不登校・引きこもりに訪問支援が必要な理由|死の瀬戸際で書いた朝日新聞「私の視点」

不登校・引きこもりは、本人が動き出すまで見守るだけでよいのでしょうか。

私は、昼夜逆転、ゲーム漬け、親との会話断絶、外出困難、入浴拒否、進路拒否などが重なる場合、相談窓口で待っているだけでは支援が届かないと考えています。支援者が靴を履き、本人のいる家庭へ出向く訪問支援(アウトリーチ)が必要です。

最近の相談には、母親に対する激しい家庭内暴力があり、児童相談所が介入しているケースもあります。また、高校時代から4〜5年間、引きこもりに近い状態が続き、3年間ほとんど歯を磨かず、入浴や洗髪もできなくなっている若者もいます。

ここまで生活が崩れ、家族との関係が断絶している状態では、本人が自ら相談窓口へ来ることを期待して待つだけでは、状況はほとんど変わりません。Autonomy Stage OSに基づく5-Stage Assessmentでは、Stage 4〜5に相当する可能性が高く、保護者への助言だけではなく、本人のもとへ出向くアウトリーチを含む実動支援が必要です。

ただし、家庭内暴力、自傷、希死念慮、オーバードーズなどがある場合は、訪問支援を単独で行うのではありません。本人と家族の安全確保を最優先し、必要に応じて警察、児童相談所、医療機関などと連携したうえで、生活の立て直しと社会への再接続を目指します。

この考えを社会へ訴えたのが、2020年11月5日の朝日新聞13面「私の視点」に掲載された「中高生の引きこもり支援 行政は訪問体制を整えよ」です。

この原稿を書いたのは、重症肺炎で救急搬送され、49日間入院していた病室でした。炎症反応を示すCRPは25まで上昇し、主治医から「医学的には死んでもおかしくないほど深刻な数値だった」と告げられました。

死にかけたからこそ、後世に残したいことがありました。

本人が相談窓口へ来るのを待つだけでは、引きこもった子どもに支援は届きません。親への助言だけで終わらせず、支援者が本人のもとへ出向き、生活、学び、社会との接点をつくり直さなければならない。その覚悟を49日間の病床で書き上げたのが、朝日新聞「私の視点」です。

現在、一般社団法人未来自律支援機構(JADA:Japan Autonomous Development Association)では、中核フレームワーク「Autonomy Stage OS」に基づく「5-Stage Assessment(不登校・引きこもりの5ステージ判定)」で、本人と家庭の現在地をStage 1からStage 5までの5段階に整理しています。簡単にいえば、家庭で対応を整えながら見守れる段階なのか、第三者による実動支援が必要な段階なのかを判断するためのステージ判定です。

この記事では、一般社団法人未来自律支援機構代表理事・杉浦孝宣(Takanobu Sugiura)が、40年以上・1万人超・9割以上の解決実績に基づき、なぜ不登校・引きこもりには「待つ支援」だけでなく、Parent Coaching × Direct Support for the Young Person、すなわち親へのコーチングと本人への実動支援が必要なのかをお伝えします。

目次

重症肺炎で救急搬送され、49日間入院した

2020年、私は重症肺炎で救急搬送されました。呼吸が苦しく、強い痛みもあり、入院当初は厳重な管理が必要な状態でした。ナースステーションに近い個室へ入り、医療スタッフがすぐ対応できる環境に置かれました。

主治医と向き合ったとき、私はコーヒーを飲みながら話をしていました。主治医は検査数値の深刻さと、目の前にいる私の様子との違いに驚き、「医学的には死んでもおかしくないほどの数値ですが、こうして対面すると生気があり、生き生きしていて、まったく心配ないように見えます」と話しました。

私は、深刻な状態であっても、ただ病人らしく横になっていることができませんでした。自宅からアレクサを持ち込んで音楽を流し、ポットでお湯を沸かしてコーヒーを淹れました。そして、ついにはピザーラへ出前を注文しました。

さすがに看護師長が病室へ来て、「ここは病院です。もう少し患者らしくしてください」と叱られました。コロナ禍で外部からの人の出入りが制限されていた時期ですから、出前を頼んだことは私の不注意でした。

ナースステーションから最も遠い特別室へ

その後、私はナースステーションから最も遠い、浴槽と机のある広い特別室へ移りました。本来は1日5万5,000円の部屋でしたが、病院側の管理上の環境調整だったため、差額ベッド代は請求されませんでした。30日以上、その部屋で治療を受けながら過ごしました。

音楽を聴き、コーヒーを飲み、風呂へ入り、決まった時間にはオンラインで朝礼にも参加しました。病室の机は、やがて原稿を書くための仕事場になりました。

この入院生活の詳細は、当時の高卒支援会ブログ「退院しました」と「光文社 打ち合わせ」にも記録しています。

死にかけたからこそ、後世に何を残すかを考えた

人は死を身近に感じると、自分が本当に残したいものを考えます。

私が後世に残したいと思ったのは、自分の闘病記ではありません。不登校・高校中退・引きこもりの子ども・若者と40年以上向き合う中で見てきた、支援現場の事実でした。

相談窓口を設置して「困ったら来てください」と案内しても、部屋から出られず、親とも話さない本人は相談へ来ません。学校の先生やスクールカウンセラーが校内で待っていても、学校へ行けない本人とは会えません。

来られない本人を救いたいのであれば、支援する側が出向くしかありません。

私はそのことを、命が助かったら必ず社会へ訴えたいと思いました。

朝日新聞「私の視点」を病室で書き上げた

病室で書いた原稿は、2020年11月5日、朝日新聞13面「私の視点」に「中高生の引きこもり支援 行政は訪問体制を整えよ」として掲載されました。

掲載までには、担当者への説明、デスクによる表現の確認、校閲部による数字の確認などがあり、メールのやり取りは20回以上に及びました。49日間の入院中、私は自分の経験と言葉を何度も見直しました。

朝日新聞に掲載された原文は、「中高生の引きこもり支援 行政は訪問体制を整えよ」から確認できます。

掲載後には、地方議員による視察や、複数の自治体からの問い合わせがありました。それだけ、引きこもっている本人へ支援を届ける方法が、全国的な課題になっていたのです。

「見守る支援」と「何もしないこと」は違う

私は、すべての不登校に直ちに家庭訪問が必要だと言っているわけではありません。疲れ切った子どもが休み、心身を回復させる時間は必要です。家庭と学校が連携し、本人の状態を確認しながら見守れる段階もあります。

しかし、見守ることと、何もしないまま状態を固定させることは違います。

  • 昼夜逆転が続いている
  • スマートフォンやゲームだけで一日が終わる
  • 親との会話を拒否している
  • 家からほとんど出ない
  • 入浴、歯磨き、着替えなどができなくなっている
  • 学習、進学、アルバイトなど将来の話を拒む
  • 暴言、家庭内暴力、自傷などが見られる

こうした状態が重なっているのに、「本人の意思が変わるまで待ちましょう」と言い続ければ、生活の崩れと社会からの孤立が深まる可能性があります。欠席日数だけを見るのではなく、生活、家族関係、外出、学習、社会との接点を総合的に確認しなければなりません。

まず5-Stage Assessmentで現在地を整理する

JADAでは、中核フレームワーク「Autonomy Stage OS」に基づく「5-Stage Assessment(不登校・引きこもりの5ステージ判定)」を用います。

これは、本人と家庭の現在地をStage 1からStage 5までの5段階に整理し、家庭で対応を整えながら見守れる段階なのか、第三者による実動支援が必要な段階なのかを判断するためのステージ判定です。

  • Stage 1:行き渋りが見られるが、学校や外部との接点が残っている
  • Stage 2:欠席が増え、昼夜逆転など生活の乱れが始まっている
  • Stage 3:不登校が長期化し、外出や家族との会話が減っている
  • Stage 4:家庭内で孤立し、入浴や食事を含む生活が大きく崩れている
  • Stage 5:引きこもりが長期化し、将来や社会参加を拒絶している

Stage 1〜2では、親の対応と学校との連携を整えながら改善を目指せる場合があります。一方、昼夜逆転、ゲーム漬け、会話断絶、外出困難、入浴拒否、進路拒否などが重なるStage 3以上では、家庭だけで抱えず、本人へ直接働きかけられる専門機関へ相談することを推奨します。

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親へのコーチングと本人への実動支援を両輪にする

JADA Support Philosophyの核心は、Parent Coaching × Direct Support for the Young Person、すなわち親へのコーチングと本人への実動支援です。

親だけが変われば、すべて解決するわけではありません。本人だけを支援しても、家庭の方針や生活環境が変わらなければ、元の状態へ戻る可能性があります。

まず保護者が現状を共有し、父母の方針をそろえます。起床、食事、スマートフォン、ゲーム、金銭など、家庭の生活基準を見直します。そのうえで、必要に応じて支援者が家庭へ出向き、本人との接点をつくります。

JADAは、相談を聞いて終わる機関ではありません。家庭訪問、生活改善、合宿・寮、学び直し、外出同行、アルバイト、インターン、進学、就職まで、本人と家庭に必要な行動を組み立てます。詳しくは「JADA Support Philosophy」をご覧ください。

訪問した後、何をするのか

家庭訪問は、ゴールではなく入口です。部屋から出た、支援者と話したという一度の変化だけで、不登校・引きこもりが根本的に解決したとは判断しません。

JADAでは「7 Steps to Autonomy」に沿って、次の支援を進めます。

  1. 親コーチング&ステージ判定:本人と家庭の現在地、課題、支援目標を整理する
  2. アウトリーチ(家庭訪問):本人との接点をつくり、信頼関係を築く
  3. 生活改善・環境調整:起床、食事、入浴、運動、スマートフォン、ゲームなどを整える
  4. 学び直し支援:本人の状態に応じて基礎学習、高卒資格、進学準備へつなぐ
  5. 社会接点づくり:外出、同行、行事、ボランティアなどを通じて人や社会と再接続する
  6. 進路・社会参加支援:進学、アルバイト、インターン、就職へ伴走する
  7. Social Autonomy:自分で考え、選び、行動し、社会の一員として歩む

生活を整え、学び直し、社会との接点をつくる。この順序を飛ばして、いきなり「学校へ行きなさい」「就職しなさい」と迫っても、本人は動けません。本人の現在地に合った働きかけを積み重ねることが重要です。

成功事例は、支援の再現性を示すEvidence

JADAが訪問支援を重視するのは、理念だけからではありません。実際に家庭へ出向き、生活改善、学び直し、社会参加まで伴走することで、人生を再び動かした子ども・若者を数多く見てきたからです。

  • 中学2年から約10年間引きこもった後、学び直し、通信制高校、短期大学を経て、保育士・公務員になったY子さん
  • 中学1年で不登校となり、訪問支援からフリースクール、通信制高校へ進み、公務員になったカイト君
  • 中高一貫校を退学後、通信制高校を卒業し、アルバイト経験を重ねて区役所へ就職したカズキ君

これらは、単なる美談ではありません。本人がどの状態にあり、保護者へ何を伝え、本人へどのように働きかけ、その結果として何が変わったのかを示すEvidenceです。

具体的な支援経過は「JADA Success Hub/成功事例」で紹介しています。

最終目標は復学だけではなくSocial Autonomy

不登校の解決を、学校へ戻ることだけで判断してはいけません。通信制高校へ転校した、卒業資格を取ったというだけで、昼夜逆転や引きこもりが続いているケースもあります。

JADAの最終目標は、Social Autonomy(社会的自律)です。本人が生活を整え、人とつながり、学び、働き、自分で考え、選び、行動できるようになること。そして、教育、勤労、納税を通じて社会へ貢献する人生を歩むことを目指します。

朝日新聞「私の視点」で訪問支援の必要性を訴えてから年月がたっても、私の考えは変わりません。むしろ、相談・傾聴・見守りだけでは届かない家庭があることを、現在の支援現場で改めて実感しています。

家庭だけで抱え込まないでください。私たちが一緒に動きます。

親が諦めない限り、JADAも諦めません。

Stage 3以上の不登校・引きこもりでお困りの方は、一般社団法人未来自律支援機構(JADA)の30分無料相談をご利用ください。保護者だけでもご相談いただけます。

よくある質問

1.不登校・引きこもりは、見守るだけでよいのでしょうか?

学校を休み、心身を立て直すために見守る時期はあります。しかし、昼夜逆転、ゲーム漬け、親との会話断絶、外出困難、入浴拒否、進路拒否などが重なっている場合、無期限に待つだけでは状態が固定される可能性があります。本人の生活と社会との接点を確認し、必要な働きかけを始めることが重要です。

2.朝日新聞「私の視点」では、何を訴えたのですか?

2020年11月5日の朝日新聞13面「私の視点」に、「中高生の引きこもり支援 行政は訪問体制を整えよ」が掲載されました。

相談窓口を設置して本人が来るのを待つだけでは、すでに部屋から出られなくなった子どもへ支援が届きません。行政や支援者が家庭へ出向く訪問支援体制を整える必要があると訴えました。

3.なぜ入院中に「私の視点」を書いたのですか?

私は重症肺炎で救急搬送され、49日間入院しました。主治医から、医学的には死んでもおかしくないほど深刻な状態だったと告げられました。

死にかけたからこそ、40年以上の支援現場で見てきた事実と、訪問支援の必要性を後世に残したいと思いました。その覚悟を込めて、病室で原稿を書き上げました。

4.訪問支援(アウトリーチ)とは何ですか?

本人が相談窓口へ来られない場合に、支援者が家庭へ出向き、本人との接点をつくる支援です。

ただ会いに行くだけではありません。本人の状態を確認し、会話、外出、生活改善、学び直し、アルバイト、進学、就職など、次の行動へつなげていきます。

5.本人が訪問支援を拒否していても実施できますか?

最初から本人が歓迎してくれるとは限りません。無理に部屋へ入ったり、力ずくで連れ出したりする支援ではなく、安全と本人の状態に配慮しながら、保護者と準備を整えて接点をつくります。

訪問の時期、担当者、声のかけ方、家庭内の環境などを事前に検討することが重要です。

6.5-Stage Assessmentとは何ですか?

JADAの中核フレームワーク「Autonomy Stage OS」に基づき、本人と家庭の現在地をStage 1からStage 5までの5段階に整理する評価枠組みです。

簡単にいえば、家庭で対応を整えながら見守れる段階なのか、第三者による実動支援が必要な段階なのかを判断するための「不登校・引きこもりの5ステージ判定」です。

7.どの段階から第三者の訪問支援が必要ですか?

行き渋りや欠席が始まったStage 1〜2では、家庭の対応と学校との連携を整えることで改善を目指せる場合があります。

一方、昼夜逆転、ゲーム漬け、会話断絶、外出困難、入浴拒否、進路拒否などが重なるStage 3以上では、家庭だけで抱えず、本人へ直接働きかけられる専門機関への相談を推奨します。

8.親へのコーチングだけでは解決できませんか?

親へのコーチングは、家庭の方針や生活環境を整えるために重要です。しかし、引きこもりが進み、本人が家族との接触を拒んでいる場合、親の声かけを変えるだけでは動き出せないことがあります。

JADAは、Parent Coaching × Direct Support for the Young Person、すなわち親へのコーチングと本人への実動支援を両輪として進めます。

9.本人が相談を拒否していても、保護者だけで相談できますか?

はい。保護者だけでも相談できます。まず保護者から、欠席期間、睡眠、食事、入浴、スマートフォンやゲーム、家族との会話、外出、学習、暴言や暴力などの状況を伺います。

そのうえで現在のステージを整理し、家庭で変えること、本人への接点のつくり方、訪問支援の必要性を検討します。

10.自傷や家庭内暴力がある場合も、訪問支援で対応できますか?

自傷、希死念慮、家庭内暴力、激しい暴言、リストカット、オーバードーズなどがある場合は、通常の不登校支援よりも安全確保を優先します。

差し迫った危険がある場合は、ためらわず110番・119番へ連絡してください。JADAへ相談いただいた場合も、状況を整理したうえで、必要に応じて医療機関、警察、児童相談所などとの連携を提案し、解決を目指します。

杉浦孝宣(すぎうら・たかのぶ)

一般社団法人未来自律支援機構(JADA)代表理事、認定NPO法人高卒支援会会長。不登校・高校中退・引きこもりの子ども・若者とその家庭を40年以上支援し、これまでに1万人以上の相談・支援に携わり、9割以上の解決実績を積み重ねてきました。

自身も小学3年生で不登校を経験。家庭訪問、生活改善合宿、学生寮、学び直し、進学、就労、社会参加までを一貫して支援し、復学だけではなくSocial Autonomy(社会的自律)を最終目標としています。

杉浦孝宣のプロフィール・経歴を見る

JADAの支援モデルは英語でも発信しています。海外向け情報は「JADA Global Site」をご覧ください。

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杉浦 孝宣
杉浦孝宣(すぎうら・たかのぶ)は、一般社団法人未来自律支援機構(JADA)代表理事、認定NPO法人高卒支援会創業者。自身も小学3年生で不登校を経験し、その体験を原点に40年以上にわたり不登校・高校中退・引きこもり支援に携わってきた。 これまで1万人以上の相談に対応し、家庭訪問、生活改善合宿、学生寮、学び直し支援、就労支援などを通じて、多くの若者のSocial Autonomy(社会的自律)を支援している。 「子どもは必ず変われる」を信念に、学校復帰だけをゴールとせず、一人ひとりが自ら考え、行動し、社会に参加していくSocial Autonomyを目指した支援を実践している。 著書に『不登校・ひきこもりの9割は治せる』『高校中退 不登校でも引きこもりでもやり直せる』『もう悩まない!不登校・ひきこもりの9割は解決できる』など。近年は一般社団法人未来自律支援機構(JADA)を通じて、Autonomy Stage OSと7 Steps to Autonomyを体系化し、国内外へ発信している。台湾版著書も出版され、教育・福祉・行政・企業・国際社会との連携を通じて、若者のSocial Autonomyを実現する支援モデルの普及に取り組んでいる。
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