支援哲学⑧|他律を排し、自律を促す|なぜ私は自律支援を目指すのか
一般社団法人未来自律支援機構(JADA)代表理事 杉浦孝宣
「学校に行けるようになりました」
「高校を卒業しました」
「大学に合格しました」
保護者の方は、そこをゴールだと思いがちです。
しかし、40年以上にわたり1万人以上の子どもたちを支援してきた私は、違う結論にたどり着きました。
本当のゴールは、不登校の解決でも、引きこもりの解決でもありません。
自律です。
自分で考え、自分で決め、自分で行動し、その結果に責任を持つ。
その力を身につけることこそが、私たちJADAの支援の目的です。
お子さんの状態を一度整理してみませんか?
不登校・引きこもり支援では、まず現在のステージを知ることが大切です。
なぜ私は「生きづらい世の中」という言葉に違和感を持つのか
近年、
「生きづらい世の中だから不登校になる」
「社会が悪いから引きこもりになる」
という言葉をよく耳にします。
確かに現代社会には様々な課題があります。
- SNSの普及
- 人間関係の複雑化
- 経済的不安
- 将来への不透明感
昔にはなかった悩みもあるでしょう。
しかし私は、40年以上の支援現場で、
「世の中が悪いから仕方がない」
という考え方からは何も生まれないことを見てきました。
他責からは自律は生まれない
不登校や引きこもりになると、
- 学校が悪い
- 先生が悪い
- 親が悪い
- 社会が悪い
- 環境が悪い
そう考えたくなる気持ちは理解できます。
実際に学校側に問題があるケースもあります。
いじめもあります。
理不尽な出来事もあります。
しかし、原因を分析することと、責任を他人に預けることは違います。
他責の先にあるのは、
「誰かが変えてくれるのを待つ人生」
です。
一方、自律の先にあるのは、
「自分で未来を切り開く人生」
です。
私は支援の現場で、学校を恨み続けた子よりも、自分の未来を考え始めた子の方が立ち直る姿を何度も見てきました。
原爆の翌日から人は生きていた
私は時々、歴史を思います。
広島。
長崎。
多くの人が家族を失いました。
家を失いました。
仕事を失いました。
絶望という言葉では表現できないほどの状況だったと思います。
それでも人々は翌日から生きました。
瓦礫の中で働きました。
食べ物を探しました。
子どもを育てました。
学校を再開しました。
もちろん悲しみは消えません。
苦しみもあったでしょう。
しかし、
「時代が悪いから仕方がない」
だけで終わらなかったからこそ、今の復興があります。
私たちもまた、過去や環境に人生を支配され続けるのではなく、未来へ向かう選択をしなければなりません。
他律では人は成長しない
不登校になると、親は管理しようとします。
「早く起きなさい」
「勉強しなさい」
「学校に行きなさい」
学校も管理しようとします。
支援者も管理しようとします。
しかし、それはすべて他律です。
- 他人に言われたから動く
- 怒られるから動く
- 褒められるから動く
これでは一時的に動いても長続きしません。
私たちが目指しているのは、親がいなくても、先生がいなくても、支援者がいなくても、自分で考え、自分で判断し、自分で行動できる人になることです。
Y子さんは自分で決めた
10年間引きこもったY子さん。
24歳で相談に来た時、私たちは無理やり外へ連れ出したわけではありません。
- 学び直すこと
- アルバイトを始めること
- 通信制高校へ通うこと
- 短大へ進学すること
- 保育士資格を取得すること
- 公務員試験を受けること
すべて本人が決めました。
だから続いたのです。
だから人生を変えることができたのです。
もし親や支援者が決めていたら、途中で止まっていたかもしれません。
カイト君もリョウタ君も同じです
カイト君は自衛隊を選びました。
リョウタ君は航空自衛隊を選びました。
ショータ君は農業大学へ進学し、JAへの就職を目指しました。
私たちは選択肢を示しました。
成功事例を紹介しました。
先輩との出会いを作りました。
しかし、決めたのは本人です。
だから続いたのです。
だから社会へ出ていけたのです。
ステージ3以上の場合は、親だけで抱え込まないでください。
親コーチングに加え、家庭訪問・アウトリーチ支援・ピアサポートが必要になるケースがあります。
JADAの支援は「決めさせる支援」です
私たちは、子どもの代わりに人生を決めません。
- 親の価値観を押し付けません
- 進学を強制しません
- 就職を強制しません
- 支援者の都合で動かしません
代わりに、
- 選択肢を示します
- 成功事例を見せます
- 家庭訪問を行います
- ピアサポートを行います
- 社会とつながる機会を作ります
その中で、
「自分はどう生きたいのか」
を考えてもらいます。
自律は小さな決断から始まる
いきなり人生を決める必要はありません。
- 今日は何時に起きるか
- 散歩に行くか
- 面談を受けるか
- 家庭訪問を受けるか
- フリースクールへ行くか
- アルバイトに応募するか
自律とは、こうした小さな決断の積み重ねです。
だから私は、子どもたちから決断する機会を奪わないようにしています。
7つの自律支援ステップも同じ考え方です
JADAの7つの自律支援ステップは、子どもを管理する仕組みではありません。
すべて、最終的に本人が自分の人生を歩けるようになるために存在しています。
保護者の皆様へ
親は子どもを守ろうとします。
それは自然なことです。
しかし、守り続けることと、自律を促すことは違います。
- 時には失敗させる
- 時には待つ
- 時には第三者を頼る
- 時には本人に決めさせる
その積み重ねが、子どもの人生を支える力になります。
私たちJADAが目指しているのは、不登校を解決することではありません。
引きこもりを解決することでもありません。
他律を排し、自律を促す。
それが私たちの支援の原点です。
まずは現在のステージを確認してみませんか?
お子さんの状態に合わせた支援方針を立てるためには、ステージ判定が重要です。
支援哲学シリーズ
- 支援哲学①|最初は何もないものです|なぜ私は未来を先に見るのか
- 支援哲学②|本当の失敗は何もやらない事だ|なぜ私は「見守るだけ」を勧めないのか
- 支援哲学③|動き始めた後は待つ|なぜ私は「急がせない」のか
- 支援哲学④|親だけで抱え込まない
- 支援哲学⑤|子どもは人との出会いで変わる|なぜ家庭訪問は奇跡を起こすのか
- 支援哲学⑥|親が変われば子どもも変わる|なぜ私は最初に親をコーチングするのか
- 支援哲学⑦|希望は行動の後にやってくる|なぜ私は小さな一歩を重視するのか
杉浦孝宣 著書一覧
- 『不登校ひきこもりの9割は治せる』
- 『拒學、不要搶救!── 從拒學到正常工作,90%都能恢復。』
出版社:大是文化(任性出版)
日本語原著:『不登校・ひきこもりの9割は治せる』(光文社新書) - 『不登校ひきこもり急増』
- 『高校中退 不登校引きこもりでもやり直せる』
- 『もう悩まない!不登校・ひきこもりの9割は解決できる』
筆者プロフィール
一般社団法人未来自律支援機構(JADA)代表理事 杉浦孝宣
不登校・引きこもり支援40年以上。これまで1万人以上の子どもたちと保護者を支援。JADA Stage OS(5ステージ判定)およびJADA Autonomy OS(7つの自律支援ステップ)を体系化し、全国の家庭に対して親コーチング、家庭訪問(アウトリーチ支援)、ピアサポート、自律支援を行っている。
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