引きこもりの子への親の対応|明日から変える5つの行動と支援の進め方

「何を言っても返事がない」「学校を変えても通えない」「見守ってきたけれど、生活が変わらない」。引きこもりのお子さんを前に、親として何をすればよいのか分からなくなっていませんか。

親の対応は、「何もせず待つ」か「厳しく動かす」かの二択ではありません。家庭での関わり方を整えることと、本人が人に会い、外へ出て、経験できる支援を組み合わせることが大切です。

一般社団法人未来自律支援機構(JADA:Japan Autonomous Development Association)代表理事、認定NPO法人高卒支援会の創業者・会長、杉浦孝宣です。私は40年以上、不登校・高校中退・引きこもりの本人と家庭を支援してきました。

1万人を超える支援の蓄積から、JADAが大切にしているのは、「親へのコーチング × 本人への実動支援」です。JADAが公表している9割以上の解決実績についても、解決の考え方と個別の成功事例を併せてご覧ください。同じ方法で、全員に同じ結果を保証するものではありません。

この記事では、親の性格を責めるのではなく、明日から家庭で何を変え、本人への支援にどうつなぐかを具体的にお伝えします。

親が明日から行う5つのこと / 父親へのコーチングと家庭訪問の事例 / 具体的なFAQとTo Do

本人と家庭の現在地を先に整理したい方は、JADAの5ステージ判定をご覧ください。

いま暴力、自傷、薬の大量摂取、具体的な自殺の計画、刃物の使用など差し迫った危険がある場合は、この記事の実践より安全確保を優先してください。親だけで制止しようとせず、危険な事件は110番、救急車が必要な状態は119番など、状況に合う緊急の支援につないでください。

目次

「親のせいか」より、今の関わりをどう変えるか

不登校や引きこもりの背景を、親の性格や育て方だけで決めつけることはしません。いじめや学校でのつまずきなど、本人が経験してきたことは一人ひとり違います。

一方で、家庭で変えられる対応まで、そのままにしてよいわけではありません。私たちは相談の中で、次のような関わりが続いていないかを確認します。

1.「見守る」と決めたまま、生活の変化を確認していない

本人が休息を取り、人と話せるようになったり、自分で外へ出始めたりしているのか。それとも、会話や外出が減り続けているのか。同じ「学校へ行っていない」という状態でも、次に考える支援は異なります。

「待っているから大丈夫」と判断するのではなく、生活と社会との接点がどう変わったかを確認します。

2.進路には口を出す一方、生活や金銭の基準が曖昧になっている

「勉強しなさい」「働きなさい」と繰り返しても、起床、食事、課金、小遣いなどの対応がその場ごとに変わっていては、家庭として何を大切にするのかが伝わりません。

逆に、学校への連絡、片付け、応募の準備などを親がすべて先回りすると、本人が試す機会も減ってしまいます。必要な手助けと、本人へ返せる役割を分けます。

3.成長しても、選択と責任を親がすべて肩代わりしている

本人が成人してからも、親が進路や仕事を決め、生活上の判断をすべて代行する支援にはしません。年齢、体調、できること、本人の希望を確認し、支える部分と任せる部分を組み直します。

これらは親を分類するためのチェックではなく、家庭で見直す行動を見つけるための視点です。家庭の特徴を詳しく整理したい方は、引きこもりが長期化する家庭の共通点と親の対応も参考にしてください。この先では、具体的な実行方法を説明します。

成功事例|父親への毎月のコーチングと家庭訪問からLEC就職へ

支援前|難関校で不登校となり、親との会話も途絶えたK君

K君は千葉県内の難関校へ進学しましたが、その後、不登校となりました。ご両親とのコミュニケーションがなくなり、家庭内で引きこもる状態が続きました。

転機|高校2年で環境を変えたが、通学は安定しなかった

高校2年のとき、通信制高校サポート校を運営する高卒支援会につながり、学ぶ環境を変えました。ただし、転学しただけで毎日の通学が安定したわけではありません。

実動支援|私が父親を支え、大倉が本人に継続して関わる

私はK君のお父様と毎月会い、コーチングを続けました。一方、JPCの大倉星耶は本人側の支援を担当し、家庭訪問、通学支援、進路指導を行いました。

父親に助言するだけでも、本人に「来なさい」と伝えるだけでもありません。保護者への関わりと、本人が実際に動くための支援を並行して進めたのです。

現在地|高校を卒業し、LEC東京リーガルマインドへ正社員就職

K君は高校を卒業し、LEC東京リーガルマインドへ正社員として就職しました。この事例でお伝えしたいのは、学校を変えることだけで終わらず、家庭へのコーチングと本人への実動支援を続けたことです。

成功事例22選のCASE21でK君の支援を読む / 家庭訪問・進路支援を担当した大倉星耶を見る

引きこもりの子への親の対応|明日から行う5つのこと

次の5つを、明日すべて本人に要求する必要はありません。まず親が整理することから始め、本人に伝える変更は一度に一つに絞ります。すでに支援を受けている場合は、担当者と方針を共有してください。

行動1|生活を7日間、分かる範囲で記録する

「ずっとゲーム」「何もしない」という印象だけでは、支援を考えにくくなります。起床と就寝、食事、入浴、外出、会話、学びや仕事への行動を、分かる範囲で書き出してください。

  • 起床・就寝は、分かった時刻だけ記録する。分からない部分は「不明」で構いません。
  • 家族との会話、家族以外との接点、外出があれば、短く記録する。
  • 記録は本人を問い詰める材料ではなく、親と支援者が現在地を共有するために使う。

本人の端末を無断で調べたり、会話をこっそり録音したりする必要はありません。「学校に行ったか」以外の変化を見つける記録にします。

行動2|保護者で10分話し、対応を一つそろえる

父母のいる家庭では、本人のいないところで話す時間を取ります。「学校へ行かせたい」「まず休ませたい」という結論のぶつけ合いではなく、今困っている生活上のことを一つに絞ります。

例えば、「朝の声かけは誰がするか」「追加の課金を求められたらどう答えるか」「誰が支援者に相談するか」を決めます。父母が一枚岩になるとは、二人で本人を追い詰めることではなく、家庭としての対応をそろえることです。

  • 父母それぞれが「今一番心配なこと」を一つ書く。
  • 今週整える項目を一つ選び、担当と見直す日を決める。
  • 本人の前で、もう一方の親の方針をその場で打ち消さない。

保護者が一人の場合や、父母で安全に話し合えない場合もあります。その場合は一人で抱えず、支援者と対応を整理します。

行動3|朝の声かけと食事を、進路の説教から切り離す

朝起こすたびに「いつまでこうしているの」「将来どうするの」と続けば、生活の声かけが進路の説教になってしまいます。まずは挨拶や食事の案内など、伝える内容を短くします。

声かけの例:「おはよう。朝ご飯を用意したよ」「今日はこの時間に買い物へ行くよ」。その直後に、登校や就職の返事まで求めないようにします。

  • 起床の声かけをする担当と方法を、保護者・本人・支援者で可能な範囲で共有する。
  • 食事の時間や準備について、短く伝える。
  • 起きられなかった日は責め続けず、生活記録をもとに支援方法を見直す。

無理に体を引っ張って起こしたり、起きない罰として食事を取り上げたりする対応にはしません。体調や睡眠の問題が強い場合は、生活指導だけで対応せず、医療機関への相談も含めて考えます。

行動4|スマホ・ゲーム・金銭は、取り上げる前に家庭の基準を整理する

まず、通信費、ゲーム課金、小遣い、必要な生活費を分け、親が何をどこまで負担しているかを確認します。必要な生活を支えることと、要求があるたびに際限なく追加することは分けて考えます。

  • 毎月の支出を「生活に必要な費用」と「追加の娯楽費」などに分ける。
  • 家庭の基準を変える場合は、親同士で整理したうえで理由と内容を説明し、本人の意見も聞く。
  • 強い対立がある場合は、その場で没収・遮断せず、支援者と安全な進め方を決める。

スマートフォンが本人の相談や人とのつながりにも使われているかを確認してください。食事、住まい、医療、緊急連絡まで取り上げる方法にはしません。成人した本人に対しては、親の判断だけで生活全体を管理するのではなく、費用負担や役割を話し合います。

行動5|学校や就職を迫る前に、家庭外の接点を一つつくる

本人が親の言葉を受け取れないとき、親が説得を増やすだけではなく、別の関係をつくることを考えます。支援者との短い面談、家庭訪問の相談、外出同行、居場所の見学など、現在の本人に合う接点を選びます。

  • 本人が話せる人、関心を持つ活動、外出できた場面を一つ書き出す。
  • 「学校へ行ったら連れて行く」などの交換条件にせず、活動そのものを提案する。
  • 本人が相談を拒否していても、まず保護者が相談し、本人への説明と接点のつくり方を検討する。

家庭訪問は、予告なく部屋へ入り込んだり、本人を力で連れ出したりすることではありません。本人の状態、安全、意向を確認し、会える方法や次の行動を一緒に考える支援です。

母親の証言|S君の再出発を、家庭と本人の両方から見る

親の関わりを見直すことが、すぐ就職という結果になるわけではありません。成功事例22選のCASE06で紹介しているS君の歩みには、途中のつまずきと再挑戦があります。

S君は高校中退後、約1年4か月の引きこもりを経験しました。家の外へ出られるようになってからも、体調不良やアルバイトを辞める経験がありました。それでも支援を終わらせず、筋トレ、農業インターン、農業大学校へと経験をつなぎ、JAへの就職へ進みました。

公開支援記録では、JA就職後2年間、勤務を継続していることも紹介しています。親の接し方だけを単独の原因とするのではなく、本人が実際に経験を重ねた過程と一緒に見ることが大切です。

動画|引きこもり期の親の接し方を、お母様が振り返る

次の動画は、K君の保護者ではなく、CASE06のS君のお母様の証言です。本人のインタビューと保護者の証言を区別してご覧ください。

動画タイトル
【母親が語る】引きこもりの息子を変えた”親の接し方”とは?|親がやってはいけないこと
公開日
(JADA成功事例ページの掲載情報)
公開チャンネル
JADA 一般社団法人未来自律支援機構【公式】
証言者・事例
S君のお母様/成功事例22選のCASE06
内容
JA就職へ進んだS君のお母様が、引きこもり期の親の接し方を振り返る証言動画。本人への実動支援とあわせて、家庭の関わり方を考えるために紹介しています。
動画URL
YouTubeで母親の証言を見る

見た後に親が行うこと:自分の家庭でも見直したい関わりを一つ、本人への支援が必要だと思う点を一つ書いてください。動画を根拠に本人を説得するのではなく、保護者自身の対応を整理する材料にします。

S君の詳しい支援記録を読む / 成功事例22選のCASE06と、これまでの動画を見る

5ステージ判定は、欠席日数や年齢だけで決めません

JADAでは、中核となる支援の枠組みであるAutonomy Stage OSの中で、「5ステージ判定」によって本人と家庭の現在地を整理します。医学的な診断ではなく、必要な支援を考えるための評価の枠組みです。

LINEで無料「5ステージ判定」を受ける

「不登校が何日続いたか」「何歳になったか」だけで判断するのではなく、起床・睡眠、食事や入浴、家族との会話、外出、学び、家庭外の人との接点を見ます。

親だけで段階を決めつけるより、行動1の生活記録を持って相談してください。本人が自分から動ける部分と、第三者の手助けが必要な部分を分けやすくなります。

Autonomy Stage OSの全体像 / 5ステージ判定と段階に応じた対応

JADAと高卒支援会|親へのコーチングと本人への実動支援

JADAは、本人・家庭の現在地整理、親へのコーチング、支援方針・計画の設計を軸に、必要な本人への実動支援を組み立てます。相談や助言だけで終えるという意味ではありません。

認定NPO法人高卒支援会は、本人が実際に通い、学び、人と関わる現場です。フリースクール、通信制高校サポート、学習・進路指導、合宿、寮、キャンプ、留学、社会経験などを通して、学びと社会参加を支えています。実際の担当や連携先は、個々の支援計画に応じて整理します。

両者の関係を「JADAは親だけ、高卒支援会は本人だけ」と機械的に分けるのではなく、親へのコーチングと本人への実動支援を、誰がどのように担うかを明確にします。K君の場合は、私の父親コーチングと、大倉の家庭訪問・進路支援が並行していました。

この両輪を、JADA Support Philosophyでは Parent Coaching × Direct Support for the Young Person と表現しています。

JADAの支援哲学とSocial Autonomy(社会的自律)を詳しく読む

親の対応から、その先の学び・仕事へ|7 Steps to Autonomy

家庭の対応を変えた後、本人がどのように社会へつながるのか。現在のJADAでは、現場の実践を次の7つのステップとして整理しています。

  1. 親コーチング&ステージ判定:本人と家庭の現在地、親の対応、支援方針を整理する。
  2. アウトリーチ(家庭訪問):本人が相談へ来られない場合も、会える方法を考えて接点をつくる。
  3. 生活改善・環境調整(合宿・寮):家庭での調整や必要な環境変更を通して、生活と人との関わりを支える。
  4. 学び直し支援:現在の学習状況から、無理のない学びの再開を支える。
  5. 社会接点づくり(同行):外出、見学、人との交流などを実際の行動へつなぐ。
  6. 進路・社会参加支援:本人の希望と状態に応じ、進学・就職・アルバイト・ボランティアなどへ伴走する。
  7. Social Autonomy(社会的自律):本人が生活や社会との関係を続け、自分で選び、行動する未来を目指す。

全員がすべてを同じ順番で進むわけではありません。また、過去の事例を現在の体系から振り返ることと、当時からこの名称を使って支援していたことは区別します。

関連動画|PIVOTで紹介された支援の考え方

家庭での対応と本人への支援を考える資料として、PIVOT前編・後編の動画もご覧いただけます。これらは支援の考え方を紹介する動画であり、K君本人やS君のお母様の証言動画とは別です。

PIVOT前編|不登校・引きこもりの初期対応と生活の見直し

PIVOT後編|年齢に応じた対応と生活・学びの支援

JADA公式YouTubeで、本人・保護者・支援者の動画を見る

よくある質問|明日から親ができるTo Do

Q1.親と一切話しません。何を言えば動いてくれますか?

本人を動かす言葉を探すより、まず会話のたびに進路や登校の話になっていないかを確認してください。挨拶や必要な連絡は短く伝え、返事を何度も求めないようにします。会話が途絶えた状態が続く場合は、親だけで関係を戻そうとせず、K君の事例のように第三者との接点も検討します。

明日から親ができるTo Do

  • 挨拶と食事などの連絡を一つ、短く伝える。
  • 登校・就職の質問を一度に重ねず、話せた場面だけ記録する。
  • 本人と話せる家族や支援者がいるかを整理し、保護者から相談する。

Q2.父親は厳しく、母親は何でも許してしまいます。どうそろえますか?

どちらの親が正しいかを本人の前で争うのではなく、家庭として何を整えたいかを一つ決めます。本人の気持ちを聞くことと、生活や金銭の基準を決めることは両立させます。K君の事例では、父親へのコーチングを毎月続け、本人への家庭訪問と並行しました。

明日から親ができるTo Do

  • 本人のいないところで10分、父母それぞれの心配を聞く。
  • 朝の声かけや追加の課金など、一項目の対応をそろえる。
  • 話し合いが対立になる場合は、親へのコーチングで第三者と整理する。

Q3.昼夜逆転しています。毎朝起こした方がよいですか?

規則正しい生活を目指しますが、強く起こせばよいという意味ではありません。まず現在の起床・就寝を確認し、体調や支援計画に合わせて声かけを決めます。生活の案内と、学校へ行かせる説得は分けてください。

明日から親ができるTo Do

  • 分かる範囲の就寝・起床・食事時間を記録する。
  • 起床の声かけ担当を決め、複数の家族が続けて責めない。
  • 体調不良や眠れない状態が続く場合は、支援者や医療機関へ相談する。

Q4.スマホやゲーム、お金を止めれば外へ出ますか?

一律に止めれば外へ出るとは考えません。本人が何に使っているか、家庭が何を負担しているかを確認し、基準を整理します。通信や金銭の変更を突然の罰にせず、外出や人との接点をつくる支援と組み合わせます。

明日から親ができるTo Do

  • 通信費、課金、小遣い、必要な生活費を分けて書く。
  • 親の負担について伝える内容を決め、本人の意見を聞く。
  • 暴力や強い対立が心配な場合は、没収・遮断より先に支援者と対応を相談する。

Q5.通信制高校へ変えたのに通えません。もう一度転校するべきですか?

次の学校を探す前に、起床、外出、対人関係、課題、通学のどこで止まっているかを確認してください。K君も環境を変えただけでは通学が安定せず、大倉の家庭訪問と進路支援、父親へのコーチングを継続しました。学校選びと、通える生活をつくる支援は別に考える必要があります。

明日から親ができるTo Do

  • 登校予定日と実際に行けた日、課題の進み具合を整理する。
  • 朝起きる、身支度、移動、人に会うなど、難しい場面を分ける。
  • 学校の担当者と支援者へ、生活記録と困っている場面を共有する。

通信制高校に入っても通えない場合の支援を読む

Q6.本人が家庭訪問を拒否しています。親だけで相談しても意味がありますか?

あります。本人へ繰り返し訪問を迫る前に、保護者が生活、安全上の心配、家族の対応を整理できます。そのうえで、誰なら会えそうか、訪問の前にどのような説明が必要かを支援者と考えます。拒否している本人に、予告なく訪問者を会わせる方法を前提にはしません。

明日から親ができるTo Do

  • 起床・食事・外出・会話と、本人が嫌がる場面をまとめる。
  • 本人に伝えた相談内容と、まだ伝えていないことを区別する。
  • 保護者面談で、本人への説明と接点のつくり方を相談する。

Q7.合宿やイベントは、引きこもりの子にも意味がありますか?

大いにあります。JADA・高卒支援会では、合宿を生活の組み直しや人との接点づくりに活用します。周囲と起き、食事をし、活動する環境が、家庭だけでは変えにくい生活の転機になることがあります。

成功事例22選のK.S君は、スキー合宿をきっかけの一つに、3年間の通所、キャンプ、海外留学などを経験しました。ただし、同じ活動に参加すれば同じ結果になるわけではありません。本人の希望、体調、安全、参加方法を確認し、帰宅後の生活にもつなげます。

明日から親ができるTo Do

  • 本人が関心を持つ活動を一つ、学校以外から探す。
  • 見学や短時間参加、担当者、途中で休む方法を主催者に確認する。
  • 「学校へ行ったら参加できる」という交換条件にせず、本人と参加方法を話す。

K.S君の成功事例を読む

Q8.成人した子にも、親が生活のルールを決めてよいのでしょうか?

成人した本人の進路や生活全体を、親が一方的に決める対応にはしません。一方で、同居する家庭の費用負担や家事などを曖昧にし続ける必要もありません。親が支える範囲、本人が担える役割、必要な支援を分け、本人の希望を聞きながら話し合います。

明日から親ができるTo Do

  • 親が代行している連絡、家事、支出を一覧にする。
  • 本人が選べる小さな役割を一つ提案する。
  • 親子での話し合いが難しければ、本人の意思を尊重して関われる第三者へ相談する。

Q9.外へ出ても、アルバイトをすぐ辞めます。親の対応が間違っていたのでしょうか?

辞めた事実だけで、本人や親を失敗と決めません。S君も、外出後の体調不良やアルバイトへの再挑戦を経験しました。次に何を変えるかを考え、本人が試せる経験を残すことが大切です。

明日から親ができるTo Do

  • 落ち着いて話せるときに「何が一番大変だった?」と一つ聞く。
  • 勤務時間、体力、仕事内容、人間関係など、負担だった点を整理する。
  • 次の応募をすぐ迫らず、本人と支援者で条件や準備を考える。

Q10.自傷や家庭内暴力があります。まず家庭の基準を厳しくすべきですか?

差し迫った危険があるときは、ルールを守らせることより安全確保が先です。本人と家族の安全を守り、必要な緊急対応や医療につないだうえで、家庭での対応を支援者と考えます。親が一人で制圧したり、説得し続けたりする対応にはしません。

親が行うこと

  • 今まさに危険がある場合は明日まで待たず、安全な場所へ離れ、状況に応じて110番・119番へ連絡する。
  • 落ち着いた後、起きた出来事と現在の安全上の心配を、医療機関や支援者へ共有する。
  • 家庭のルール変更は、安全と必要な支援体制を確認してから進める。

相談では、「今の生活」と「親が変えたいこと」を共有する

親だけで状況を説明できるよう、直近の生活、本人が話せる相手、学校や仕事との接点、父母で意見が違う点、安全上の心配をまとめてください。完璧な記録ができるまで相談を待つ必要はありません。

「学校へ戻したい」という希望に加え、「朝の対応をそろえたい」「本人と会える支援者が必要」「転学後の通学が安定しない」など、具体的に困っていることを一つ伝えると、次の支援を相談しやすくなります。

JADAの相談方法と、支援開始までの流れを確認する

親がすべてを抱えるのではなく、本人が歩き出すために動く

親の対応を変える目的は、本人を親の言う通りに動かすことではありません。家庭の関わり方を整え、必要な第三者の支援を入れ、本人が自分で選び、試す機会を増やすことです。

K君には、父親への毎月のコーチングと、大倉による家庭訪問・進路支援がありました。S君には、外出後のつまずきを経て、農業の経験や学び、仕事へ進んだ歩みがあります。

学校復帰や就職は大切な節目ですが、そこで終わりではありません。本人が生活を整え、人とつながり、学びや仕事を続け、教育・勤労・納税を通じて社会へ貢献する未来を目指します。それがJADAのSocial Autonomy(社会的自律)です。

明日はまず、分かる範囲の生活を記録する。保護者の対応を一つそろえる。家庭だけで難しい部分を支援者に相談する。その一歩から始めてください。

親が諦めない限り、JADAも諦めません。

この記事で紹介した支援記録・関連情報

事例の詳しい経過は、次の公開支援記録をご覧ください。本文の「声かけの例」やTo Doは、そのまま全員に当てはめるのではなく、本人と家庭の状態に応じて支援者と調整してください。

公的な相談窓口を探す場合は、厚生労働省の全国相談窓口案内も利用できます。緊急通報については、政府広報の緊急通報案内と消防庁の119番案内をご確認ください。

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杉浦 孝宣
杉浦孝宣(すぎうら・たかのぶ)は、一般社団法人未来自律支援機構(JADA)代表理事、認定NPO法人高卒支援会創業者。自身も小学3年生で不登校を経験し、その体験を原点に40年以上にわたり不登校・高校中退・引きこもり支援に携わってきた。 これまで1万人以上の相談に対応し、家庭訪問、生活改善合宿、学生寮、学び直し支援、就労支援などを通じて、多くの若者のSocial Autonomy(社会的自律)を支援している。 「子どもは必ず変われる」を信念に、学校復帰だけをゴールとせず、一人ひとりが自ら考え、行動し、社会に参加していくSocial Autonomyを目指した支援を実践している。 著書に『不登校・ひきこもりの9割は治せる』『高校中退 不登校でも引きこもりでもやり直せる』『もう悩まない!不登校・ひきこもりの9割は解決できる』など。近年は一般社団法人未来自律支援機構(JADA)を通じて、Autonomy Stage OSと7 Steps to Autonomyを体系化し、国内外へ発信している。台湾版著書も出版され、教育・福祉・行政・企業・国際社会との連携を通じて、若者のSocial Autonomyを実現する支援モデルの普及に取り組んでいる。
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