の教室になります。
JADAでは、元の学校へ戻ることだけを解決とは考えていません。
生活改善、外出、家族以外の人との交流、学び直し、進学、就労、社会参加など、本人が社会的自律へ向けた実質的な一歩を踏み出すことを解決と捉えています。
シュン君も、元の高校へ復学したわけではありません。
通信制高校へ転学し、学生寮で生活を整え、ホテル勤務を経験し、自分で看護系大学への進学を選びました。
最終的な目標は、不登校という状態だけをなくすことではありません。
本人が自分で考え、自分で選び、教育・勤労・納税という社会の一員としての役割を果たし、社会に貢献できる人生を実現することです。
JADAでは、親へのコーチングと子どもへの実動支援を組み合わせ、社会的自律までの道筋を一緒に考えます。
具体的な支援について相談したい方は、次のページをご利用ください。
シュン君の回復は、偶然起きたものではありません。
JADAでは、子どもの現在地を判定し、親へのコーチングと本人への実動支援を組み合わせ、社会的自律まで段階的に支援します。
相談当初のシュン君は、昼夜逆転、1日1食、入浴と外出が週1回程度、家族との会話の減少が見られるStage3でした。
Stage3以上は、単なる不登校ではなく、生活と社会との接点が崩れ始めた引きこもり域です。
Autonomy Stage OS|不登校・引きこもり5ステージ判定
親の関わり方だけを変えても、本人の生活や社会との接点が動かなければ、根本的な変化にはつながりません。
反対に、本人だけを外へ連れ出しても、家庭環境が変わらなければ元に戻ることがあります。
そのため、JADAでは、
親へのコーチング
×
子どもへの実動支援
を支援の両輪としています。
JADA Support Philosophy|親へのコーチングと子どもへの実動支援
シュン君は、次の段階を経て社会的自律へ進みました。
親へのコーチング・Stage判定
↓
家庭訪問による接点づくり
↓
生活改善
↓
通信制高校での学び直し
↓
生活改善合宿・学生寮
↓
ホテル勤務による社会参加
↓
自分で看護系大学への進学を選択
JADA Autonomy OS|社会的自律へ進む7つのステップ
お子さんの未来は、
まだ変えられます。
40年以上・1万人超・9割以上の支援実績
NHK・PIVOTでも紹介された支援モデル
まずは無料で、お子さんの現在地を確認してください
登録すると、次のことが分かります
※ご登録だけでは契約にはなりません
現在のお子さんの状況を整理し、
今後の方向性をご提案します
※相談は無料です。安心してご利用ください。
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