支援哲学⑨|子どもは変わる。だから私は諦めない|なぜ私は「もう無理です」を信じないのか
一般社団法人未来自律支援機構(JADA)代表理事 杉浦孝宣
私は40年以上、不登校・引きこもり支援を続けてきました。
その中で、保護者の方から何度も聞かれてきた言葉があります。
「先生、本当に大丈夫ですか?」
「もう手遅れではありませんか?」
「この子は変われるのでしょうか?」
支援が始まる前だけではありません。
支援が始まった後も、昼夜逆転が続いた時、家庭訪問を嫌がった時、学校へ行けなかった時、アルバイトを辞めたいと言い出した時、何か問題が起きるたびに保護者は不安になります。
そして私に聞くのです。
「先生、本当に大丈夫ですか?」
私の答えは40年間変わりません。
「大丈夫です!」
なぜなら私は、今の状態ではなく、その子の未来を見ているからです。
まずはお子さんの状態を整理してください。
不登校と引きこもりでは対応が異なります。JADAでは、5ステージ判定で現在地を可視化し、必要な支援を組み立てます。
10年引きこもったY子さん
Y子さんは中学2年生で不登校になりました。
その後、約10年間、引きこもり状態が続きました。
初回面談で初めて会った時のことを、今でも覚えています。
当時24歳でしたが、私は正直、30代に見えました。
なぜなら、外出する機会がほとんどなく、洋服もすべて通信販売で購入していたからです。
引きこもり状態が長く続くと、人と会う機会だけでなく、流行や同世代との接点も失われていきます。
しかし、Y子さんは少しずつ外へ出るようになりました。
通信制高校へ進学。
短大へ進学。
保育士資格を取得。
そして公務員として働くようになりました。
卒業式の日のY子さんは、初回面談の時とはまるで別人でした。
若々しく、生き生きとした現代の女性へと変わっていました。
私はその姿を見ながら、
「人はここまで変われるのか」
と改めて感じたことを覚えています。
16か月引きこもったショータ君
ショータ君は16か月間、引きこもっていました。
お母さんも何度も私に聞きました。
「先生、本当に大丈夫ですか?」
もちろん順調なことばかりではありませんでした。
実はある時、お母さんからこんなメールをいただいたことがあります。
「もう渉太のことは死んだものとして諦めてください」
それほど、お母さんは追い詰められていたのです。
しかし私は諦めませんでした。
生活改善。
親コーチング。
学び直し。
社会参加。
一つひとつ積み重ねていきました。
そしてショータ君は農業大学へ進学し、現在はJA(農協)へ就職しています。
さらにNTTe-Sportsでの卒業式の日。
お母さんは私のところへ来て、こう言いました。
「先生を信じてよかった。本当にありがとうございました」
私はその言葉を今でも忘れません。
包丁を振りかざしたS君
S君は中学1年から不登校になりました。
昼夜逆転。
ゲーム依存。
家庭内暴力。
希死念慮。
育ての叔母に包丁を向けるまでになりました。
しかし、親コーチング、家庭訪問(アウトリーチ支援)、ピアサポート、生活改善合宿、アルバイト、学び直しを経て、現在は政治経済学部で学びながら政治家を目指しています。
かつて「死にたい」と言っていた少年が、今では「社会を良くしたい」と語っています。
大学進学が決まった時のことです。
育ての親である叔母さんから、私はこんな言葉をいただきました。
「まさか、うちの子が大学進学するなんて、夢のような話です」
そして少し笑いながら、
「先生、本当に大丈夫でしたね」
とおっしゃいました。
私は思わず、
「だから最初から大丈夫だと言ったじゃないですか」
と返しました。
もちろん、そこへたどり着くまでには、本人の努力もありました。叔母さんの学びもありました。家庭訪問も、ピアサポートも、生活改善合宿もありました。
決して簡単な道ではありませんでした。
それでも、誰も諦めなかったから、今のS君がいるのです。
コウタ君|支援される側から支援する側へ
コウタ君は元々、不登校だった子でした。
不登校を克服し、大学進学を果たしました。
しかし、入学した年はコロナ禍でした。
入学式はオンライン。
大学の敷地内に入ることすら許されない状況でした。
せっかく大学へ進学したのに、人との交流もなく、自宅に閉じこもる日々が続きました。
当時のコウタ君は、完全に引きこもり状態でした。
体中には発疹が出ていました。
顔中には吹き出物ができていました。
自信も失っていました。
そんなある日、コウタ君が私のところへ来て言いました。
「先生、ボランティアでも何でもやるから、手伝わせてください」
私は即座にこう答えました。
「お前のその自信のない状況がいいんだよ」
「後輩の引きこもり支援にぴったりだ」
そして家庭訪問(アウトリーチ支援)へ同行させました。
不登校。
引きこもり。
昼夜逆転。
ゲーム依存。
様々な後輩たちの家へ一緒に訪問しました。
最初は戸惑いながらでした。
しかし、一件、一件と成果が出始めます。
部屋から出てきた子。
フリースクールへ来られるようになった子。
アルバイトを始めた子。
進学を決意した子。
そうした後輩たちの変化を見ているうちに、今度はコウタ君自身が変わり始めたのです。
表情が明るくなりました。
発疹も減っていきました。
吹き出物もなくなっていきました。
以前の元気なコウタ君が戻ってきました。
そして再び将来へ向かって動き出しました。
その後、自律支援のステップを一つずつ進み、現在は自衛隊幹部候補生として勤務しています。
そして私が何よりうれしいのは、その後の姿です。
コウタ君は支援される側で終わりませんでした。
今度は支援する側になったのです。
これまで20名以上の不登校・引きこもりの後輩たちの支援に関わってきました。
2026年3月の卒業式にも駆けつけ、S君をはじめ、多くの卒業生たちの門出を見守ってくれました。
私は以前から、
「支援された子が、次の世代を支援する」
ことが理想だと考えてきました。
コウタ君は、その理想を実現してくれている一人です。
だから私は確信しています。
子どもたちは変わります。
そして時には、自分が支えられた経験を、次の世代へ返してくれるのです。
関連動画|コウタ君の成功事例
成功事例は特別な子だけの話ではありません。
JADAでは、ステージ判定、親コーチング、家庭訪問、ピアサポート、生活改善、学び直し、社会参加を組み合わせ、多くの子どもたちの再出発を支援してきました。
私が「大丈夫です」と言う理由
保護者から、
「先生、本当に大丈夫ですか?」
と聞かれるたびに、私は、
「大丈夫です!」
と答えます。
もちろん、根拠もなく言っているわけではありません。
私は40年以上、不登校・引きこもり支援を続けてきました。
しかし、私が関わってきたのは、不登校や引きこもりだけではありません。
家庭内暴力。
非行。
高校中退。
鑑別所。
少年院。
様々な問題を抱えた子どもたちとも向き合ってきました。
当時は、
「もう無理だ」
「人生終わった」
「この子は立ち直れない」
と言われた子もいました。
しかし振り返ってみると、みんな大丈夫でした。
時間はかかりました。
回り道もしました。
失敗もありました。
それでも、働き、家庭を持ち、社会の一員として生きています。
だから私は知っています。
今の状態は結果です。未来ではありません。
放置では変わらない
誤解してほしくないのは、
「大丈夫です」
は、
「何もしなくて大丈夫です」
という意味ではないということです。
放置では変わりません。
見守るだけでは変わりません。
適切な支援。
適切な順番。
適切な出会い。
それが必要です。
だから私たちは、JADAの7つの自律支援ステップを実践しています。
子どもは変わります。
しかし、変化には順番があります。
その順番を間違えず、親だけで抱え込まず、適切な支援を入れることが大切です。
保護者の皆様へ
もし今、お子さんが苦しんでいても、未来まで決まったわけではありません。
今の状態は結果です。
未来ではありません。
私はこれからも言い続けます。
「大丈夫です!」
もちろん、何もしなくてよいという意味ではありません。
親が学び、子どもが行動し、第三者が関わり、適切な支援を続ける。
その積み重ねがあれば、子どもたちは変わります。
子どもは変わる。
だから私は諦めない。
これが40年以上、1万人以上の支援を通じてたどり着いた私の結論です。
お子さんは今、どのステージでしょうか?
ステージ3以上は引きこもり状態です。見守るだけでは長期化することがあります。まずは現状を整理してください。
支援哲学シリーズ
- 支援哲学①|最初は何もないものです|なぜ私は未来を先に見るのか
- 支援哲学②|本当の失敗は何もやらない事だ|なぜ私は「見守るだけ」を勧めないのか
- 支援哲学③|動き始めた後は待つ|なぜ私は「急がせない」のか
- 支援哲学④|親だけで抱え込まない
- 支援哲学⑤|子どもは人との出会いで変わる|なぜ家庭訪問は奇跡を起こすのか
- 支援哲学⑥|親が変われば子どもも変わる|なぜ私は最初に親をコーチングするのか
- 支援哲学⑦|希望は行動の後にやってくる|なぜ私は小さな一歩を重視するのか
- 支援哲学⑧|他律を排し、自律を促す|なぜ私は自律支援を目指すのか
関連する成功事例
杉浦孝宣 著書一覧
- 『不登校ひきこもりの9割は治せる』
- 『拒學、不要搶救!── 從拒學到正常工作,90%都能恢復。』
出版社:大是文化(任性出版)
日本語原著:『不登校・ひきこもりの9割は治せる』(光文社新書) - 『不登校ひきこもり急増』
- 『高校中退 不登校引きこもりでもやり直せる』
- 『もう悩まない!不登校・ひきこもりの9割は解決できる』
筆者プロフィール
一般社団法人未来自律支援機構(JADA)代表理事 杉浦孝宣
不登校・引きこもり支援40年以上。これまで1万人以上の子どもたちと保護者を支援。JADA Stage OS(5ステージ判定)およびJADA Autonomy OS(7つの自律支援ステップ)を体系化し、全国の家庭に対して親コーチング、家庭訪問(アウトリーチ支援)、ピアサポート、自律支援を行っている。
お子さんの未来は、
まだ変えられます。
40年以上・1万人超・9割以上の支援実績
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