不登校支援の原点は、一人の中卒浪人生との出会い|40年以上、成果を公開し続ける理由【JADA】
執筆:杉浦孝宣|一般社団法人未来自律支援機構(JADA:Japan Autonomous Development Association)代表理事・認定NPO法人高卒支援会 創業者・会長
私は40年以上、不登校・高校中退・引きこもりの子ども・若者と、そのご家族を支援してきました。
その中で大切にしてきたのは、「支援しました」で終わらせないことです。
どのような状態から、何を行い、本人がどう変わったのか。その後、どのような学びや社会参加へ進んだのか。結果を確認し、記録し、社会へ公開してきました。
なぜ、支援の成果を公表するのか。その原点には、家庭教師を始めた頃に出会った、一人の少年がいます。
今回、これまでの実践と情報公開の歴史、そしてJADAが考える「解決」の意味を整理した実績ページを公開しました。この記事では、一人の中卒浪人生との出会いから、私が支援を続け、成果を公開してきた理由をお伝えします。
リーゼント姿のO君を、私は見た目で判断していました
40年以上前、家庭教師を始めたばかりの私は、中学校を卒業しても高校へ進学していない「中卒浪人生」のO君と出会いました。
O君はリーゼント姿で、いわゆる「ツッパリ」のように振る舞っていました。
当時の私は、正直なところ、こう思いました。
「えっ、高校に行けない子っているんだ」
そして、その姿を見て、
「こんな子が高校に行けないのは当然じゃん」
と、軽く考えてしまったのです。十分に事情を聞かないうちに、お断りしようとさえ思っていました。
今振り返れば、私はO君の外見や態度だけを見ていました。なぜそのように振る舞うのか、学校でどのようなことがあったのかを、まだ理解していなかったのです。
ところが、話を聞くうちに、私の見方は変わりました。
ウォークマンを壊された話を聞き、私の見方が変わった
当時、私が聞いた話では、O君は修学旅行に、持ち込みを禁止されていたカセット式のウォークマンを持っていきました。
それを担任の先生が取り上げ、皆の前で、水の入ったバケツに入れて壊したというのです。見せしめとして行われたと聞きました。
持っていってはいけない物を持っていったことと、皆の前で持ち物を壊されることは、別の問題です。
その話を聞いて、私は、リーゼント姿で不良っぽく振る舞うO君の気持ちが分かったように感じました。見た目だけでは分からない事情が、そこにあったのです。
同時に、自分自身も小学3年生のときに不登校を経験していたことを思い出しました。
私自身も、学校でうまく過ごせなかった子どもの一人でした。竹岡養護学園での生活を通して、規則正しい生活、学び直し、仲間との関係に支えられ、再び自信を取り戻していった経験があります。
その私が、目の前のO君を見た目だけで判断し、お断りしようとしていたのです。
私は、O君の支援を引き受けることにしました。
この出会いは、私にとって、支援する側としての出発点になりました。外見や今の態度だけで、その子の未来を決めつけない。まず、その子に何があったのかを知る。その姿勢を、私は今も大切にしています。
一年遅れの都立高校進学と、NHK・サンケイ新聞の取材
翌年、O君は一年遅れで都立高校へ進学しました。
そのとき、NHKとサンケイ新聞から取材がありました。私も進んで取材に応じました。
O君のように、高校へ進めずにいる子がいる。見た目や表面的な態度だけで判断され、その背景を十分に理解してもらえていない子がいる。
そうした子どもたちを救いたい。そして、同じ問題を抱えているご家庭に、学び直しや再出発の道があることを伝えたい。
O君との出会い、その後の高校進学、そして取材を受けた経験が、不登校・高校中退の子どもたちを支える仕事を続けていくきっかけになりました。
それ以来、私は支援の成果をメディアに公表してきました。
成果を知らせることだけが目的ではありません。同じように困っている子どもや、そのご家族に、支援につながるきっかけを届けたいからです。
成果を公開するのは、次の子どもを支えるため
私は、目の前の子どもを支援することと、その実践を次の支援へつなげることの両方を大切にしてきました。
支援前にはどのような状態だったのか。本人は何に困り、家庭は何を抱えていたのか。何を行い、どこで変化が生まれ、その後どのような学びや社会参加へ進んだのか。
そうした経過を確認し、記録し、公開することには意味があります。
今、困っているご家庭には、「似た状態から再出発した人がいる」と知る機会になります。支援する側にとっても、何を行い、どのような変化があったのかを振り返り、次の支援を考える材料になります。
私にとって、成果の公表は実績を並べるためだけのものではありません。O君との出会いから続いている、「こうした問題を抱えている子を救いたい」という思いの延長にあります。
情報を公開してきた歩みも、記録として残す
その後、学力会での都立高校転編入支援、高卒支援会での活動、記者会見、出版、メディアによる取材などを通じて、支援の実践と成果を社会へ伝えてきました。
実績ページでは、こうした歩みとともに、私が率いていた有限会社学力会が平成22年度・第14回板橋経営品質賞「認定委員会特別賞」を受賞した記録も紹介しています。受賞主体は現在のJADAではなく、有限会社学力会です。
受賞記録、記者会見、出版、報道は、それぞれ役割の異なる資料です。それらを一括して、現在のすべての支援結果が保証されるという意味にはしていません。何を記録し、どのような形で外部へ公開してきたのかを、確認していただきたいと考えています。
関連資料|後年、支援実績を報道機関へ説明した記者会見
次の動画は、実績ページで紹介している、都立高校への転編入支援などを報道機関へ説明した記者会見の記録です。O君が進学した際のNHK・サンケイ新聞の取材とは、別の時期の記録です。
- 動画タイトル
- 【記者会見】NHK・朝日・読売・日経・毎日・東京新聞・宝島社が集結!GW明けに急増する「高校中退問題」の闇。JADA(未来自律支援機構)が提示する都立高校転校による救済策【解決率9割・杉浦孝宣】
- YouTube公開日
- 再生時間
- 説明者
- 杉浦孝宣
- 記録の位置づけ
- 支援実績と支援方法を報道機関へ公開した記者会見の記録
- 参照
- 記者会見の記録をYouTubeで見る
実績ページでお伝えしたいこと
JADAでは、40年以上・1万人超・9割以上の解決実績を掲げています。その数字とともに、どのような対象を支援し、何を成果として確認してきたのかをお伝えするために、実績ページを設けました。
見ていただきたいのは、数字の大きさだけではありません。
一つ目は、何を「解決」としているのか。二つ目は、どの時代の、どの支援についての記録なのか。三つ目は、個々の子どもや家庭に、実際にどのような支援を行ったのかということです。
学力会時代の転編入成功率と、現在の「解決・再出発」は区別します
学力会時代には、新宿山吹高校をはじめとする都立高校への転編入支援に力を入れ、転学試験への合格という、確認できる進路結果を主な成果指標としていました。
現在のJADAでは、長期の引きこもりなど、支援対象が広がっています。そのため、学校へ戻ったかどうかだけを解決の基準にはしていません。
過去の転編入成功率と、現在の不登校・引きこもり支援における「解決・再出発」は、同じ指標ではありません。それぞれの支援対象と到達点を分けて説明しています。
数字だけを受け取るのではなく、その数字が何を表しているのかも含めてご覧ください。
「解決」は再出発。その先に社会的自律がある
O君にとって、一年遅れで都立高校へ進学したことは、大きな再出発でした。
現在のJADAでも、本人が自分の意思で、学び直しや社会参加へ向けて具体的な一歩を踏み出すことを、「解決・再出発」の重要な基準としています。
元の学校へ復学する。別の学びの場へ通い始める。高卒認定や進学に挑戦する。アルバイト、就労体験、ボランティアに参加する。本人の状態や希望によって、再出発の形は異なります。
親や支援者に無理に動かされただけではなく、本人が意思を持って学びや社会参加へ動き始めることを大切にしています。
そして、その一歩を踏み出したら、すべてが終わるわけではありません。
学びを続ける。人と関わる。自分の生活を整える。働く。困ったときに相談しながら、自分で選び、行動する。教育・勤労・納税を通じて、社会に貢献していく。
その先にある目標が、Social Autonomy(社会的自律)です。
「解決」は再出発。「最終ゴール」は社会的自律。この二つを区別しているからこそ、私は進学先や就職先だけでなく、本人の現在地も大切にしています。
原体験と現場実践から生まれたJADAの支援
私が先に理論を作り、その理論に子どもたちを当てはめてきたわけではありません。
小学3年生の不登校と竹岡での原体験。家庭教師として出会ったO君。その後、子ども・若者とご家庭に関わり続けた40年以上の実践。その積み重ねを、現在のJADAの支援体系として整理しています。
Built from Practice, Not Just Theory.
理論だけではなく、実践から築いてきた支援です。
親へのコーチングと、本人への実動支援を両輪にする
現在の支援の核心は、「親へのコーチング × 子ども・若者本人への実動支援」です。
英語では、Parent Coaching × Direct Support for the Young Personと表現しています。
保護者の方針や役割分担、生活環境、本人への関わり方を整理する。それと同時に、本人にも、必要に応じて家庭訪問、生活改善、学び直し、人との接点づくり、進路・社会参加への支援を行います。
親だけが変われば解決するとも、本人だけを支援すればよいとも考えていません。家庭と本人の両方に働きかけ、具体的な行動へつなげます。
JADAと認定NPO法人高卒支援会は別の組織です。現在のJADAは相談・評価・親へのコーチング・支援設計と必要な実動支援を組み合わせ、高卒支援会は通所・学習・進路などの実動現場を担います。個々の事例では、誰がどの支援を行ったかを明確にします。
現在地を整理し、必要な支援を組み合わせる
Autonomy Stage OSは、JADAの中核となる支援フレームワークです。その中の「5ステージ判定」で、本人と家庭の現在地を整理します。医学的な診断ではありません。
支援の実行プロセスは、7 Steps to Autonomyとして整理しています。
- 親コーチング&ステージ判定
- アウトリーチ(家庭訪問)
- 生活改善・環境調整(合宿・寮)
- 学び直し支援
- 社会接点づくり(同行)
- 進路・社会参加支援(進学・就職・ボランティア)
- Social Autonomy(社会的自律)
一人ひとりの現在地を確認し、必要な支援を組み合わせます。本人の状態や意思、安全を踏まえず、一律に動かすための手順ではありません。
保護者の方に、今日から見ていただきたいこと
実績や成功事例は、ほかの子とお子さんを比べるためのものではありません。今の状態から、どのような再出発が考えられるかを知るための資料です。
実績ページは、解決の定義や、実績を記録・公開してきた歴史を確認する場所です。一方、成功事例22選では、一人ひとりの支援前の状態、転機、実動支援、現在地を見ていただけます。
今日、成功事例の中から、ご家庭に近い状態だった事例を一つ選んでみてください。そして、次の三点を確認してください。
- 動き出す前に、本人と家庭はどのような状態だったのか。
- 保護者と支援者は、それぞれ何を行ったのか。
- 本人は何をきっかけに行動し、その後どこまで進んだのか。
ご家庭と似ている点だけでなく、違う点も書き出しておくと、相談時に必要な支援を整理しやすくなります。
よくある質問|JADAの支援実績と「解決」の考え方
Q1.杉浦さんは、なぜ支援の成果をメディアやブログで公開してきたのですか?
同じ問題を抱えている子どもやご家庭に、「再出発する道がある」と知っていただきたいからです。
原点は、家庭教師を始めた頃に出会ったO君です。一年遅れで都立高校へ進学した際、NHKとサンケイ新聞から取材があり、私も進んで応じました。同じように困っている子どもを救いたいという思いから、成果を公表するようになりました。
今日から親ができること
「うちの子だけが、こうなってしまった」と抱え込まず、成功事例から、支援前の状態が近いものを一つ読んでみてください。進学先や就職先だけでなく、動き出す前にどのような支援があったかに注目しましょう。
Q2.反抗的だったり、不良のように振る舞ったりする子でも、支援を相談できますか?
はい。見た目や今の態度だけで、支援の可能性を決めつけません。
私自身、O君に初めて会ったときはリーゼント姿を見て、お断りしようとしました。しかし、学校で受けた経験を聞いて見方が変わり、自分も不登校だったことを思い出して支援を引き受けました。
表面的な態度だけを見るのではなく、その子に何があったのかを聞くことを大切にしています。
今日から親ができること
「反抗的」「やる気がない」という評価と、実際に起きた出来事を分けて整理してください。いつから様子が変わったのか、何を嫌がっているのか、どの人や場所なら関われるのか。分からない部分は決めつけず、本人や支援者と確認しましょう。
Q3.JADAの「9割以上の解決実績」は、学校に戻れた割合ですか?
いいえ。そのまま復学率として示しているわけではありません。
現在のJADAでは、本人が自分の意思で学び直しや社会参加へ具体的な一歩を踏み出したことを、「解決・再出発」の重要な基準としています。復学だけでなく、別の学びの場、高卒認定、アルバイト、就労体験、ボランティアなども選択肢です。
今日から親ができること
「元の学校へ戻る」以外にも、本人の学びや社会参加につながる道を書き出してください。本人が関心を示すこと、会える人、行けそうな場所を手がかりに、今取り組める選択肢を支援者と考えましょう。
Q4.「9割以上」という実績は、どのような資料を見て確認すればよいですか?
数字だけでなく、「いつ、誰を対象に、何を成果として確認したのか」を見ていただきたいと考えています。
学力会時代の都立高校転編入の成功率と、現在の学び直し・社会参加へ向けた「解決・再出発」は、同じ指標ではありません。実績ページでは、定義の違いと記録・公開の歴史を整理しています。
外部審査、記者会見、出版、報道についても、それぞれ何を示す資料なのかを区別してご覧ください。
今日から親ができること
実績ページで解決の定義と対象となる支援を確認してください。相談時には、「うちの子の場合、何を最初の目標にし、どのような変化を確認しますか」と尋ねてください。
Q5.成功事例22選は、自分の子どもへの支援を考えるときに、どう読めばよいですか?
進学先や就職先だけでなく、そこへ進むまでの支援経過を読んでください。
JADAでは、支援前の状態、家庭の状況、親への働きかけ、本人への実動支援、転機、現在地を記録することを重視しています。同じ進路を目標にするのではなく、ご家庭にどのような支援が必要かを考える材料にしてください。
今日から親ができること
一つの事例について、「支援前の状態」「保護者が行ったこと」「支援者が本人に行ったこと」「本人の変化」を書き出してください。ご家庭との共通点と違いを整理しておきましょう。
Q6.親が接し方を変えれば、子どもは動き出すのでしょうか?
親の関わり方を整えることは大切ですが、親だけが変われば解決するとは考えていません。
JADAの核心は、親へのコーチングと本人への実動支援の両輪です。保護者の方針や役割を整理すると同時に、本人にも家庭訪問、生活改善、学び直し、人との接点づくりなど、必要な支援を行います。
今日から親ができること
紙を二つに分け、「家庭で取り組むこと」と「本人が支援者と取り組むこと」を整理してください。保護者は生活を支える役割を決め、支援者とは本人が会える相手や参加できる活動を検討します。家庭だけでは担いきれない部分を明確にしましょう。
Q7.本人が相談を拒否しています。成功事例のような支援を始めるには、どうすればよいですか?
まずは、保護者から相談を始められます。本人が参加できるようになるまで、家庭だけで抱え続ける必要はありません。
Autonomy Stage OSの中の5ステージ判定で本人と家庭の現在地を整理し、誰が、どのように本人へ関わるかを検討します。5ステージ判定は医学的な診断ではありません。本人の状態や意思、安全を踏まえて進めます。
今日から親ができること
起床・就寝、食事、入浴、外出、家族との会話、学習、家族以外との接点を、分かる範囲で整理してください。これまで試した対応と本人の反応も相談時に伝えましょう。記録を完璧にそろえるまで、相談を待つ必要はありません。
Q8.学び直しやアルバイトを始めたら、それで支援は終わりですか?
再出発は大切な節目ですが、最終地点ではありません。
「解決」は、本人が自分の意思で人生を動かし始めること。その先に、学びや仕事を続け、人と関わり、自分の生活を整え、社会へ貢献していくSocial Autonomy(社会的自律)があります。
今日から親ができること
本人が始められたことを認めたうえで、「続けるために何が必要か」を本人と確認してください。生活時間、通学・通勤、人間関係、学習や仕事で困っていることを整理し、必要な支援と次の目標を考えましょう。
あのときO君を断っていたら、今の私はなかったかもしれません
私は最初、O君を見た目で判断し、お断りしようとしていました。
けれども、話を聞いて見方が変わりました。自分も不登校だったことを思い出し、支援を引き受けました。そして翌年、O君は一年遅れで都立高校へ進学しました。
あのとき、外見だけで判断して支援を断っていたら、今の私はなかったかもしれません。
O君との出会いから続く思いは、今も変わりません。見た目や現在の状態だけで、その子の未来を決めつけないこと。そして、困っている子どもとご家庭に、再出発の道を届けることです。
支援した結果を記録し、公開するのも、そのためです。すでに再出発した一人の歩みが、今困っている別の一人にとって、支援へつながるきっかけになる。その可能性を大切にしたいと考えています。
実績ページと成功事例22選を、ぜひその視点でご覧ください。
親が諦めない限り、JADAも諦めません。
この記事の出典・関連資料
O君との出会い、学校での出来事を聞いた経緯、翌年の都立高校進学、NHK・サンケイ新聞の取材に関する記述は、杉浦孝宣本人の回想に基づいています。学校での出来事は、当時聞いた内容として紹介しています。
実績の定義や対象は時代・支援内容によって異なります。個別の事例は、すべてのご家庭に同じ経過や結果を保証するものではありません。
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