養老乃瀧を教室にした理由|不登校・高校中退から学びと仕事をつなぐ支援

執筆:杉浦孝宣|一般社団法人未来自律支援機構(JADA)代表理事・認定NPO法人高卒支援会 創業者・会長

2016年1月21日公開の「高校中退 就職」を、当時の高卒支援会の活動記録と、筆者が確認した経緯、現在の支援事例をもとに再構成しました。養老乃瀧との取り組みは過去の教育実践であり、現在の教室・求人・採用枠の案内ではありません。

高校中退後は、「すぐに就職」か「学び直し」かの二択ではありません。

生活を整え、人との接点を取り戻し、学びと仕事の経験をつなぐ。そのために、親へのコーチングと、本人が実際に動くための支援を組み合わせます。

この記事では、養老乃瀧との教育実践、大倉星耶による面接指導、内定・就職に至った二人の事例を通じて、ご家庭が今日から何を行い、どのように支援を始めるかをお伝えします。

「高校を辞めた。この先、働けるのだろうか」「通信制高校へ移っても、家でゲームばかり」「本人に働く気はあるようだが、応募も面接も進まない」。そんな不安を抱える保護者の方へ。

私は、不登校・高校中退・引きこもりの子ども・若者と、その家庭への支援に40年以上携わり、1万人を超える相談・支援を重ねてきました。現在は、一般社団法人未来自律支援機構(JADA:Japan Autonomous Development Association)で、その実践知を社会的自律へ向けた支援体系に整理しています。

私が目指してきたのは、子どもたちに「社会に出なさい」と伝えることだけではありません。社会の側にも働きかけ、学ぶ場所、働く機会、人と関わる場をつくることです。養老乃瀧との協働は、その具体的な実践でした。

本人が相談に来られない場合も、保護者から支援の相談を始められます。

高校中退後の就職|学び直しと仕事を、二者択一にしない

高校を中退した本人に、「学校を辞めたのだから働きなさい」と求めるだけでは、生活や応募の準備は整いません。一方で、高校卒業まで仕事や社会との接点をすべて先送りする必要もありません。

私は、学び直しを続けながら、本人の状態に合うアルバイトや社会参加の機会を持つ道を考えてきました。学歴の条件を確認することと、本人が時間を守り、人と関わり、役割を担う経験を積むこと。その両方を支えます。

2016年1月21日に公開したこの記事の旧稿でも、養老乃瀧の本社3階を学習の場として利用し、高校卒業を目指しながらアルバイトに取り組む若者を紹介しました。当時の実践を、現在の支援へつながる記録として振り返ります。

ただし、希望する仕事の応募条件、学び直しに必要な単位や費用、本人の体調と意向は、それぞれ確認が必要です。「中退したから選べない」と親が先に結論を出さず、実際の選択肢を調べます。

今日から保護者ができる To Do:

明日、本人の了承を得て、以前の高校へ修得単位などを確認してください。学び直しを希望する場合は候補校に卒業までの条件を問い合わせ、本人が関心を示した求人の応募条件と並べて整理しましょう。相談時には、その情報を持ち寄り、学習と仕事をどう組み合わせるかを話し合います。

養老乃瀧を教室にした理由|社会そのものを、学びの場にする

子どもたちのコミュニケーション能力を育てるには、教室で話し方を教えるだけでなく、実際に人と関わる機会が必要だと考えていました。そこで、紹介者を通じて養老乃瀧の矢満田社長(当時)とお会いし、約10分の面談で、次の趣旨の提案をしました。これは、私自身が振り返る当時の経緯です。

昼間空いているなら、子どもたちのために開放してほしい。夕方はアルバイトで雇ってほしい。

昼間は学び直しの場、夕方以降は働く経験の場へ。私がお願いしたのは、単なる教室の貸し出しではなく、子どもたちの学びと社会参加をつなぐ協力でした。

矢満田社長に生徒を紹介し、直接面接していただいた

生徒の就労に向けては、私から矢満田社長に本人を紹介し、社長ご本人に直接面接していただきました。「働いてみたら」と勧めるだけでなく、私自身が企業へ働きかけ、本人が面接へ進む接点をつくったのです。[筆者の回想・確認]

2016年の原記事に残る、18歳の生徒の言葉

2016年1月21日の原記事では、高校卒業を目指して教室に通いながら、養老乃瀧でアルバイトに取り組む18歳の生徒を紹介しています。私が仕事の様子を尋ねたとき、本人は次のように答えていました。

社員の方とか優しくて、居心地がいいんです。

原記事に記録した本人の言葉です。私はその会話から、働く場に受け入れてくれる人がいることの大切さを感じました。仕事が楽であることを保証する話ではなく、本人が当時どのように職場を受け止めていたかを示す記録として紹介します。[原記事]

別の公開記事「引きこもり,居酒屋でバイト」にも、教室で学び直していた17歳の生徒が、週3回働き始めた記録があります。両記事の生徒を同一人物と決めつけず、学習の場が実際の仕事の経験にもつながった記録として扱います。

提案の経緯と矢満田社長ご本人による面接は、筆者・杉浦孝宣の回想・確認に基づきます。原記事・関連する公開記事に記録された学習やアルバイトの経過とは、情報の出典を分けて紹介しています。

仕事の中で、会話と役割を経験する

挨拶をする。仕事を教わる。分からないことを尋ねる。同僚と協力する。時間を守り、任された仕事を行い、働いた対価を受け取る。私は、こうした経験を通じて、本人が社会の中に自分の役割を見いだすことを重視してきました。

全員に接客や同じ仕事を求めるわけではありません。仕事内容、教えてくれる人、勤務時間、通勤、本人の負担を確かめ、取り組める条件を考えます。

日本経済新聞・NHKで紹介された、学びの場づくり

この取り組みについて、高卒支援会の掲載記録では、日本経済新聞の2015年6月27日夕刊8面「居酒屋学舎」、NHK「おはよう日本」首都圏の2016年6月9日「セーフティネットは今 空きスペースを子どもの学びの場に」として紹介されています。

高卒支援会に掲載された報道・活動記録を見る

報道の紹介は、高卒支援会の掲載記録に基づきます。新聞記事・放送映像は転載していません。報道されたことと、支援体系全体の効果が科学的に検証されたことは、別の事柄です。

今日から保護者ができる To Do:

今夜、本人が続けている行動を三つ書き出してください。家の手伝い、約束した時間の外出、学習などで構いません。次の相談でその事実と本人の希望を共有し、職場見学や応募・面接につなぐために、誰が本人の準備と受け入れ先との調整を支えるかを決めましょう。

企業との実践で得た知見を、スタッフの実動支援へ

大倉星耶|当時の現場から、アルバイト面接・就職活動の指導へ

養老乃瀧で学びと仕事をつないでいた当時、現在JPCとして活動する大倉星耶もスタッフとして勤務していました。その後、大倉は、本人のアルバイト面接や就職活動の指導を担っています。

機会があっても、応募できない、面接で経験を話せない、働くことを続けるか迷う。そこで必要なのが、本人に合った準備と具体的な働きかけです。大倉は、求人情報を渡すだけではなく、本人の経験を整理し、次の行動へつなぐ支援に関わっています。

大倉星耶のプロフィールと面接・社会参加支援を見る

JPCは現在の肩書きです。当時から同じ資格・名称で活動していたという意味ではありません。

杉浦暢恵|生活支援と、仕事への一歩をつなぐ

杉浦暢恵も、こうした実践知を現在の支援へ生かしています。本人との関係を築き、日々の生活を支えながら、アルバイト探しや履歴書づくりなど、社会と接点を持つための行動を支えています。

杉浦暢恵のプロフィールと生活・社会参加支援を見る

創設者が企業と機会をつくり、スタッフが本人の行動につなげる。実践知を、個人の経験だけで終わらせず、支援チームで受け継いでいくことを大切にしています。

今日から保護者ができる To Do:

次回の相談までに、「求人探し」「応募」「面接」「勤務を続ける」のうち、本人がどこで困っているかを整理してください。面談では、親が担うこと、本人が行うこと、支援スタッフに依頼することを分け、最初の支援日と内容を確認しましょう。

二つの動画は、別々の事例です

動画・事例紹介する歩み見ていただきたい支援
動画1:サコウ君不登校 → 通信制高校への転校 → 大学進学 → 企業内定学び直しとアルバイトの経験を、面接指導によって就職活動につなぐ。
動画2:S君高校中退 → 1年4か月の引きこもり → 農業大学校 → JA就職外出・体験・人との接点を取り戻し、学びと仕事へ進む。

養老乃瀧で働いた生徒、サコウ君、S君を同一人物として扱いません。それぞれの実践を、学びと社会参加をつなぐ支援という観点で紹介します。

動画1|サコウ君:不登校から学び直し、面接指導を経て企業内定へ

サコウ君は、中高一貫校で不登校を経験しました。通信制高校へ環境を変えてからも、生活を整え、人と関わり、学びを続けるまでには積み重ねが必要でした。

その後、一浪を経て大学へ進学し、飲食店でのアルバイトを継続しました。大倉の助言を受けながら働き続け、就職活動では面接指導を受け、自分の経験を言葉で伝える準備をしました。

不登校 → 通信制高校での学び直し → 一浪・大学進学 → アルバイトの継続 → 面接指導 → プライム上場企業への内定

動画では、こうした経験を経て内定に至った歩みを紹介しています。「不登校だったこと」だけではなく、その後に何を経験し、何を続けたのかに注目してご覧ください。

サコウ君:不登校、通信制高校への転校、大学進学、アルバイトの経験を企業内定へつなげた記録。YouTubeで動画を見る

私たちは、企業の知名度で本人の価値を測りません。動画で紹介する到達点は「内定」です。サコウ君の詳細記事では、その後の就職も紹介しています。内定・入社・継続勤務を同じ成果として扱わず、記録した時点を分けます。

面接指導だけで結果が決まったわけでもありません。学び直し、周囲との関わり、本人が仕事を続けた経験と、伝える準備が重なった事例です。

今日から保護者ができる To Do:

本人が就職活動の準備に同意したら、今週中に「続けてきたこと」「難しかった場面」「自分で工夫したこと」を一つずつ整理してもらってください。親が模範解答を代筆するのではなく、支援者との面接練習で、本人が自分の言葉で話せるようにします。

動画2|S君:1年4か月の引きこもりから、農業大学校・JA就職へ

S君は、野球のスポーツ推薦で高校へ進学しました。しかし、長時間の通学や厳しい部活動などを背景に高校を中退し、昼夜逆転・ゲーム中心の生活になりました。引きこもっていた期間は、1年4か月、16か月です。

ご家族も将来への不安を抱えていました。支援の出発点を「今すぐ就職すること」にはしませんでした。外へ出る、体力を取り戻す、人と会うことから、次の経験へつなぎました。

外出後に体調を崩したり、アルバイトに挑戦して辞めたりしたこともあります。その後、農業体験などを通じて社会との接点と役割を取り戻し、農業大学校への進学、卒業後のJA就職へ進みました。就職活動では、大倉が面接指導に関わっています。

高校中退・16か月の引きこもり → 外出と体力づくり → 社会との接点・農業体験 → 農業大学校 → 面接への準備 → JA就職

この動画で確認していただきたいのは、仕事へ進む前に、生活と人との関わりをどのように取り戻したかという過程です。

S君:高校中退、1年4か月の引きこもりから、外出・体験・学びを経てJA就職へ進んだ記録。YouTubeで動画を見る

さらに、2026年10月5日更新のS君の支援記録では、JA就職後2年間の継続勤務と、職場での良好な人間関係を紹介しています。この追跡情報は、上の動画で紹介する就職までの経過とは分けて記載しています。

サコウ君とS君は別の事例です。二人が養老乃瀧で働いたという意味ではありません。養老乃瀧との先行実践と、その後の二人への支援を、「学びと仕事をつなぐ」という共通の支援思想から紹介しています。

今日から保護者ができる To Do:

今夜、本人の外出・体力・会話・学習の状態を、分かる範囲で確認してください。次の相談では、求人応募を急ぐ前に、第三者との面会、外出同行、見学など、本人が取り組める最初の接点を一つ決めましょう。一度の退職や不採用を、本人の将来の結論にしないことも家庭で共有してください。

お子さんには、どの段階の支援が必要でしょうか。

応募・面接の前に、生活や外出の支援が必要な場合もあります。まず現在地を整理し、家庭で行うことと、本人への実動支援を分けて考えましょう。

30分無料相談で、本人に必要な次の一歩を相談する

保護者だけでも相談できます。継続支援の内容・費用・開始日は、別途説明を受けて確認します。

養老乃瀧の実践は、7 Steps to AutonomyのSTEP 6へつながる

JADAの7 Steps to Autonomyは、先に理論をつくり、子どもたちを当てはめたものではありません。私が高卒支援会などで家庭や本人と向き合い、企業・教育機関と協働してきた実践を、後から整理・体系化したものです。

理論だけではなく、実践から生まれた自律支援モデル。
Built from Practice, Not Just Theory.

中核となる枠組みがAutonomy Stage OSで、その中で本人・家庭の現在地を整理する評価枠組みが5ステージ判定です。医学的な診断ではありません。7 Steps to Autonomyは、そこから必要な支援を実行するプロセスです。

JADA → Mission → Autonomy Stage OS(評価枠組み:5ステージ判定)→ JADA Support Philosophy → 7 Steps to Autonomy → JADA Success Hub / Evidence → Social Autonomy

STEP支援本人・家庭と具体化すること
1親コーチング&ステージ判定生活と家庭の対応を整理し、保護者の方針と役割をそろえる。
2アウトリーチ(家庭訪問)本人が相談に来られない場合も、第三者との接点をつくる。
3生活改善・環境調整(合宿・寮)起床・食事・身の回りの管理や生活環境を整える。
4学び直し支援本人に合う形で学習を再開し、進路に必要な学びを続ける。
5社会接点づくり(同行)外出や見学、人との交流などに同行し、家庭の外で経験を重ねる。
6進路・社会参加支援(進学・就職・ボランティア)アルバイト、応募、面接、進学・就職など、具体的な社会参加を支える。
7Social Autonomy(社会的自律)生活、人との関係、学び・就労が続くことを見据え、社会への貢献につなげる。

養老乃瀧との協働や、大倉による面接・就職活動の指導は、STEP 6に関わる具体的な実践です。ただし、全員が同じ順序・期間で進むわけではありません。生活改善や学び直しと就労準備を並行して行い、必要に応じて前の段階も支え直します。

支援の核心は、親へのコーチング × 本人への実動支援(Parent Coaching × Direct Support for the Young Person)です。親だけが変わればよいとも、本人だけを支援すればよいとも考えません。

今日から保護者ができる To Do:

今日、7つの支援を見ながら、「家庭だけで対応していること」と「第三者の協力が必要なこと」を分けてください。次の面談でそのメモを共有し、本人への働きかけが必要な場面と担当者を具体的に確認しましょう。

保護者が今日から行う三つのこと

1.今夜、家庭から伝える方針をそろえる

父親は「すぐ働け」、母親は「何もしなくてよい」という状態ではなく、まず何を準備するのかをそろえます。今週は生活記録をつける、第三者との面会を相談するなど、本人の意向と状態に合う目標を決めてください。一人で子育てを担っている場合は、支援者と整理します。

2.今日から3日間、生活と社会との接点を記録する

起床・就寝・食事・外出・家族との会話・学習を、分かる範囲で記録します。スマートフォン・ゲームや課金、小遣いの渡し方も、保護者が把握している事実を整理します。本人を監視したり責めたりするためではなく、必要な支援を考える資料です。

環境調整は、本人の状態と安全性を踏まえて進めます。食事や住まいを就労の条件にするような対応ではなく、保護者がそろえて実行できる生活上の基準を支援者と検討します。記録が完成するまで、相談予約を待つ必要はありません。

3.「誰が、いつ、何を支えるか」を決める

本人が動くまで待つだけでなく、支援者が会う、外出に同行する、応募の手順を確認する、面接を練習するなど、必要な行動を決めます。親が全部を代行せず、本人が自分で選び、行う部分を残します。

まだアルバイトを提案する段階であれば、本人がどう受け止め、次に何を選ぶかを確認します。「提案した」「応募した」「採用された」「働き続けている」は別の段階です。小さな前進を認めながら、その次に必要な支えを考えましょう。

今日から保護者ができる To Do:

今夜15分、保護者同士または支援者と話し、明日から記録を取る人、相談を申し込む人、本人の希望を聞く人を決めてください。次の面談で、最初の一週間に行うことと、その結果を確認する日まで決めましょう。

高校中退・不登校からのアルバイト・就職|よくある質問10問

Q1.高校を中退したら、学び直しよりも就職を急がせた方がよいですか?

すぐに就職だけを目指す必要はありません。生活、学習、働く意向を確認し、学び直しと仕事の経験をどう組み合わせるかを考えます。

JADAは「学校へ戻るか、働くか」の二者択一にしません。養老乃瀧との実践でも、学習の場とアルバイトの機会をつなぎました。希望する仕事の応募条件も確認し、「中退したから、この仕事しかない」と親が先に決めないことが大切です。

今日から保護者ができる To Do:

明日、本人の了承を得て、以前の高校へ修得単位を確認してください。学び直しを希望する候補校の条件と、関心のある求人の応募条件を整理し、次の相談で学習と仕事の組み合わせを検討しましょう。

Q2.昼夜逆転してゲームばかりです。「働きたい」と言うまで見守るしかありませんか?

待つだけにはしません。ただし、家から出られない本人を、いきなり面接へ行かせることもしません。

まず起床・食事・外出・会話などの生活を確認します。JADAでは5ステージ判定で現在地を整理し、親へのコーチングと、必要に応じた家庭訪問・外出同行を組み合わせます。ゲームを制限する話だけで終えず、家庭の外にどのような接点をつくるかまで考えます。

今日から保護者ができる To Do:

今日から3日間、起床・就寝・食事・外出を記録してください。今夜、保護者同士でゲーム・課金・小遣いの現状を共有し、変更は本人の状態と安全性を踏まえて支援者と検討しましょう。相談の申し込みは、記録の完成を待たずに行えます。

Q3.父親は「早く働け」、母親は「まず卒業」と言っています。どちらを優先すべきですか?

父母のどちらかを勝たせるのではなく、本人の生活・学び・社会参加が続く方針にそろえることを優先します。

JADAの親コーチングでは、家庭で支えること、本人に任せること、支援者に依頼することを整理します。親だけで進路を決めず、本人の希望と負担を確認したうえで、今週の行動を具体化します。

今日から保護者ができる To Do:

今夜、父母で15分話し、本人へ伝える方針を一つにそろえてください。本人にも希望と不安を尋ね、「今週は何を準備するか」と、父母それぞれの役割を決めましょう。保護者が一人の場合は、支援者と整理してください。

Q4.なぜ、養老乃瀧のような飲食店を、子どもたちの学びと仕事の場にしたのですか?

学校や教室の中だけではなく、実際の社会で人と関わり、自分の役割を持つ経験をつくりたかったからです。

養老乃瀧との取り組みでは、昼間の学習とアルバイトの機会をつなぎました。生徒の就労に向けては、私から矢満田社長へ生徒を紹介し、社長ご本人に直接面接していただきました。

本人に「働いてみなさい」と勧めたり、求人情報を渡したりするだけではありません。私自身が企業に働きかけ、本人と経営者をつなぎ、実際の面接へ進む機会をつくったのです。

挨拶をする、仕事を教わる、分からないことを尋ねる、同僚と協力する。そうした経験を学びと結びつける実践が、現在の7 Steps to AutonomyのSTEP 6「進路・社会参加支援」につながっています。当時から現在の名称で支援していたという意味ではなく、後に体系化した支援の先行実践です。

今日から保護者ができる To Do:

今夜、本人が続けている行動を三つ書き出してください。家の手伝い、約束した時間の外出、学習など、小さな行動で構いません。次の相談では、その事実と本人の希望を共有し、職場見学や応募・面接へつなぐために、誰が企業との調整や本人の準備を支えるかを具体的に決めましょう。

Q5.人と話すのが苦手な子を、接客のアルバイトに出して大丈夫ですか?

全員に接客を勧めるわけではありません。本人の意向と負担、職場で仕事を教えてもらえる体制を確認して選びます。

JADAでは、時給だけでなく、仕事内容、勤務時間、通勤、学習との両立、困ったときの相談先まで整理します。18歳未満は原則として午後10時から翌午前5時まで働けないなど、年齢・業務による制限にも注意が必要です。中学生以下の就労にも原則的な禁止と例外条件があるため、年齢を確かめずに同じ求人へ応募させません。

出典:静岡労働局「年少者にも労働基準法等が適用されます」。個別の条件は、求人先や労働相談窓口で確認してください。

今日から保護者ができる To Do:

今週、本人が検討したい求人について、「最初の仕事」「勤務終了時刻」「教えてくれる人」「困ったときの相談先」を確認しましょう。見学を希望する場合は、支援者と相談し、受け入れ先の了承を得て調整してください。

Q6.本人が応募できません。親が代わりに応募してもよいですか?

求人を一緒に探すことは支援になります。しかし、本人の了承なく応募し、面接日まで決めることは勧めません。

仕事への関心がないのか、方法が分からないのか、電話や面接に不安があるのかを分けます。大倉などの支援スタッフと、応募準備や面接練習を具体化し、本人が自分で行う部分を残しながら支えます。

今日から保護者ができる To Do:

今日、本人に「応募のどこが一番難しい?」と尋ねてください。次の相談で、本人が検討したい求人を一つ共有し、応募文の作成、連絡方法の確認、面接練習のうち、誰がどこを支えるかを決めましょう。

Q7.面接で、不登校や高校中退の経験を聞かれたら、どう答えればよいですか?

経歴をごまかさず、その後に何をしてきたかを、本人の言葉で説明できるよう準備します。無理に立派な成功物語へ変える必要はありません。

サコウ君の支援では、アルバイトを続けた経験を整理し、担当した仕事や工夫を面接で伝える練習をしました。不登校経験そのものが採用を決めるのではなく、実際の経験と現在の準備を具体的に説明します。

今日から保護者ができる To Do:

本人が同意したら、今週「これまでの経過」「その後に取り組んだこと」「応募先で生かしたいこと」を短く整理してもらいましょう。親が回答を作って暗記させず、支援者との練習で、答えにくい質問を確認してください。

Q8.不採用になったり、アルバイトを辞めたりしたら、振り出しに戻りますか?

一度の不採用や退職で、それまでの前進がすべてなくなったとは考えません。ただし、理由を確かめず同じ条件で次々に応募させることもしません。

S君にも、外出後の体調不良やアルバイトを辞める経験がありました。その後、別の体験と学びを経てJA就職へ進んでいます。JADAでは、勤務時間、通勤、仕事、人間関係などの負担を整理し、次の挑戦で変える条件を考えます。不適切な職場環境まで本人の責任にしません。

今日から保護者ができる To Do:

本人が話せるタイミングで、「できたこと」「難しかったこと」「次は変えたい条件」を聞いてください。次の応募前に支援者と振り返り、仕事内容や時間など、変更する条件を一つ以上決めましょう。

Q9.進学や内定が決まれば、社会的自律を達成したと考えてよいですか?

大きな成果ですが、それだけで社会的自律を達成したとは判断しません。本人の生活、人との関係、学び・仕事が続くことまで見据えます。

S君も、JA就職だけでなく、その後2年間の継続勤務を追跡記録として紹介しています。JADAが重視するのは、進路先の知名度よりも、本人が自分で選び、困ったときに相談し、社会の中で役割を持って生活することです。

今日から保護者ができる To Do:

進学・採用が決まったら、開始日までに本人と通学・通勤、生活費、相談先を確認してください。開始後の確認頻度も本人と相談し、親が毎日管理するのではなく、自分で相談できる相手を持てるよう支えましょう。

Q10.本人が相談を拒否しています。親だけでも支援を相談できますか?

保護者だけでも相談できます。本人が相談に来るまで、家庭が孤立したまま待ち続ける必要はありません。

ただし、本人不在の相談で進路を決めるのではありません。5ステージ判定と面談で生活・家庭の対応を整理し、本人と第三者が接点を持つ方法を考えます。すぐに面接指導へ進むのか、家庭訪問や生活改善から始めるのかを、個別に検討します。

今日から保護者ができる To Do:

今日、相談から支援開始までの流れを確認して申し込み、現在の生活、これまで試したこと、本人が話した希望を共有してください。支援開始前には、担当者、内容、期間、費用、初回実施日を確かめましょう。

相談して終わらせない|実際の支援開始へ進むために

記事や動画を見て希望を持つことは、出発点です。次に、ご家庭の現在地を整理し、保護者と支援者が、本人に必要な行動を具体化します。

1.事例と支援者を確認する

二つの動画に加え、JADA Success Hubの成功事例22選で、支援前の状態、実際に行ったこと、その後の経過をご覧ください。支援スタッフの経験と担当領域も確認できます。

2.5ステージ判定と生活記録で、現在地を整理する

5ステージ判定を参考に、生活、家族との会話、外出、学び、仕事との接点を整理します。本人を一つのラベルで決めつけるのではなく、何を支える必要があるかを考えます。

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3.面談で、親へのコーチングと本人への支援を組み合わせる

30分無料相談では、本人の状態と今後の方向性を相談します。継続支援を検討する場合は、家庭の方針整理に加え、家庭訪問、生活改善、学び直し、応募・面接のどこに支援が必要かを確かめます。

4.内容と費用を確認し、最初の支援を実施する

担当者、支援内容、期間、費用、実施方法、連絡体制を確認し、保護者の合意と本人の意向・安全性を踏まえて計画を具体化します。初回実施日と振り返り日を決め、親コーチングや本人への支援を実際に始めます。

LINE登録や相談予約は、支援への入り口です。家庭での方針整理や、本人への働きかけを実際に始め、何が変わったかを確認するところまでつなげます。就職活動の前に、親コーチングや家庭訪問から支援を始める家庭もあります。

今日から保護者ができる To Do:

今日、相談を申し込み、面談までに生活記録とこれまでの対応を用意してください。面談では「最初に誰が、いつ、何をするのか」を確認しましょう。支援を依頼する場合は、内容と費用の説明を受けてから開始日を決め、実施後に何を振り返るかも共有します。

学校復帰や内定の先に、社会的自律がある

養老乃瀧との取り組みでつくりたかったのは、「学校に通える子だけ」のための教室ではありません。学校や家庭だけでは届きにくい学びと仕事の機会を、社会の中につくることでした。

企業に協力を求め、本人を面接へつなぐ。スタッフが、その後の応募や就職活動を支える。本人が自分の経験を重ね、学び、働くことへ進んでいく。この積み重ねが、現在のJADAの支援体系につながっています。

私は「飯が食える大人にする」という言葉で、その先の暮らしまで支える責任を伝えてきました。それは、誰の助けも借りないことや、収入だけで人の価値を測ることではありません。必要な支えを使いながら、自分で考え、選び、人と関わり、役割を持って生きることです。

JADAのMission:40年・1万人超・9割解決の実績とSDGs(4・8)に基づき、自律して三大義務(教育・勤労・納税)を果たし、社会に貢献する未来を全世界で実現する。

学び、働き、納税を通じて社会へ貢献する未来を目指しながら、一人ひとりの現在地と必要な支援を見ます。不登校・引きこもりの解決と、その先のSocial Autonomy(社会的自律)は、区別して考えます。

「40年・1万人超・9割解決」は、杉浦孝宣が高卒支援会などで積み重ねてきた活動を背景とするJADAの公表実績です。JADAという法人の40年間の存続や、就職率・特定企業への内定率を示すものではなく、個々の支援結果を保証する数値でもありません。個別事例は実践の経過を示すEvidenceとして掲載しています。

現在の姿だけで、本人の将来を決めつけないでください。一方で、時間がすべてを解決するものとして、家庭だけで抱え込まないでください。

親へのコーチングと、本人への実動支援。まずは、ご家庭に必要な最初の一歩を一緒に具体化しましょう。

親が諦めない限り、JADAも諦めません。

今日から保護者ができる To Do:

この記事を一緒に支える保護者や家族と共有し、今日行うことを一つ決めてください。方針を話し合う、生活を記録する、相談を申し込む。その一歩を、実際の支援へつなげましょう。

この記事の記録・出典

[原記事]杉浦孝宣「高校中退 就職」、2016年1月21日公開(本ページの旧稿)。養老乃瀧本社3階での学習と、高校卒業を目指しながら働く18歳の生徒の会話を記録。初回公開日は維持し、今回の再構成とは分けて管理します。

[筆者の回想・確認]養老乃瀧への提案の経緯、約10分の面談、生徒を矢満田社長へ紹介して社長ご本人に直接面接していただいたこと、当時のスタッフとの関わりは、杉浦孝宣本人の説明に基づきます。企業側の独立した効果検証を意味するものではありません。

[関連する活動記録]高卒支援会「引きこもり,居酒屋でバイト」。本記事では、学び直しと週3回のアルバイトの記録を参照しています。原記事の18歳の生徒との同一性は確定していません。

[報道の掲載記録]高卒支援会「マスコミ向け記者会見・掲載記録」、JADA「著書・メディア出演」。新聞記事全文やNHK放送映像の転載ではなく、掲載・放送の記録を紹介しています。

[本人の歩み・追跡情報]JADA「サコウ君の再出発」、「S君の再出発」。動画の紹介範囲と、記事によるその後の情報を分けて掲載しています。事例の紹介は結果の保証ではありません。

[労働条件]静岡労働局「年少者にも労働基準法等が適用されます」。就労条件は本人の年齢・業務・勤務時間に応じて確認します。

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杉浦 孝宣
杉浦孝宣(すぎうら・たかのぶ)は、一般社団法人未来自律支援機構(JADA)代表理事、認定NPO法人高卒支援会創業者。自身も小学3年生で不登校を経験し、その体験を原点に40年以上にわたり不登校・高校中退・引きこもり支援に携わってきた。 これまで1万人以上の相談に対応し、家庭訪問、生活改善合宿、学生寮、学び直し支援、就労支援などを通じて、多くの若者のSocial Autonomy(社会的自律)を支援している。 「子どもは必ず変われる」を信念に、学校復帰だけをゴールとせず、一人ひとりが自ら考え、行動し、社会に参加していくSocial Autonomyを目指した支援を実践している。 著書に『不登校・ひきこもりの9割は治せる』『高校中退 不登校でも引きこもりでもやり直せる』『もう悩まない!不登校・ひきこもりの9割は解決できる』など。近年は一般社団法人未来自律支援機構(JADA)を通じて、Autonomy Stage OSと7 Steps to Autonomyを体系化し、国内外へ発信している。台湾版著書も出版され、教育・福祉・行政・企業・国際社会との連携を通じて、若者のSocial Autonomyを実現する支援モデルの普及に取り組んでいる。
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