「お風呂に入らない」中1男子が自衛隊員になるまで|7か月引きこもったカイト君の再出発

「中学生の息子が、お風呂に入らなくなりました」

「歯も磨かない。髪も伸びっぱなし。昼夜逆転して、一日中ゲームをしています」

「何を言っても部屋から出てきません。親として、どうしたらいいのでしょうか?」

不登校から引きこもりが深くなっているご家庭から、このような相談を受けます。

親御さんは、まず「お風呂くらい入ってほしい」と思います。

しかし、私たちが見るのは、お風呂だけではありません。

朝起きているか。
食事を取っているか。
歯を磨いているか。
昼夜逆転していないか。
昼間に外へ出ているか。
家族と話しているか。
学校へ行っているか。
ゲーム以外の時間があるか。
家族以外の人と会っているか。

こうした生活全体を見ます。

お風呂に入らない、歯を磨かない、昼夜逆転している、ゲームだけで一日が終わる、部屋からほとんど出ない、家族とも顔を合わせない。

こうした状態が重なっているなら、単なる「思春期だから」「学校へ行きたくないだけ」と考え、見守り続ける段階ではない場合があります。

JADAでは、このような状態を5段階で整理しています。 生活が大きく崩れ、本人が自分だけでは動けなくなっている場合には、Stage 3以上の引きこもりとして、家庭の対応を変えるだけではなく、第三者が本人へ直接働きかけることを検討します。

実際に私たちが支援したカイト君も、中学1年生で不登校になり、その後、引きこもりが深くなりました。

昼夜逆転。
ゲーム中心の生活。
お風呂に入らない。
歯を磨かない。
髪も伸びたまま。
家族との関係も悪化していきました。

しかし、カイト君の人生はそこで止まりませんでした。

JADAでは、ご両親への働きかけと、カイト君本人への働きかけを同時に始めました。

一般社団法人未来自律支援機構(JADA:Japan Autonomous Development Association)代表理事の杉浦孝宣(Takanobu Sugiura)です。

この記事では、カイト君に実際にどのような支援を行い、お風呂にも入らず部屋に引きこもっていた中学生が、どのように生活を立て直し、学び直し、アルバイトを経験し、最終的に自衛隊員として社会へ出たのかを具体的にお伝えします。

そして、今まさに同じような状態で悩んでいる保護者の方に、今日から何を確認し、何を変え、どの段階から第三者を入れるべきなのかをお伝えします。

目次

お風呂に入らないことだけが問題ではありません

子どもがお風呂に入らなくなると、親御さんは「とにかくお風呂に入れなければ」と考えます。

しかし、お風呂だけを見ても解決しません。

確認してほしいのは、生活全体です。

  • 朝、決まった時間に起きているか
  • 食事を取っているか
  • 歯を磨いているか
  • 着替えているか
  • 昼間に外へ出ているか
  • 家族と話しているか
  • 学校との接点があるか
  • 家族以外の人と会っているか
  • ゲームや動画だけで一日が終わっていないか

お風呂に入らないことは、生活全体と社会との接点が崩れていることを示す一つのサインである場合があります。

今のお子さんがどの段階なのか確認してください

家庭で対応を整えながら改善を目指せる状態なのか。それとも第三者が本人へ働きかける必要がある状態なのか。まず現在地を確認することが重要です。

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規則正しい生活が、不登校・引きこもり解決の一丁目一番です

JADAでは、規則正しい生活が、不登校・引きこもり解決の一丁目一番だと考えています。

昼夜逆転したまま、学校、学び直し、アルバイト、社会参加だけを進めようとしても、なかなか長続きしません。

まず生活を整えることです。

朝、決まった時間に起きる。
食事を取る。
顔を洗う。
歯を磨く。
着替える。
昼間に外へ出る。
身体を動かす。
夜は決まった時間に休む。

こうした当たり前の生活を、一つずつ取り戻していきます。

そのため、JADAでは朝は継続して起こすことを基本としています。

ただし、毎朝怒鳴る、暴力を使う、親子げんかを繰り返すという意味ではありません。

また、「朝起きなさい」と言うだけでも不十分です。

起きた後に何をするのかをつくります。

外へ出る予定を入れる。
第三者と会う約束をする。
学び直しをする。
本人の状態が整ってきたら、アルバイトなど社会との接点をつくる。

本人だけでは生活を変えられない場合には、家庭訪問、生活改善合宿、学生寮なども本人の状態に応じて検討します。

カイト君への最初の家庭訪問は「一人漫才」から始まりました

カイト君本人へのアウトリーチ、つまり家庭訪問を担当したのが、当機構の中級JPC(JADA公認 自律支援ペアレンツコーチ) 大倉星耶です。

大倉自身も不登校・引きこもりを経験し、その後、大学進学、小学校教員を経て、現在はJADAの支援スタッフとして家庭訪問などのアウトリーチに取り組んでいます。

最初の家庭訪問は、本人と向かい合って話せるような状態ではありませんでした。

カイト君は、自分の部屋に鍵をかけて出てきません。

大倉は、鍵のかかった部屋のドアの前から、一人で話しかけ続けました。

返事はない。
それでも話しかける。

まさに「一人漫才」のような状態から、家庭訪問は始まりました。

その後も訪問を続ける中で、カイト君からエアガンで撃たれることもありました。

それでも、大倉は本人との接点を切りませんでした。

無理やり説得するのではなく、訪問を重ね、声をかけ続ける。

そして少しずつ関係をつくり、ようやくカイト君と手紙のやり取りができるようになりました。

これが、カイト君が再び家族以外の人とつながる最初の一歩でした。

本人への家庭訪問と同時に、ご両親の考え方をそろえました

本人への家庭訪問と同時並行で、私・杉浦孝宣はご両親との直接面談を重ねました。

こちらも簡単ではありませんでした。

ご両親の考え方が違っていたからです。

お母さんは、

「せっかく入った中高一貫校なのだから、何とか復学させたい」

と考えていました。

一方、お父さんは、

「もう中高一貫校でなくてもいい。本人の好きなようにさせればいい」

という考えでした。

私はご両親に伝えました。

「今は復学を考えている段階ではありません。まず、この引きこもり状態を解決しましょう」

中高一貫校へ戻すのか。別の学校へ行くのか。それは、その後に考えればいい。

まず朝起きる。
お風呂に入る。
歯を磨く。
部屋から出る。
家族以外の人と話す。
外へ出る。

生活そのものを動かさなければ、学校の話をしても前には進みません。

そこで、ご両親には「どの学校へ行かせるか」より先に、「今の引きこもり状態からどう抜け出すか」という目標に考え方をそろえてもらいました。

アツヤ君によるピアサポートを加えました

大倉による家庭訪問を続ける途中から、「ウッチー」ことアツヤ君もピアサポートとして加わりました。

アツヤ君自身も、不登校・引きこもりを経験し、そこから再出発した若者です。現在は有名ファッションメゾンに就職し、社会人として働いています。

カイト君にとってアツヤ君は、親でも先生でもない、自分と似た経験をした少し先を歩く先輩でした。

大人から言われても届かなかったことが、自分と似た経験をした年齢の近い先輩との関係から動き出すことがあります。

大倉による継続的なアウトリーチに、アツヤ君によるピアサポートを加え、家族以外との接点を少しずつ広げていきました。

アツヤ君自身の再出発も、JADA Success Hub「22の成功事例」で紹介しています。

アツヤ君を含む「不登校・引きこもり22の成功事例」を見る

信頼関係をつくるだけでなく、生活環境も変えました

第三者と話せるようになっただけでは、引きこもりの解決にはなりません。

カイト君の部屋には鍵がかかり、生活環境そのものが引きこもりを固定する状態になっていました。

そこで、ご両親と方針を確認したうえで、本人にも事前に伝え、鍵屋を呼び、部屋を開けられる状態にしました。

これは「引きこもっている子の部屋の鍵は壊せばよい」という一般的な方法ではありません。

カイト君の状態、家庭状況、それまでの支援経過を踏まえ、事前に本人へ通告したうえで行った個別の支援です。

その後、大倉とアツヤ君も一緒になって、カイト君の部屋を掃除しました。

そして、生活改善を具体的に進めました。

最初から「毎日完璧な生活をしなさい」と求めたわけではありません。

まず部屋を片づける。
週に数回でもシャワーを浴びる。
部屋から出る。
人と顔を合わせる。

一つずつ、実際の行動を変えていきました。

「お風呂に入りなさい」と親が何度言っても動かなかった状態に対して、言葉だけで説得を続けるのではなく、生活そのものを動かしていったのです。

カイト君の支援は「親へのコーチング × 本人への実動支援」でした

カイト君の支援で重要だったのは、本人への家庭訪問だけではありません。

本人には大倉が継続して家庭訪問する。途中からアツヤ君がピアサポートとして加わる。生活環境へ働きかけ、部屋を掃除し、週に数回シャワーを浴びるところから生活を立て直す。

その一方で、私・杉浦孝宣は、ご両親との面談を続けました。

親にはコーチングを行う。
本人には直接働きかける。

この二つを同時並行で進めたのが、カイト君への支援です。

JADAでは、この支援の基本を、

親へのコーチング × 子ども・若者本人への実動支援

Parent Coaching × Direct Support for the Young Person

としています。

親だけが変われば解決するとは考えません。

本人だけを支援しても、家庭の方針や生活環境が変わらなければ、再び元の状態へ戻る可能性があります。

だからこそ、家庭と本人の両方へ働きかけます。

JADA Support Philosophy|親へのコーチング × 本人への実動支援を詳しく見る

本人が相談を拒否していても、保護者から始められます

本人が「相談したくない」「誰にも会いたくない」と言っていても、親御さんまで何もできないわけではありません。

まず保護者から現在の状態を整理し、家庭で何を変えるのか、本人へ誰がどう働きかけるのかを考えます。

本人が相談場所へ来られない場合には、「本人がその気になるまで待つ」だけではなく、本人の状態に応じて家庭訪問などのアウトリーチを検討します。

カイト君の場合も、まずご両親の考え方をそろえることと、大倉による本人への家庭訪問を同時並行で始めました。

親にはコーチングを行う。
本人には直接働きかける。

JADAでは、この両方が必要だと考えています。

本人が「相談したくない」「誰にも会いたくない」と言っていても、保護者まで何もできないわけではありません。

まず保護者が動き、家庭の環境を整え、本人との接点をつくる方法を考えることから支援は始められます。

30分無料相談はこちら

学校へ通い始めても、親へのコーチングを続けました

家庭訪問、ピアサポート、生活環境への働きかけを重ね、カイト君は少しずつ生活を取り戻していきました。

その後、カイト君は、私・杉浦孝宣が創業したフリースクールへ通うようになり、さらに通信制高校サポート校へ進みました。

しかし、「学校へ通えるようになったから解決」として、そこで支援を終えたわけではありません。

本人がフリースクール、そして通信制高校サポート校へ通っている間も、ご両親へのコーチングを継続しました。

当時、月に1回、保護者会を開催していました。

カイト君のお母さんは、その保護者会にほぼ毎回参加していました。

そこで私・杉浦孝宣が、

最近の生活はどうなっているか。
朝は起きているか。
学校には継続して通えているか。
家庭ではどのような会話をしているか。
親はどこまで関わるのか。
どこから本人に任せるのか。

といった状況を確認しながら、継続してコーチングを行いました。

一度外へ出た。
学校へ通い始めた。
通信制高校へ進んだ。

それだけで「もう大丈夫」とは考えません。

生活が再び崩れないか。
学校との関係を維持できているか。
家庭での親子関係が元の状態へ戻っていないか。
本人が少しずつ自分で判断し、自分で行動できるようになっているか。

その経過を見ながら、親へのコーチングを続けました。

「アルバイトをやる」と言うだけで、なかなか動かなかったカイト君

通信制高校サポート校へ通うようになってから、私・杉浦孝宣をはじめ、スタッフはカイト君にアルバイトをするよう促しました。

JADAでは、学校へ通えるようになっただけで「解決」とは考えません。

学校の外でも人と関わり、決められた時間に働き、自分でお金を稼ぐという社会経験が重要だからです。

ところが、最初のカイト君は、

「やる、やる」

と言うだけでした。

実際には、アルバイトの面接に申し込もうとしませんでした。

ここで私たちは、「本人がその気になるまで待ちましょう」とはしませんでした。

スタッフが応募という具体的な行動まで強く促し、実際にアルバイトの面接を受けるところまで本人を動かしました。

しかし、ここからも簡単ではありませんでした。

アルバイトへ応募しても、不採用が続きました。

1回落ちる。
次を受ける。
また落ちる。
それでも、また応募する。

13回、不採用になりました。

それでも、本人もスタッフもそこで諦めませんでした。

そして14回目、ようやくマクドナルドのアルバイトに採用されました。

ここからカイト君は、学校へ通うだけではなく、「働く」という社会経験を積むようになりました。

決められた時間に起きる。
身支度をする。
時間までに職場へ行く。
挨拶をする。
上司や同僚と関わる。
仕事を任される。
嫌なことがあっても次の勤務日にまた出勤する。
そして、自分で働いてお金を稼ぐ。

中学1年生のころ、お風呂にも入らず、歯も磨かず、部屋に引きこもっていたカイト君にとって、これは大きな変化でした。

アルバイト経験が、自衛隊の採用面接にもつながりました

JADAがアルバイトを重視する理由は、単にお金を稼がせるためではありません。

アルバイトは、社会へ出るための実践的なトレーニングになります。

そして、この経験は高校卒業後の進路にもつながりました。

カイト君は最終的に自衛隊を受験しました。

そのとき本人には、「不登校だった」という過去だけではなく、

「その後、学校へ通い、アルバイトを続けてきた」

という具体的な行動実績がありました。

最終面接でも、アルバイトを続けてきた経験を、自分自身の実績としてアピールすることができました。

私たちの支援経験では、このような継続したアルバイト経験は、就職の面接でも大きな強みになります。

不登校だった過去を消す必要はありません。

大切なのは、その後に何をしたかです。

部屋から出た。
学校へ通った。
13回不採用になっても応募した。
14回目でアルバイトを始めた。
働き続けた。
そして、自衛隊へ進んだ。

こうした一つひとつの行動実績を積み重ねることが、JADAが考える進路・社会参加支援です。

カイト君は自衛隊員として社会へ出ました

中学1年生で不登校になり、部屋に引きこもり、お風呂にも入らず、歯も磨かず、昼夜逆転し、ゲーム中心の生活になっていたカイト君。

支援は、いきなり学校へ戻すところから始めたのではありません。

まず家族以外の人との接点をつくる。
大倉が家庭訪問を続ける。
手紙でやり取りする。
アツヤ君によるピアサポートを加える。
部屋の環境を変える。
部屋を掃除する。
週に数回シャワーを浴びる。
生活を整える。
外へ出る。
フリースクールへ通う。
通信制高校サポート校へ進む。
アルバイトへ挑戦する。
13回不採用になっても諦めない。
14回目で採用され、働く経験を積む。
その間も、ご両親へのコーチングを続ける。

こうした一つひとつの行動を積み重ね、最終的にカイト君は高校を卒業し、自衛隊員として社会へ出ました。

大切なのは、「お風呂に入れるようになったから解決した」のではないということです。

生活を立て直し、人とつながり、学び、働き、自分の進路を選べるところまで進んだ。

それがカイト君の再出発です。

カイト君の支援を7つのステップで見る

JADAでは、不登校・引きこもりから社会的自律へ進む具体的な支援工程を「7 Steps to Autonomy」として体系化しています。

STEP 1 親コーチング&ステージ判定

杉浦孝宣がご両親と面談し、「中高一貫校へ復学させたい」というお母さんと、「本人の自由にさせたい」というお父さんの考え方を整理しました。

そして、「今は復学より先に、引きこもり状態を解決する」という目標を共有しました。

STEP 2 アウトリーチ(家庭訪問)

大倉星耶が家庭訪問を開始しました。

最初は鍵のかかったドア越しの「一人漫才」のような声かけから始まり、訪問を継続して手紙のやり取りへつなげました。

STEP 3 生活改善・環境調整(合宿・寮)

カイト君の場合は、アツヤ君によるピアサポートを加え、家族以外との接点を広げました。

さらに、事前通告のうえで鍵屋を呼び、部屋を開けられる状態にし、大倉・アツヤ君と一緒に部屋を掃除しました。

週に数回シャワーを浴びるところから、具体的な生活改善を進めました。

JADAでは本人の状態に応じて、生活改善合宿や学生寮など、環境そのものを変える支援も検討します。

STEP 4 学び直し支援

生活が動き始めた後、カイト君は私・杉浦孝宣が創業したフリースクールへ通い、学び直しを進めました。

STEP 5 社会接点づくり(同行)

大倉、アツヤ君、フリースクールの仲間など、家族以外の人との関係を少しずつ広げました。

家庭の中だけで完結していた生活から、外の社会へ接点を広げていきました。

STEP 6 進路・社会参加支援|13回不採用でも諦めず、14回目でアルバイトへ

カイト君は通信制高校サポート校へ通うようになりました。

しかし、JADAでは「学校へ通えるようになったから支援終了」とは考えません。

私・杉浦孝宣をはじめスタッフが、社会経験としてアルバイトをするよう促しました。

最初は「やる、やる」と言うだけで、本人は面接の申込みをしませんでした。

そこでスタッフが応募という具体的な行動まで強く促しました。

その後、13回不採用になっても挑戦を続け、14回目でマクドナルドのアルバイトに採用されました。

働く経験を積み、最終的には自衛隊の採用面接でもアルバイト経験を具体的な行動実績としてアピールできました。

この間も、月1回の保護者会を通じて、ご家庭へのコーチングを継続しました。

STEP 7 Social Autonomy(社会的自律)

高校卒業後、カイト君は自衛隊員として社会へ出ました。

学校へ戻ることだけをゴールにせず、生活を整え、人とつながり、学び、働くところまで進む。

これがJADAの目指すSocial Autonomy(社会的自律)です。

自律へ進む7つの支援ステップを詳しく見る

中学生がお風呂に入らない・引きこもっているときのよくある質問

Q1.中学生の子どもがお風呂に入りません。無理に入れた方がいいですか?

「お風呂に入りなさい」と何度も言い続けるだけでは、改善しないことがあります。

まず、お風呂だけを見るのではなく、生活全体を確認してください。

朝起きているか。
食事を取っているか。
歯を磨いているか。
昼夜逆転していないか。
一日中ゲームをしていないか。
部屋から出ているか。
家族と話しているか。
学校や家族以外の人との接点があるか。

お風呂に入らないことに加えて、歯を磨かない、昼夜逆転、ゲーム中心、外出しない、家族とも話さないという状態が重なっている場合は、「お風呂の問題」ではなく、生活全体が崩れている可能性があります。

カイト君の場合も、お風呂だけを直そうとはしませんでした。

第三者との接点をつくり、部屋の環境を変え、掃除をし、週に数回シャワーを浴びるところから生活を動かしていきました。

Q2.お風呂に入らない、歯を磨かない状態は、引きこもりなのでしょうか?

それだけで引きこもりと決めることはできません。

しかし、

  • 学校へ行かない
  • 昼夜逆転している
  • ゲーム中心の生活になっている
  • お風呂に入らない
  • 歯を磨かない
  • 部屋からほとんど出ない
  • 家族以外と会わない
  • 親子の会話がほとんどない

という状態が重なっている場合は注意が必要です。

JADAでは、本人と家庭の状態を5段階で整理しています。

カイト君のように、生活が大きく崩れ、本人が自分だけでは外へ出られなくなっている状態は、Stage 3以上として、家庭内の対応だけでなく第三者による実動支援を検討します。

不登校・引きこもりの5ステージ判定について詳しく見る

Q3.昼夜逆転しています。朝は起こした方がいいですか?

はい。

JADAでは、規則正しい生活が、不登校・引きこもり解決の一丁目一番だと考えています。

昼夜逆転したまま、学校、学び直し、アルバイト、社会参加だけを進めようとしても、なかなか長続きしません。

まず生活を整えることです。

朝、決まった時間に起きる。
食事を取る。
顔を洗う。
歯を磨く。
着替える。
昼間に外へ出る。
身体を動かす。
夜は決まった時間に休む。

そのため、JADAでは朝は継続して起こすことを基本としています。

ただし、毎朝怒鳴る、暴力を使う、親子げんかを繰り返すという意味ではありません。

「朝起きなさい」と言うだけでも不十分です。

起きた後に外へ出る予定を入れる。第三者と会う。学び直す。本人の状態が整ってきたらアルバイトなど社会との接点をつくる。

規則正しい生活を、その後の行動につなげていくことが重要です。

Q4.一日中ゲームをしています。ゲーム機やスマートフォンを取り上げるべきですか?

ゲームを取り上げることだけを目的にはしません。

重要なのは、「ゲームをやめさせること」ではなく、「ゲーム以外の現実の生活をつくること」です。

父母でゲーム、スマートフォン、課金、小遣い、就寝時間などの家庭の基準をそろえます。

そのうえで、外へ出る、人と会う、運動する、学ぶ、本人の状態が整ってきたらアルバイトなどの社会経験をする時間を増やします。

本人だけでは動けない場合には、第三者との約束や家庭訪問など、家庭外からの働きかけを検討します。

Q5.食事を部屋の前に置いています。このまま続けていいのでしょうか?

本人の安全や栄養状態を確認することは必要です。

一方で、「本人が部屋から出なくても生活のすべてが部屋の中で完結する状態」を長期間固定しないことも重要です。

食事を置く。洗濯物を回収する。必要な物を買ってくる。ゲームやスマートフォンを自由に使える。小遣いも渡す。

本人が一歩も部屋から出なくても生活できる環境になっている場合は、家庭環境そのものを見直す必要があります。

ただし、突然すべてを止めればよいという意味ではありません。

本人の状態を確認しながら、父母で方針をそろえ、どこまで親が世話をするのか、本人に何を自分でやってもらうのかを決めます。

Q6.本人が家庭訪問を拒否しています。それでも訪問するのですか?

本人が最初から歓迎してくれるケースばかりではありません。

カイト君も、最初の家庭訪問では部屋に鍵をかけて出てきませんでした。

大倉星耶は、鍵のかかったドアの前から一人で話しかけ続けました。

返事がなくても訪問を続け、時にはカイト君からエアガンで撃たれることもありました。

それでも接点を切らず、やがて手紙のやり取りができるようになりました。

JADAでは「本人が相談室へ来ないから支援できない」とは考えません。

ただし、本人の状態、家庭状況、安全性などを確認したうえで、家庭訪問が適切かどうかを個別に判断します。

Q7.同年代の若者が関わるピアサポートには意味がありますか?

カイト君の場合には、大きな意味がありました。

大倉による家庭訪問を続ける途中から、「ウッチー」ことアツヤ君がピアサポートとして加わりました。

アツヤ君自身も不登校・引きこもりを経験し、そこから再出発した若者です。現在は有名ファッションメゾンに就職し、社会人として働いています。

カイト君にとってアツヤ君は、先生でも親でもない、自分と似た経験をした少し先を歩く先輩でした。

大人から言われても届かなかったことが、年齢の近い先輩との関係から動き出すことがあります。

アツヤ君を含む「不登校・引きこもり22の成功事例」を見る

Q8.部屋に鍵をかけて出てきません。親が鍵を壊してもいいのでしょうか?

「引きこもっているなら鍵を壊せばよい」という一般的な方法ではありません。

カイト君の場合は、本人と家庭の状態を見ながら支援を続けたうえで、事前に本人へ通告し、鍵屋を呼んで部屋を開けられる状態にしました。

その後、大倉とアツヤ君も一緒に部屋の掃除を行い、週に数回シャワーを浴びるなど、具体的な生活改善につなげました。

重要なのは「鍵を壊すこと」そのものではありません。

生活を閉ざしている環境をどう変え、本人を次の行動へつなげるかです。

家庭ごとに本人の状態や親子関係は異なります。カイト君への対応を、そのまま他の家庭で行えばよいという意味ではありません。

特に、家庭内暴力、自傷行為、具体的な自殺の計画、刃物の使用など、本人や家族の安全に関わる状態がある場合は、安全確保を最優先し、必要に応じて110番・119番、医療機関、警察、児童相談所などへ連絡してください。

Q9.学校へ復学させることを最優先にした方がいいですか?

本人の状態によります。

カイト君のお母さんは「せっかく入った中高一貫校だから復学させたい」と考えていました。

一方、お父さんは「中高一貫校でなくても、本人の好きなようにさせればいい」という考えでした。

私はご両親との面談で、

「今は復学を考えている段階ではありません。まず、この引きこもり状態を解決しましょう」

と伝えました。

学校へ戻すことより先に、朝起きる、お風呂に入る、歯を磨く、部屋から出る、人と話す、外へ出るという生活を取り戻す必要があったからです。

その後、カイト君は私・杉浦孝宣が創業したフリースクールへ通い、さらに通信制高校サポート校へ進みました。

「元の学校へ戻すこと」だけを解決と考えないことが重要です。

Q10.学校へ通えるようになったら、親への支援は終わりですか?

終わりではありません。

カイト君がフリースクール、そして通信制高校サポート校へ通うようになった後も、保護者へのコーチングを継続しました。

当時、月に1回、保護者会を開催しており、カイト君のお母さんはほぼ毎回参加していました。

そこで私・杉浦孝宣が、

最近の生活はどうか。
朝は起きているか。
学校へ継続して通えているか。
家庭でどのような会話をしているか。
親はどこまで関わるのか。
どこから本人へ任せるのか。

などを確認しながら、継続してコーチングしました。

一度学校へ行けたからといって「もう大丈夫」とは考えません。

本人の生活が安定し、自分で判断し、自分で行動し、次の進路や社会参加へ進めるところまで見ていきます。

Q11.「アルバイトをやる」と言うだけで、本人が応募しません。どうすればいいですか?

言葉だけで「本人の意思を尊重して待つ」のではなく、実際に行動しているかを見ることが重要です。

カイト君も最初は、

「やる、やる」

と言っていました。

しかし、実際にはアルバイトの面接へ申し込もうとしませんでした。

そこでスタッフが、応募という具体的な行動まで強く促しました。

ところが、応募すればすぐ採用されたわけではありません。

13回、不採用になりました。

それでも、そこで終わらせませんでした。

次を受ける。
また不採用になる。
また次へ申し込む。

そして14回目で、マクドナルドのアルバイトに採用されました。

大切なのは「アルバイトをしなさい」と言うことではなく、応募する、面接へ行く、不採用でも再挑戦する、採用されたら継続して働く、という実際の行動へつなげることです。

もちろん、部屋からほとんど出られない状態の本人に、いきなりアルバイトを求めるわけではありません。

まず生活を整え、外へ出て、人と接するところから始めます。

本人の現在地に応じて、次に必要な行動を具体化することが重要です。

Q12.JADAでは、お風呂にも入らない中学生を具体的にどう支援するのですか?

全員に同じ方法を当てはめるわけではありません。

まず本人と家庭の現在の状態を確認し、その状態に応じて必要な支援を組み合わせます。

カイト君の場合は、

杉浦孝宣によるご両親との面談
↓
父母の方針をそろえる
↓
大倉星耶による家庭訪問
↓
鍵のかかったドア越しの声かけ
↓
手紙によるやり取り
↓
アツヤ君によるピアサポート
↓
生活環境への働きかけ
↓
事前通告のうえで鍵屋を呼ぶ
↓
大倉・アツヤ君と部屋を掃除
↓
週に数回シャワーを浴びる
↓
外へ出る
↓
フリースクールへ通う
↓
通信制高校サポート校へ通う
↓
その間も月1回の保護者会で親コーチングを継続
↓
アルバイトを促す
↓
13回の不採用
↓
14回目でマクドナルドのアルバイトに採用
↓
働く経験を積む
↓
高校卒業
↓
自衛隊の採用面接でアルバイト経験をアピール
↓
自衛隊員として社会参加

という長い支援プロセスでした。

JADAの支援は「相談して気持ちを聞く」だけではありません。

親へのコーチングと、本人への具体的な実動支援を同時に行います。

この支援哲学を、

親へのコーチング × 子ども・若者本人への実動支援

Parent Coaching × Direct Support for the Young Person

としています。

本人と家庭の現在地を整理する仕組みがAutonomy Stage OS、その中の5段階による評価が5-Stage Assessmentです。

そして、家庭訪問、生活改善、学び直し、社会接点づくり、進学・就職までの支援工程を7 Steps to Autonomyとして体系化しています。

JADA Support Philosophy|親へのコーチング × 本人への実動支援を詳しく見る

7 Steps to Autonomy|自律へ進む7つの支援ステップを見る

最終目標は、

「お風呂に入れるようになった」

でも、

「学校へ戻った」

でもありません。

本人が生活を整え、人とつながり、学び、働き、社会の一員として自分の人生を歩める状態です。

JADAでは、それをSocial Autonomy(社会的自律)と呼んでいます。

まとめ|お風呂に入らないことを、生活全体からのサインとして見る

中学生がお風呂に入らなくなったとき、「お風呂に入りなさい」と言い続けるだけでは解決しないことがあります。

大切なのは、その子の生活全体を見ることです。

朝起きているか。
食事を取っているか。
歯を磨いているか。
昼間に外へ出ているか。
ゲーム以外の時間があるか。
家族以外の人とつながっているか。

JADAでは、規則正しい生活が、不登校・引きこもり解決の一丁目一番だと考えています。

しかし、本人だけでは生活を立て直せない段階になったら、家庭の中だけで解決しようとしません。

父母の方針をそろえる。
第三者が本人へ会いに行く。
ピアサポートを入れる。
生活環境を変える。
外へ出る。
学び直す。
アルバイトなど社会との接点をつくる。
進学・就職へつなげる。

一つずつ、本人が実際に行動できる状態をつくっていきます。

カイト君も、中学1年生で部屋に引きこもり、お風呂にも入らず、歯も磨かず、昼夜逆転し、ゲーム中心の生活になりました。

それでも、そこで人生が終わったわけではありません。

大倉星耶によるアウトリーチ、アツヤ君によるピアサポート、生活環境への働きかけ、フリースクール・通信制高校サポート校での学び、アルバイト、そしてご両親への継続的なコーチングを積み重ねました。

アルバイトでは13回不採用になりました。

それでも諦めず、14回目でマクドナルドに採用され、働く経験を積みました。

そして、そのアルバイト経験を自衛隊の採用面接でも自分自身の行動実績としてアピールし、最終的に自衛隊員として社会へ出ました。

不登校だった過去を消す必要はありません。

大切なのは、その後に何をしたかです。

生活を立て直した。
家から出た。
人とつながった。
学び直した。
13回不採用になっても挑戦した。
アルバイトを続けた。
そして、働くところまで進んだ。

これが、カイト君の再出発です。

親が諦めない限り、JADAも諦めません。

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カイト君、アツヤ君をはじめ、不登校・高校中退・引きこもりから、大学進学、アルバイト、公務員、自衛隊、JA、企業への就職などへ進んだ若者たちを紹介しています。

成功事例は単なる体験談ではありません。

「どのような状態だったのか」「親へどう働きかけたのか」「本人へ何をしたのか」「どこで行動が変わったのか」「その後どう社会へ進んだのか」を示す、JADAの実践のEvidenceです。

JADA Success Hub|不登校・引きこもりから再出発した22の成功事例

JADAの支援モデルを詳しく知りたい方へ

不登校・引きこもりの現在地を確認する|Autonomy Stage OS・5-Stage Assessment

JADA Support Philosophy|親へのコーチング × 本人への実動支援

7 Steps to Autonomy|自律へ進む7つの支援ステップ

JADA Success Hub|22の成功事例

代表理事 杉浦孝宣(Takanobu Sugiura)プロフィール

中級JPC 大倉星耶プロフィール

JADAの海外発信

JADAは、日本で40年以上積み重ねてきた不登校・高校中退・引きこもり支援の実践知を海外にも発信しています。

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JADA Support Philosophy|英語版

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杉浦 孝宣
杉浦孝宣(すぎうら・たかのぶ)は、一般社団法人未来自律支援機構(JADA)代表理事、認定NPO法人高卒支援会創業者。自身も小学3年生で不登校を経験し、その体験を原点に40年以上にわたり不登校・高校中退・引きこもり支援に携わってきた。 これまで1万人以上の相談に対応し、家庭訪問、生活改善合宿、学生寮、学び直し支援、就労支援などを通じて、多くの若者のSocial Autonomy(社会的自律)を支援している。 「子どもは必ず変われる」を信念に、学校復帰だけをゴールとせず、一人ひとりが自ら考え、行動し、社会に参加していくSocial Autonomyを目指した支援を実践している。 著書に『不登校・ひきこもりの9割は治せる』『高校中退 不登校でも引きこもりでもやり直せる』『もう悩まない!不登校・ひきこもりの9割は解決できる』など。近年は一般社団法人未来自律支援機構(JADA)を通じて、Autonomy Stage OSと7 Steps to Autonomyを体系化し、国内外へ発信している。台湾版著書も出版され、教育・福祉・行政・企業・国際社会との連携を通じて、若者のSocial Autonomyを実現する支援モデルの普及に取り組んでいる。
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